2014
03.02

大義と信念の差異。『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』感想。

kick_ass_2
Kick-Ass 2 / 2013年 アメリカ・イギリス / 監督:ジェフ・ワドロウ

あらすじ
おそロシア。



かつて街を守るヒーロー、キック・アスとして活動していたデイヴが再びヒーロースーツに身をまとい悪と戦う、シリーズ続編。

すげー楽しみました!市井のヒーロー活動に励むキック・アスと悪の道に邁進するマザー・ファッカーとの戦い、そこにお年頃のヒット・ガールという話が絡み、それらが混然となって繰り広げられるバトル。滾る思いがほとばしる「ジャスティス!フォー!エバー!」の掛け声。名前もスーツもエロいナイト・ビッチ。そして最強のヴィランである神取忍、違った、マザー・ロシア。クロエちゃんは当然カワイくて強くて最高だし、完全に個性を抑えていて顔かたちも微妙に違うし「ホントに本人か?」と疑うほどのジム・キャリーも良かった(入れ歯してたらしい)。かつて見たことがないほど凶悪な武器「ゲロゲリ棒」は、クロエちゃんの復讐劇としては『キャリー』を越えるほどの衝撃です。

ミンディ(ヒット・ガール)がデイブ(キック・アス)に拳銃で撃たれる訓練をするというのは、前作でミンディがダディにやられていたシーンを思い出しますね。そんなダディは写真のみの登場ですが、それだけで存在感をアピールできるニコラス・ケイジはさすがです。超イイ笑顔。

というわけで楽しんて観たわけですが……キック・アスの再起、ヒット・ガールの成長、レッド・ミストのヴィラン化、そしてヒーロー集団の登場と、結構盛り沢山に詰め込んでおり、これはサービス満点と言いたいところですが、そのせいで若干散漫な印象。また「現実でのヒーロー活動」は描いてるけど「ヒーローもの」とはちょっと違う気がするんだよなあ。そして主役のキック・アスはちゃんと出番が多いのに完全にヒット・ガールの物語。

ヒーローでありたいと願う一青年が本物と出会い、その厳しさを知ってなおヒーローになることを選択した前作に比べ、今作はヒーロー活動の現実というものを身も蓋もなく描きながらも深みが足りず、着地点があいまいになってる感があります。そして前作での成長を忘れてしまったかのようなキック・アスと、自己のアイデンティティを突き詰めた上で悪を倒すヒット・ガールでは、やはり主人公は後者に感じられてなりません。今作のカタルシスには裏があるのです。

↓以下、ネタバレ含む。








マザー・ファッカーは明快です。とにかく悪いことをする、キック・アスをブッ殺す、これだけです。マザー・ファッカーことクリスは今回は最初から最後まで頭おかしいですが(それがイイんだけど)そのクリスの歯止めであったハビエル(ジョン・レグイザモ)が消えてしまうためにもうノンストップ。思い付きとフィーリングと財力だけで悪の組織を動かします。ネーミングセンスは最悪ですが(ヒーロー側も似たようなもんだけど)ヴィランとしてはなかなか強烈。ところが最後の落下時に死にたくないとか言ってしまったために、その一貫性が台無しになってしまう。

一方でヒーロー集団ジャスティス・フォーエバー、彼らはヒーローとしての大義は掲げているものの、皆がそれに見合う信念を持って活動しているかは疑わしい。ベースがコメディとは言え、悲劇を背負って戦ってるかのようなそれっぽいプロフィールをでっち上げたり、観劇のため活動を休んだり、ボコられたからもう辞めると言い出したり。キック・アスとナイト・ビッチの関係には学生カップルが部活動後に密会しているような軽さがあります。どうも個人的復讐心を満たすためのはけ口であったり、自分が正義であると思う優越感に浸りたいだけに見えるのです。中心人物であった大佐はその真意がいまいち良くわからないまま退場。結局痛い目に会って敗北かと言うところで仲間を集めて最終決戦となりますが、もうヒーローVSヴィランというより数でぶつかるチーム同士の抗争に思えてしまうのですよ。実態が自警団とチンピラ組織だからそりゃそうなんだけど、前作や『スーパー!』に比べても「ヒーローもの」と呼ぶには欠落がある。それはたとえ大義はあっても信念を感じられない、ということです。

しかし厄介なのは、そんなハンパなヴィランと信念のないヒーローとの最終決戦や、「ジャスティス!フォー!エバー!」の掛け声が非常に滾るシーンでもあるということですね。信念は足りずとも「自分でも何とかしたい」という義憤は持っていて、実際行動はしている。容易くないし普段の生活もあるしそれでも正義でありたいという思いがあるからラストに集結もする。キック・アスを描いた「ヒーローもの」とは呼べなくても「現実でのヒーロー活動」は描けているからこそ、そこに同調し、熱くなれるのです。

ここでヒット・ガールです。ヒーローたちの心意気は買うけども、人生かけて正義という名のエゴを貫いたビッグダディ、その後を継いだヒット・ガールとはやはり完全に別物なんですよ。父の敵を討つため他人を巻き込んででも牙をむいたミンディに対し、デイブは父親の死後はヒーローを辞めようとする。どちらも父の遺志を継いだからこその選択の違いなわけですが、素人の自警団とプロフェッショナルの違いでもあるわけです。

ミンディはマーカスの言いつけに従い普通の女の子に戻ろうとします。チャニング・テイタムは知らなくても(笑)アイドルグループのPV観てキュンキュンしちゃったり、ダンス部(このダンスシーンは最高)で友人たちと親しくなろうとしたりするうちに、変わった方がいい→変われるかもしれない→変わろう、と心情を変えていく。しかし、結局変わらなかったわけです。これは彼女の自分探しの旅であり、なぜ戦うのかという己のアイデンティティを問うもの。もし友人たちとうまくいっていたら、全く別の人生を歩んだかもしれない。でも「本当の自分を探す必要はない」とマーカスに告げるミンディは、既に信念を持った人生を選択してしまったのです。周りで騒いでるキック・アスたちとは別次元の信念であり、キック・アスの戦いは終わったかもしれないけどヒット・ガールの戦いはこれからも続くのです。ラストに一人紫のバイクで走り去るヒット・ガールの孤高さはやはりヒーローと呼ぶにふさわしい。だからこれはヒット・ガールの物語なのです。その点ではヒット・ガールを描いた「ヒーローもの」ではあるんですけどね。

ちなみに、単なる妬みで悪の組織に入り、友人の父親が死ぬ原因を作り、その組織も簡単に裏切って、最後はちゃっかり皆の輪の中にいるあいつ、アス・キッカー。あれがこの話で一番の「悪」です。本当に悪い奴は素知らぬ顔して近くにいる――これ、狙ってやってるなら大したもんですけど、どうなんでしょうね。


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