2014
02.20

列車に詰め込んだ世界の縮図。『スノーピアサー』感想。

Snowpiercer
Snowpiercer / 2013年 韓国・アメリカ・フランス / 監督:ポン・ジュノ

あらすじ
クロノールをくれよー。



雪と氷に閉ざされた世界で生き残った人間たちを乗せて走る列車。そこで暮らす底辺の人々が絶対的階層の支配者に反旗を翻す、というサスペンス・アクション。

『グエムル』監督ポン・ジュノのハリウッド進出作ですが、韓国映画の味を損なわないのはさすが。列車の最後尾から先頭車両に向かって進んでいくというあらすじから、ブルース・リーの『死亡遊戯』や『ワンピース』のエニエス・ロビーに向かう海列車みたいな、敵を倒しながら前へ進んで行く的な感じかと思いましたが、そんな単純な話ではありませんでしたね。いやもうすげえ面白い!

あまりに現実離れした設定に興奮。なぜ興奮するかと言うと、これが見事な寓話だからですね。「そんなバカな」というバラエティ豊かな車両にはブラックユーモアが溢れ、緩急のある独特の間の取り方や、ハンドアックス振り回す狭い空間でのアクションもイカしてます。グロいシーンはそれほどでもないですが、羊羹ことプロテイン・ブロックについてはなかなかキてますね。味がなさそうなんで僕はコンニャクに見えましたけど。あと寿司が食いたくなります。

レジスタンスの先頭に立つカーティス役のクリス・エヴァンスは髭面すぎて誰だか分かりにくいですね。知らずに観たらあれが『キャプテン・アメリカ』とは思えないかもなー。なんて思ってましたが、ティルダ・スウィントンに比べれば全然マシでした。いやホント、誰だよあれ。彼女の一作前『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』の欠片も残ってなくてスゴいです。あと『グエムル』の親子、ソン・ガンホとコ・アソンが再度親子役で登場するばかりか、二人揃ってヤク中というマイペースぶりが愉快で、しかもそれが伏線にもなってるのがイイ。ソン・ガンホの「タバコの味はアホには分かるまい」って言うセリフがクールです。

先頭に行けば幸せなのか?地獄の先は天国なのか?これは世界の縮図であり、苦悩するクリエヴァは渡る世間に揉まれる人間そのもの。逃れようのないシステムは『悪の法則』を思い出します。ナイフのシーンはちょっと『プライベート・ライアン』を彷彿とさせますね。ちなみに『スノーピアサー』の漢字表記は『雪國列車』らしいです。なんか一気に川端康成っぽくなるんですけど。トンネル抜けるしな。

↓以下、ネタバレ含む。








正直ありえない設定ではあります。なぜ一つの列車内であそこまでのカーストが存在するのか?あの列車以外の世界はホントに死滅してしまったのか?一年もかけて走ってる間に線路が凍ったりしないのか?そもそもあの列車の動力源は何なのか?

でもそんなのは些末なことなんですよ。これは列車をひとつの世界と見なすことで、社会の仕組みを分かりやすく描いた寓話と見て取れるからです。社会の底辺とその支配層の争い、その格差社会に抵抗して反旗を翻すカーティスは、幾度も歴史に現れる革命の象徴です。エンジンが止まると凍りついて途端に死を迎える、つまり列車のエンジンは生活の基盤となる環境や衣食住であり、世界の営みそのもの。止めることはできないから壁があれば突き抜けてでも進む。うまく機能してそうに見えて崩壊と紙一重の危うさを含む。これはテロや戦争でいとも簡単に生活基盤が崩れることと同義です。ウィルフォードは世界情勢をコントロールする実力者ってことでしょうね。一周回ってちょうど一年、皆でハッピーニューイヤー!というのも、一年という決まったサイクルで動く人々の生活をそのまんま表してるんでしょう。そう考えると、エンジンルームで流すカーティスの涙は、ウィルフォードを倒しても何も変わらないことに気付いてしまったからと考えられます。エド・ハリスが泰然とステーキ食いながら死んでいくのは、このまま続けるか滅ぶかしかないことをとっくに承知だったからでしょう。つまり人には役割があるという考えです。特に労働力になってるわけでもない最後尾の存在意義が分からなかったけど、最後の方で部品の代役だと判明するときにそれを感じます。

車両を進むごとに文化的になっていくことについては世界の進化も感じられます。食って寝て子供作っての世界から、食料を作り出す段階に進み、飲み水を確保し、闘争を経て進化していく。自然を操作し、温泉やサウナに入ったり髪を整えたりして、踊ってラリって。生命を維持する必要性の車両から人間ならではの欲望の車両までが次々と現れる、凝縮された世界です。学童車両は若干タルいというか、なんでそんなのんびりしてるのって感じですが、幼い頃から思想を刷り込む教育の怖さを感じるし、にこやかな妊婦先生がマシンガンぶっ放すのは、愛想のよい隣人の知られざる本性や、学校での銃乱射事件を思い起こします。プロテイン・ブロックも食品の原料や管理の問題を表しているんじゃないか、とかね。なんだか全てが現実世界の暗喩じゃないかとさえ思えてきます。

でもそうだとすると、人類の行き着く先は破滅しかないということになるんですよ。生き残った二人が外に出たときに目にする白熊、あれはこの世にまだ生命が残っていると一縷の望みを醸してるように見えますが、自然界は人間の思惑と関係なく続いていたというだけで、冷静に考えれば極寒のなか子供二人であんな山の中で生きていけるわけがない。そういう意味ではかなり残酷なラストに思えます。

ひとつ言えるのは、生き残ったのが不思議な力を持つ娘のヨナだったということ。なぜ透視能力という先の道を見通す力を持っていたのか。ヨナ自身が、他の人類より進化した生命体だからではないか。ならばこの新しい世界で新たな人間の歴史を作っていくことが出来るかもしれない。そんなふうに思わせる仕掛けも残している。いろいろ深読みできて楽しいです。


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