2014
03.04

生きたいという意思の力。『ダラス・バイヤーズクラブ』感想。

Dallas_Buyers_Club
Dallas Buyers Club / 2013年 アメリカ / 監督:ジャン=マルク・ヴァレ

あらすじ
ペプチドTを飲め。



祝オスカー受賞!主演男優賞マシュー・マコノヒー!助演男優賞ジャレッド・レト!

1985年のテキサス、HIV陽性で余命30日と診断されたロン・ウッドルーフが、偏見に満ちた世界で生き抜こうとする実話を元にしたドラマ。

とにかくまずは主演のマシュー・マコノヒーですよ。『マジック・マイク』ではあんなにエロマッチョだったのが、役作りのために激ヤセ。エイズ患者はゲイであるという偏見で蔑んでいたロンが、自らがその対象となった途端手のひらを返したように態度の変わる周囲の友人たちに怒り、信じられずに調べまくって本当にエイズであると確信して絶望。それでも生への執着、生への渇望が抑えられず、それを予想外の行動で示していきます。この生き延びようという徹底した姿勢がロン自身を変えていき、それが利己的なものであるにも関わらず周囲の意識をも変えていきます。

これを体現するマコノヒー兄さんが素晴らしい。マコノヒーと言えば「男脱ぎ」ですが、まさかこんな話では脱がないだろうと思ったら意表を突いた脱ぎシーンまでしっかり披露。さすがすぎる!また、ロンの良き相棒となるトランスジェンダーのレイヨンが物語に深みと彩り(?)を与えています。演じるジャレッド・レトもスゴい。何がスゴいって、このお姉ぶりは完璧。もう、完・璧。終始困り顔のために時々見せる笑顔が眩しいジェニファー・ガーナーもいい存在感です。雰囲気違いすぎて最初は『デアデビル』のエレクトラとは気付きませんでしたよ。カレンダーの30日だけが見えるなど、印象的なシーンも多々ありますね。

重くなりそうな死の話を、独創的なビジネスや権威への抵抗などで「生きている実感」を求める生の物語に転換していてとても良いです。時にユーモラスなシーンも交えつつも、決して派手にはせず、生きる意志がじんわりと滲み出る演出に胸が熱くなります。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭でロデオ場裏の暗がりでファックしながら、ロデオに失敗して命を落とす男を凝視するロン。ここでもう生と死を象徴的に見せているわけですね。このロンという男は別に聖人君子でも何でもなく、ギャンブル好きで遊び人、仲間を騙して金を巻き上げることも厭わない、むしろ自分のことしか考えてないどちらかと言うとクズ野郎です。だからエイズだと分かった後も、自分が生き延びるためには非合法な手段も辞さない。

ところが色々調べて薬を手に入れてとやっているうちに、それをビジネスにしてしまう。神父に化けて薬を運び込もうとか発想がスゴいです。「まだ受け入れる準備ができていない」と祈る際、てっきり教会かどこかかと思ったらストリップの姉ちゃんのステージ前だったことは棚に上げて聖職者ヅラです。かと思うと薬を求めて世界中を飛び回る。もう完全にビジネスマンですよ。挙句会員権を売って薬を配るというダラス・バイヤーズクラブを立ち上げる。金のない奴はいくら重症でもお断り。そんな感じで、ロンはやはり自分の都合でしか動いてないのです。別にみんなを救おうとか導こうとか思ってないわけです。ちなみに一見FDAや医者は悪者に思えますが、女医のイブを配することで医療の人間が金儲けの人ばかりじゃないというバランスも取ってますね。

でも周囲がロンに反応し始めます。ビジネスライクな態度には変な同情もない。クスリに関して騙したりもしないし、徹底的に調べて効果のあるものを売る。そして独占的な権力にはどんなに打ち負かされても反抗し続ける。そこに惹かれた人々が次第に増え始めます。事務所の場所を提供するカップル。50ドルじゃダメと言われても諦めず400ドル揃えてくる若者。ロン自身は自分に正直に生きているだけのようですが、いつしかガサツなだけの男は無意識にイケメンぶりを見せる男になっていきます。ゲイへの偏見もなくなり、レイヨンには「自分を大事にしないことに腹が立つ」と言います。スーパーでレイヨンとの握手を拒む元仲間を凝らしめるシーンなんかシビれまくり。あの時のレイヨンの「やだ!ステキ!ホレた!」という表情が素晴らしい。それだけ精神的イケメンとなったからこそ、裁判で負けて帰ってきたロンをクラブの人々が拍手で出迎えるシーンは染みます。

ロンとレイヨンの無意識の信頼関係とも言うべき繋がりは良いバディ感がありますね。レイヨンが親に頭を下げて金を作り、ロンに渡して抱擁するシーンは感動的。それだけにロンが蝶(蛾?)の群れで手を広げる印象的なシーンで、同じころ死にゆくレイヨンが飛び立っていく蝶のようで悲しいです。あそこはもう少しドラマチックにしてもよかった気もしますが、却って死に目に会えなかったその後のロンのやるせなさも感じられます。

「死なないのに必死で生きてる気がしない」と語るロンの言葉には、そこまで突っ走ってきた彼の本心が見受けられます。だからラスト、彼は再びロデオに挑みます。生きていることを実感したいという願いからの挑戦。冒頭で死の象徴として描かれたロデオが、最後に生の象徴に変化するわけです。そして余命30日と言われた男は7年生きた、というキャプションと共に幕を閉じます。まさに人生を「生き抜いた」男の物語として、観る者の心に残るのです。


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