2014
03.22

姉妹が魅せるシンメトリーな想い。『アナと雪の女王』感想。

Frozen
Frozen / 2013年 アメリカ / 監督:クリス・バック、ジェニファー・リー

あらすじ
なんでも凍っちゃいます。



ディズニー史上最高の映像美と言いたいほどの雪と氷の表現!色彩を伴わない美しさは、色づいた景色とは対照的なのに表情豊か。吹きすさび舞い上がる雪、雑に凍らせて作った階段が走り抜けるのに合わせて綺麗に成型されていく様子、踏みしめた雪につく足跡のさりげないリアルさなど見事です。城に人が集まるシーンで長回しを用いながら主要なキャラを映していくのもイイ。この奥行や高低差は3Dで観ると際立ちます。

そしてどれを取っても名曲と言える素晴らしい楽曲の数々!冒頭の氷職人たちの『レ・ミゼラブル』を思い出す力強さからもう取り込まれてしまうし、アナとハンスがメロウになりそうなシーンをアップテンポな曲で歌うシーンもイイ。予告編として丸ごと流れていた「Let It Go」は、本編の流れで観ると、エルサの抑圧からの解放という自由を手にした喜びと、それと引き換えに大切なものを失う悲しみが渾然となって、曲終わりに強がった笑みとドアを閉める勢いで未練を断ち切る姿になっています。予告で丸ごとは観せすぎじゃないかと思ってたけど全然そんなことはないですね。ここだけ先出しした強気さも納得。足でダン!って踏むとピャーッ!て氷が広がるのがなんかとても好きです。

ヒロインが二人いるディズニー映画は初であり、プリンセスものとして新たな文脈を産み出したと思います。明確な悪役と言うよりは野心が先走って判断を誤った者というのも現代的。アナが思った以上にアクティブなのも最近のディズニーの風潮ですね。それにしてもエルサが最高。自身の能力故に苦しみ、戦い、受け入れる、というまるでX-MENのようです。雪だるまのオラフ、トナカイのスヴェンも素晴らしく魅力的。王道からは捻りながらもある意味普遍的な愛の物語に新鮮な驚きと感動。なんて素晴らしい多幸感!何度も泣きそうになるのを堪えてましたよ。

ちなみに同映の短編『ミッキーのミニー救出大作戦』は、原点たるスラップスティックなカートゥーンの懐かしさを現代の3D世界と組み合わせており、ある意味反則技のオンパレードですが、これが懐かしくて楽しくて興奮に満ちてます。つまり過去と現在を繋いでいるわけで、TDLアトラクションではなく短編映画として公開したのにはそういう意味を感じます。

↓以下、ネタバレ含む。








山小屋で店舗経営してるおじさんオーケン。ヤツは需要と供給による金額設定や、サウナを併設する先見の明、金のないヤツへの容赦のなさなど、プロの商売人ですよ。キャッチーな「フッフー♪」に騙されちゃダメですよ?

騙されると言えばハンスです。あの豹変の仕方はさすがに驚きましたが、思うにハンスはその時にすべきベストの役割を完璧に演じるキャラなんでしょうかね。自国以外で成り上がろうという確固たる意志がまずあって、その都度役割をこなす。アナとの出会いでは運命の出会いの王子として振る舞う、城を託された後は人々に信頼を与える、エルサを捕えたときはその場で討ったりはせず不幸な女王を紳士的に抑えた英雄として凱旋する。アナが凍えてやって来た時点で、城内ではハンスが上に立つべきという空気が成り立っていたため、それに沿ってアナのことを見捨て姉のせいにしたほうが都合がいいからそうする、といった具合に。完璧に演じるから、他者がいるところでは微塵も表情に出さない(アナを見捨てるときは室内に二人だけだった)。そう考えると僕はそこまで不自然ではないかなと思います。アナと二人で歌うシーンまでがミスリードの一環だったせいで、完璧に騙されたし。ただ、見事などんでん返しではあるけど、ディズニー映画でそれをやるのはどうかな、というのはありますけどね。特に「Love Is an Open Door(とびら開けて)」がとても良かったのもあって。

