2014
03.29

貴方の人生を肯定します。『LIFE!』感想。

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The Secret Life of Walter Mitty / 2013年 アメリカ / 監督:ベン・スティラー

あらすじ
妄想はパワーだ。



LIFE誌でネガ管理をするウォルター・ミティ。彼は仕事は真面目にやってきたけど、地味だし、これと言って特徴もないし、誇れる体験談も特にない。今日も登録した婚活サイトで憧れの同僚シェリルにウインク(いいねみたいなもの)しようか迷う、という冴えない男です。しかも妄想癖あり。

ああ、ヤバい。この設定の時点で自分とカブるわー色々と。多分同じように思う人も多いんじゃないですかね。簡単に言えばそんなウォルターが「変わる話」なんですが、自分とカブると感じた大人たちはこう思うんですよ。そんな簡単に変われねーよ、と。

でも観終わると思っちゃうんですよ。あれ、俺もひょっとして変われるんじゃね?と。本当に変わるかどうかは置いといて、そう思わせるだけの魅力がこの作品にはあります。オフィスで妄想にふける日常から勇気を持って踏み出せば、そこは冒険に満ちた現実。引きの画で雄大な景色を見せ、そこにピッタリくる音楽を合わせて解放感を出す。旅に出たから変われたというのではなく、一歩を踏み出すことが大事なんだ、と語っているんですね。

前半は想像力豊かすぎるウォルターの妄想も楽しく、ある点を境に語りきれないほどの体験をするようになる現実もスリリング。スケボーのシーンとか超気持ちいいし、火山のシーンなどは超ヤバイ。また、至る所で背景に埋め込まれたキャプションは、まるで世界を切り取った雑誌のようでもあるのがLIFE誌とうまく絡めた演出となっていて上手い。なにより、LIFE誌のスローガンがウォルターのLIFEに重なっていくのが素晴らしいです。監督としても主演としてもベン・スティラー最高でしたよ。

↓以下、ネタバレ含む。








踏み出す一歩の大事さを説いてはいるんだけど、でもそれまでの妄想を否定しているわけではないんですよ。ウォルターの踏み出す一歩であるヘリに乗るシーン、あそこで彼をヘリまで走らせたのは、歌いながら彼を後押しするシェリルという妄想です。つまり、踏み出す一歩は妄想の力だったわけですね。妄想や空想は代わり映えのしない日常を彩っており、それは自分の望む世界ですらある、その願望をパワーに変えたということです。だからむしろ妄想は肯定されています。

物語は、ネガの行方が灯台もと暗しであるとか、捨てた財布がどうなるかとか、ラストは表紙で締めるんだろうなとか、そういった展開は大体予想はできるんだけど、それでもその予想が当たった後の行動とか会話とかがとてもイイ。特に最後の表紙の写真で一気にくる感動の破壊力は『ニュー・シネマ・パラダイス』のラストに匹敵すると言っても過言ではないでしょう。平凡だろうが地味だろうが、見ている人はちゃんと見ていてくれる。一歩を踏み出すことの大事さを説きながら、地道にやっている今も肯定してくれる、ここが素晴らしい。

そう考えると、この作品はあらゆることを否定してないんですよね。LIFE誌のスローガンさえ言えないダンブルドア、じゃなかったヘンドリックスに最後に言う台詞も、彼への否定ではなく「嫌なヤツにはなるな」というもの。何がカッコイイって、築き上げてきた歴史を託す男のセリフなのがカッコいい。ウォルターは結局職を失いますが、そこに現実を悲観するような否定の趣はなく、シェリルと手を繋ぎ歩いていくというラストになります。この観終わった後の爽やかさは、否定ではなく肯定をする人生を選んだウォルターの姿があるからです。

カメラマンのショーンの「シャッターチャンスを敢えて撮らず時には自分の目で見る」というセリフ、そして何度も出てくるLIFE誌のスローガン「世界を見よう。危険でも立ち向かおう。それが人生の目的だから」。妄想好きだろうが地味だろうが、自分の目で見、危険に立ち向かっていったウォルターには人生の目的がもう分かっているのでしょう。だから否定しなくても進んでいけるのですね。

ちなみにLIFE誌は実際に休刊となっていますが、このスローガンは実に素敵なのでここに引用しておきます。

To see the world,
things dangerous to come to, To see behind walls, to draw closer, to find each other and to feel.
That is the purpose of life.


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ベン・スティラー、クリステン・ウィグ 他

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