2014
02.15

惹かれ合うワイルドとクレバー。 『ラッシュ プライドと友情』感想。

rush
Rush / 2013年 アメリカ・イギリス / 監督:ロン・ハワード

あらすじ
ムカつくあいつは気になるあいつ。



実在のF1レーサー、ジェームス・ハントとニキ・ラウダのライバル関係を1976年のF1世界選手権を舞台に描く伝記ドラマ。

野生派でワイルド、走ることが生きがいのジェームス・ハント。理論派でストイック、メカにも強いニキ・ラウダ。どちらかに偏る感じではなく結構平等に描かれており、それぞれの人生を送りつつもレースでは常に気になる関係というのがよく出ています。実際は二人が直接やり取りするシーンは多くはないですが、正反対の二人がお互いを意識することで知らず高め合っていく姿が、ベタベタせずとも深い信頼関係に結び付いていくというのを描いていてそれが感動的。

レースを舞台にしながらレースシーンに依存しすぎない作りになっていることからも、ハントとラウダという人間自体を重視していることが伺えます。それでいてレースシーンは、低い視点から巻き上がる風や水、熾烈なデッドヒートなどを迫力ある映像で映し、レースものとしても申し分ないです。ポイントであるドイツGPや日本GPの盛り上げかたもイイ。出会いのF3から76年のシーズン丸ごとまでの長いスパンとして語られますが、はしょるところとじっくり描くところの切り分けがうまく、そんなロン・ハワードの要所を押さえた堅実な演出には安定感があります。気付くと心地よい旋律に包んでくれるハンス・ジマーの音楽もとても良かった。

クリス・ヘムズワースが『マイティ・ソー ダーク・ワールド』のときよりシュッとしてて、ヤンチャでヤりまくりながらレース前にはナーバスにもなるハントを好演。それ以上にプロに徹するラウダを演じるダニエル・ブリュールがとてもイイ。あの独特のしゃべり方は本人を真似てるみたいですね。世代的にはF1と言えばセナやシューマッハなのでラウダもハントもよく知らないんだけど、それでもフェラーリとマクラーレンの戦いというのは燃えます。F1のエグゾースト・ノートにはプリミティブな部分を刺激する何かがあるんだろうなあ。「男は女が好きだが車はもっと好きだ」という台詞には思わず納得してしまいます。まあ僕はペーパーですけどね。

↓以下、ネタバレ含む。








ハントがモテモテの人気者すぎてラウダがちょっと気の毒にさえ見えるけど、ヒッチハイクで女性よりも優遇されたりするのであながち一方的でもなくてよかったです。ラウダが安全運転から突然ギアを入れるシーンがカッコいい。そもそもハントは伝記によると5000人の女性と付き合ったらしいですから、比べちゃダメですね。ヘコみます。

相手の実力を認めたくないというプライド、表彰台に上る相手を見るときの嫉妬。そうやって常に張り合ってきたから気になってしょうがないわけですよ。超えるべき相手であり、同時に抑えるべき相手。やり方は違えどレースにかける情熱は同じであり、優劣を決めるべき「対等な」ライバルです。だからラウダの事故に責任を感じるハントがそれでもどうしてもラウダへの手紙を書けなかったのは、自分だったら何と言われたら気が済むだろうと想像してその答えが得られなかったからじゃないかと思うんですよね。ラウダを侮辱した記者をハントがぶん殴るシーンでも、自分のことを言われたように怒る。ラウダも少し不本意そうな感じを残しながらも「君のおかげで帰ってこれた」と言う。ここまでくれば、二人がスタート前に交わす視線のやり取りには言葉にならない多くの会話があるのが分かります。積み重ねてきた確執が友情と尊敬に変わる。これが熱い。

ところがそんな二人の激突を期待するラストレースで、ラウダがまさかの棄権。映画的にはね、事故から死にもの狂いで復帰した後だけに最後はレースでケリをつけて盛り上げてほしいところなんだけど、まあそれが史実だからねえ。そもそもこの話を映画化する時点でクライマックスがこうなることは分かっていたわけだから、盛り上げる方向はそちらではないということです。守るべき者とリスクとを比べた結果であることは明らかだし、自分の命のことも考慮するラウダのプロらしさというものもここまでに積み上げられている。ニュルブルクリンクのときのような悪天候での惨事を思うとラウダの判断は経験に基づいた真っ当なものであり、不自然ではありません。むしろその判断が真っ当であり「後悔はない」と言うにもかかわらず、ラウダの無念さが微かに表情から滲み出しているのが良いのです。

なによりこの物語はレースの勝敗に主眼を置いたものではなく、あくまで二人の関係性を描いたもの。ラストの飛行場のシーンはこれまでほとんど会話らしい会話をしなかった二人が唯一まともに会話するシーンです。ちょっと喋らせすぎかなと思わなくもないですが、生死を超えたシーズンも終わり、近くに誰もいない二人きりの状況では、照れくささもあって思わず色々話してしまうものかも。チャンプと呼び合う姿に互いを認め合う感じがして良いのですが、それでも必要以上にはベタつかないままラストのナレーションです。ここでハントのその後が語られ、ラウダは彼をハッキリと友人と呼ぶ。ここまで避けてきたその表現を、ハント亡き後、もうハントとは語り合えないからこそ、最後の最後で友人と明言する。だからこそ一気に泣けます。

ちなみに実際には、若い頃二人はルームシェアまでしてたらしいですけどね。それを知ってもこの映画の良さは変わりませんが。むしろ「なんだ仲良かったんじゃん!」とほのぼのします。


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