2014
02.24

いつまでも残るあの日の表情。『新しき世界』感想。

atarasiki_sekai
新世界 New World / 2013年 韓国 / 監督:パク・フンジョン

あらすじ
セメントは飲み物です(死ぬけど)。



韓国893の巣窟である、表向きは大企業のゴールドムーン社。その犯罪組織に潜入捜査している警官のジャソン、彼の兄貴分チョン・チョン、ジャソンを送り込んだ上司のカン課長らが壮絶な組織の跡目争いに関わっていくクライムストーリー。

いきなり血だらけの男のショットから始まり、すぐさま内から外からのカッチカチのセメント責めでまず圧倒されます。これでもう舞台が容赦ない世界であることを宣言してるわけですね。でもそれが分かっていてもその後の展開には見入ってしまうこと請け合い。特に中盤の「うわーもうダメだ!」っていう絶望感、これは凄まじい。また、とても実力者に見えないチョン・チョンがエレベーターで見せる気迫には度肝を抜かれます。バイオレンス描写はそこまで多くはないですが、迫力は十分。

さらに輪をかけて心に迫るのが主要3人の人間関係です。いつ身元がバレるかのストレスを8年も続け苦しむジャソン。「めんどくさい先輩」感がプンプンする上に組織のNo.2とは思えない胡散臭さながら、周りは敵だらけのチョン・チョン。とびきり危険な敵地に部下を送り込むカン課長。3人とも心休まるときはなく、皆が孤独です。だからこそ、特別な絆の強さが浮かび上がります。

カン課長役のチェ・ミンシクはそこにいるだけで存在感がスゴいですね。ジャソン役のイ・ジョンジェは『10人の泥棒たち』で観てますが、チョン・チョン役のファン・ジョンミンは初鑑賞。この主要3人が皆素晴らしくて良いです。ジュング役のパク・ソンウンも調子付いてる若手ぶりが板についてますが、アリキリの石井に似すぎ(多分みんな思う)。

売り文句で『インファナル・アフェア』+『ゴッドファーザー』と言われるとちょっと型にハマった感じがしちゃいますが、決してそんなことはないです。自分の生きる道は何か、それを決意させるものは何か。葛藤、喪失、覚悟、そんな男たちの生き様が熱く胸に迫り涙する。素晴らしい出来です。

↓以下、ネタバレ含む。








当初のジャソンとチョン・チョンは、それほど仲が良いようにも見えません。チョン・チョンはああ見えても裏切者を始末するときの非情さと言い、駐車場からエレベーターまでの意地の境地と言い間違いなく極道です。組長を殺させたのも多分彼じゃないですかね?そんなチョン・チョンがなぜジャソンの秘密を知ってなお彼を始末しなかったのか。これはもう二人の関係が見え方と逆で非常に強いものだったからですね。冷たいを超えて失礼でさえある態度の弟分に、唇とがらせてふて腐れながらもブラザーと呼び続ける。これは信頼関係がないと無理なわけで、実際ほかの者はチョン・チョンの言動には畏まっています。観てる方もウザい先輩だとばかり思ってるので、真の姿が若干見えにくくてうまくミスリードになってる気がします。だから死の間際に「俺を許せるか」と聞く兄貴に答えられないジャソンに、先の展開が分からなくなる。

ラストのジャソンが部下たちを颯爽と率いてボスの椅子に座る、あそこはたまらなくシビれるシーンですが、彼が最終的に兄貴の言葉を採り、真実を知る者全てを始末するに至った、その決め手がこの時点でどうにも分からなかったんですよ。決して任務を放り投げることはせず、ここまで命を張って様々なものを犠牲にしてやってきたわけで、反発もしたもののカン課長を裏切ってまで兄貴の言葉に従う決定的な理由がハッキリしなかったのです。しかしそこでおもむろに流れる6年前の映像。ここで若き日のジャソンとチョン・チョンがひと暴れした後、本当に最後の最後でジャソンが一瞬だけ見せる表情、これで全てが理解できます。ホントに一瞬。それだけにエンドロールをバックにその表情がいつまでも残る。これが泣けます。

裏切りと派閥争いのヤクザの世界で心を許し合った兄弟と、子飼いの部下を利用し続けるために本心を殺していた父親。親の心子知らずだったのか、親心を知ってなお道を選んだのか、とにかくジャソンは覚悟を決めて兄の遺志を継いだのです。そう考えると、チョン・チョンとの過去シーンはジャソンの思い出としての回想、カン課長との出会いシーンはカンの一方的な回想に思えてせつないです。子は親を乗り越え、弟は兄を次ぎ、そして新しき世界が始まる。それは今までの自分とは全く異なる、確かに「新世界」なのです。


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