そういうストーリー上気になる点もなくはないですが、それも些末なことに思えてくるほどの魅力に溢れてるのが良いです。もちろん音楽はそのひとつ。数々の楽曲の中でも「Let It Go(レット・イット・ゴー~ありのままで)」は予告での認知度もさることながらやはり曲の構成が素晴らしいです。寂しげなAメロ、変化を感じさせるBメロで盛り上げて、解放感溢れるサビのメロディ。そんな歌に乗せて橋や階段が徐々に組みあがり、その後一気にそそり立っていく氷の城の荘厳さ。エルサが自分を解き放ち雪の女王となっていく高揚感。「レリゴー♪レリゴー♪」って歌いたくなるのもしょうがないですねこれは。

ただ物語上でさらに重要な曲は「For The First Time In Forever(生まれてはじめて)」だと思うんですよ。伸びやかなメロディの美しさもさることながら、エルサとアナの二人が掛け合いで歌うところに引き込まれます。で、この曲は2回流れるんですね。最初は城が開かれ世界が広がることに興奮するアナと、即位して世界と向き合うことが不安で落ち着かないエルサを描くシーン。同じ状況でありながら外の世界に対する心情が真逆です。本当はお互いを想い合っているし「チョコレート!」で声も表情もシンクロするくらいの仲良し姉妹なのに、その後すれ違ってしまう暗示に思えます。二度目は氷の城に来て「一緒に帰ろう」と言うアナと、それを拒むエルサのシーン。ここでは姉のいる世界を望むアナの想いと、自分の戻れる世界はないと拒絶するエルサの想いとがぶつかり合います。曲名は同じながら「反復」を表す「Reprise」という言葉が付いていることから、直接対峙に至ってもそれぞれの抱える心情が変わらぬまま繰り返され、結果ぶつかり合いになります。

しかし最後の最後、二人が分かり合って平和が訪れ、エルサが城に氷を張って皆がスケートを楽しむシーンでこの曲のメロディがまた流れるんですよ(歌ではないけども)。すれ違い、衝突で使われた曲が、最後にエルサと世界との融和というシーンでまた使われる。これが象徴的でとても好きな曲です。

もう一曲、「雪だるまつくろう(Do You Want to Build a Snowman?)」もそうですね。ドア一枚隔ててアナとエルサが対称的に座っているシーン、これも二人のすれ違いを描いています。そしてこの曲はクライマックス、今度は凍ってしまったアナに対し同じメロディでエルサが歌うんですね。あの時のアンサーソングになっているわけです。ちなみにアナが命の危機に閉じ込められる部屋はエルサが閉じこもっていたのと同じ部屋に見えます。しかもエルサと同じようにドアにもたれかかって座ります。この時のアナの孤独感を、あの時エルサも抱えていたのでは、という思いがよぎり、余計に深みが感じられます。

で、この曲のメロディもラストシーンで流れます。こちらは「生まれてはじめて」のメロディの後に続き、二人が仲良く手を取って氷の上を滑るシーンから城の引きの画で物語が終わるところまで。すれ違いと喪失で使われた曲が、今度はエルサとアナがかつての関係を取り戻したところで流れるのです。実にフィナーレにふさわしい使われ方。

そしてエンドロールで再び流れるのが「Let It Go(レット・イット・ゴー~ありのままで)」です。ここに至りこの曲の持つ意味は全く異なり、「(一人なら)ありのままでいられる」から「(みんな受け入れてくれるから)ありのままの自分でもいいんだ」に劇的に変わっているのです。代表曲だから最後にバージョン違いを流す、というわけではないんですね。だから楽曲自体はもちろん、その使いどころも素晴らしいと思うのです。


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