2013
12.16

極限に見る生きるという意志。『ゼロ・グラビティ』感想。

gravity
Gravity / 2013年 アメリカ / 監督:アルフォンソ・キュアロン

あらすじ
無限に広がる大宇宙。



宇宙でのミッションを行うライアン博士と宇宙飛行士のマットが船外活動時にトラブルに見舞われるスペースドラマ。これは3D推奨です。

素晴らしい!なんという濃密な91分!観終わった後しばらく動けなかったです。宇宙にいる、という夢に見たその感覚を実感できる浮遊感。3D映像を完全に活かした立体感。小さい頃から宇宙に憧れていた身としては、単なる「鑑賞」にとどまらず「体感」になっていることに衝撃を受けました。ぐるぐると視点が変わりつつも途切れることのない自由自在なカメラは、単なる長回しというレベルを凌駕しています。どうやって撮ってるの?とはもちろん思いますが、それよりこういう風に撮ろうと考えて実現したのがスゴい。

映像がスゴいのは予告でも分かってましたが、その映像にピタリと沿った話にもう中盤から泣きっぱなし。宇宙はこんなにも美しく静謐で不自由。そしてすぐ隣に死が潜む。だからこそ生きる意志が胸を打つ。描かれるのは「生きること」そのものであり、宇宙という無の世界から抜け出て新たに「生まれる」こと。生の誕生には無条件に心震える。だからこその感動です。また、僅かな台詞や行動でライアンやマットの人生の背景が見えてくるのもスゴい。素晴らしいのは映像だけじゃないぞ。

ちなみにエンドロールでヒューストンの声かエド・ハリスだと知って興奮!

↓以下、ネタバレ含む。








宇宙から見た地球は美しい、それが実感できるというのがまずスゴい。宇宙服やメットにまで写り込む地球。そして外から映しているカメラがいつの間にかメットの中に入って主人公視点になりまた離れていくという、客観と主観がシームレスに続く映像はもはや神の視点。また宇宙は美しさだけではなく恐ろしさもあるわけで、次々と襲い来る危機に息つく暇もない。SFと言うよりディザスターでありサバイバル。すぐ後ろを超高速で飛び去るデブリ。そのスピードと威力にキレイに穴が開いた人間の顔もちゃんと見せる。というように、宇宙そのものを描いたというのが実にストレート。無音の宇宙をここぞと言うときの音楽や鳴り響く心音で彩ることも抜かりないです。いくら宇宙でもあれでずっと無音だったら味気ないし、音楽があるからこそ映画的感動がある。ラストのあ~あ~って歌い上げるのがまたイイですね。余分なものは切り捨て、徹底して宇宙の現場しか映さないという点で、同じく現場のみを描いた『キャプテン・フィリップス』にも通じる臨場感があります。

マットはこれが最後のミッションでありそれまで様々な経験をしてきたんだろうとか、ヒューストンとはいつもジョーク交じりの会話を交わしていたんだろうなとか、観てると分かってくるんですね。ライアンが娘を亡くして空虚な人生を送っているのも途中からにじみ出てくる。バックの話が見えてくるんのです。生きることを楽しんでいるマットと生きることの意味を見失っているライアンという立ち位置です。

そんなライアンが生まれ変わるプロセスが描かれます。これは胎児のように丸まった格好に顕著ですが、宇宙という無の世界で、最初は弱々しく泣き喚くも、生きることの本能に気付き、必死に外へ出ようと試み、そして最後に自らの足で立ち上がるまでを描いているわけです。ライアンを紐で繋いだマットはへその緒で繋がった母親であり、子宮を示すソユーズに現れ、生まれ出る勇気を与える役割。そう考えるとソユーズに絡まったパラシュートの紐は蠢く内蔵のようにも見えます。そして羊水のような海。生まれたばかりの弱々しい足取りで立ち上がるラスト。胎内という宇宙から重力のある世界への誕生です。原題の『Gravity』の所以はラストにあるわけです。

そういった生を受けるという暗喩をもって、生きるという意志の物語を紡いでいます。万策尽きて安らかな死を選ぼうと思ったときに戻ってくるマットに驚き、幻と知ったときに気付く生きるという意志。娘に諦めないと宣言し、持ち出した消火器を活かすとっさの機転も使い、最初のデブリ遭遇で翻弄されてたのとはうって変わって何がなんでもやり抜くという意志。ただ帰るという意思。着水して海に沈み、宇宙服を、つまりそれまでの自分を脱ぎ捨てて海上に出る、空気が、水が、土がある。生きているということを実感する。誰にともなく、或いは全てのものに向けて自然と口をつく「ありがとう」。壮絶な映像との相乗効果で、生きるという意志をストレートに描いている。そこに心震えます。


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