2014
01.27

かわいそうな俺を助けろ!『ドラッグ・ウォー 毒戦』感想。

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毒戦 Drug War / 2013年 香港・中国 / 監督:ジョニー・トー

あらすじ
生きねば。



麻薬には超厳しいらしい中国公安警察と麻薬組織との戦いを描きます。しかも監督がジョニー・トー、とくれば派手なガンアクションを期待してしまいますよ!

で、これが期待以上。そうは見えない人たちの過激な弾幕だったり、撃たれて当たりまくる近距離銃撃戦だったり。スローは使わず、むしろ美しさは排除して、より直接的に描かれています。なので撃たれたら痛いというのが分かりますね。そのわりには弾食らってもなかなか死なないんだけど。銃撃の合間にも車に轢かれたり吹っ飛ばされたり容赦ないです。容赦ないといえば、体内に隠した麻薬を取り出させる様子も大概ですね。

実際は銃撃戦自体はそれほど多くないと思うけど、その代わり囮捜査でのスリルや追い詰められてからのハッタリなどの見せ場が連続して起こります。何かを行う緊張感というサイクルが短いスパンで繰り返されるわけです。この緊張感の持続がうますぎて、もう最初から最後までずーっと面白いんですよ。

それでいてドラッグの恐怖やハードボイルドな男のドラマかと思ったら、描いてたのはクズの生き様だったという意外性。生きることへの執着を通り越して生物の根元的な意欲というか、徹底した自己愛というか。とにかく絵面のカッコよさを担うジャン警部役のスン・ホンレイと、その対極のカッコ悪さを担うルイス・クー演じるテンミンが同列で行動し、ある意味それぞれが生き様を全うします。人間的に欠陥のあるクズは他の映画にもよく見られますが、こちらは無様という点で群を抜いてますね。

↓以下、ネタバレ含む。








工場の聾唖の人たちがとんでもない戦闘力だったり、あまりに普通だけどそれだけにそら恐ろしい黒幕だったり、登場人物たちの意外性にはたまらんものがあります。ジャン警部なんて芝居がうますぎて役者デビューも余裕ですよ。さっきまで会話してた人物の話し方や癖を取り込んで今度はその人になりきって違う人物と会うとか、敵を吸い込んでその能力を自分のものにするカービィを思い出しますね。思い出さないか。

それにしてもね、最初は妻と子を殺されたテンミンが復讐のために利用できる者を利用し裏切りを重ねていく、みたいな展開かと思うじゃないですか。全然違いますからね。彼を兄貴と慕う工場の聾唖たちが、死んだ妻子のためにとなけなしの現金を紙札代わりに燃やすシーン、悪党の信頼関係にグッとくるのかと思いきや、テンミンは彼らに対して一顧だにしないですからね。涙を流す姿は妻子の死を悲しんでいるように見えますが、一通り観た後だと「俺ってかわいそう……」と自分を憐れんでるようにしか見えません。一人で現場を掻き回し、あくまで自分が生き延びることだけを考えるテンミンは、最後の最後まで命乞いをします。ジャン警部もテンミンを最後まで信用しなかったし、結局あれだけ長くいて二人は一度も信頼関係が成り立たないまま終わるわけです。ドライです。

でもどうも非情とか卑怯という印象とは違うんだよなあ。自分を一番大事にするためにあらゆる手を使うその姿は一貫性があるとさえ言えるし、ある意味作品中で最も正直なのかもしれません。かなり大目に見ればですけど。とは言え、意外性のある登場人物としては、このルイス・クーのキャラが一番ですね。


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ルイス・クー、スン・ホンレイ 他

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