2013
12.12

逃げ出すことは許されない。『かぐや姫の物語』感想。

kaguyahime
2013年 日本 / 監督:高畑勲

あらすじ
竹の中からこんにちは。



ジブリの高畑勲が『竹取物語』を映画化。懐かしの「まんが日本昔ばなし」を思い出してしまうほど、ストーリーは本当に竹取物語そのまんま。つまり子供の頃読んだり観たりした「かぐや姫」のお話です。しかしこれを「そのまんま」で終わらせるには、独自の演出が随所にありすぎるわけですよ。

水彩画のような柔らかさ、時折見せる水墨画のような荒々しさ、という映像は美麗ではあります。桜のシーンなどは美しかったですね。しかしそれ以上に気になったのはキャラデザの意外な斬新さ。翁と媼からしてなんか顔と体のバランスが妙だし。かぐやの側に仕えるちっこい童女がコミカルな役どころとしてあるのは分りますが、相模のガタイのデカさは勝てる気がしないし、名付け親の秋田殿はどう見ても妖怪だし、帝のアゴは鋭すぎてかぐやの頭に刺さりそうだし。ちなみに媼のポロリシーンは何か見てはいけないものを見てるようで非常にいやーな気分になりました。

相変わらず本職の声優以外の人が声をやってますが、地井武男と宮本信子以外は事前に誰がやってるか知らずに観たってのもあって今作はそれほど気にならなかったですね。ああでも橋爪功はすぐに分かったけど。地井武男の演技はとても良かったです。

ラストの20分くらいはスゴかった。個人的に高畑作品は肌に合いませんが、それを抜きにしてもこれは高畑勲の最高傑作だと思います。

ちなみに翁が終盤「(赤ん坊の頃は)おしめを替えたりしたのに!」とか言ってたけど、常に丸出しだったよね?

↓以下、ネタバレ含む。いつもより長いです。








映像の中で特に良かったのは、赤ん坊の描き方がものすごくカワイイところ。ふにゃふにゃ丸々とした赤子がじたばたする、この可愛らしさは育ての親が愛情を感じるには十分すぎるもので、特に翁の「ひーめーおいでー」を連呼しながらいつしか涙ぐむシーンなどはもう本当に可愛くてどうしようもない感がものすごいです。それ故に翁の行動は常に姫のためにあることが分かります。都に上るのも貴族の教育をさせるのも高貴な方に嫁がせようとするのも、全てはそれこそが姫の幸せだと考えたから。天から授かった子を立派に育てようとする翁にとっては、天に近い存在となること=偉くなること=幸せという図式であり、別に常軌を逸している訳でもないのです。媼もこの件であまり翁を咎めたりはしないですからね。

一方のかぐや姫は何度も歌に歌う通り自然の中ありのまま好きな人たちの中で暮らすことが幸せなわけで、非常に分りやすい齟齬が生まれているわけです。この時点で姫と世界との間にはギャップがある。美しいという噂だけで顔も見ずに求婚する人々と会わなければならない。退屈な世事に耐えなければならない。それは当時の習慣としてはむしろ普通のことだったはずですが、行動派なだけに馴染めない世界に苦しむかぐや姫はむしろ現代的であり、女性を宝物に例える=物扱いする世界を否定しているわけです。姫と世間のギャップは見た目にもあります。他の個性的なキャラクターたち、それこそ捨丸兄さんでさえ天パという個性(?)があるなか、かぐや姫だけが美少女すぎるというか整いすぎてて、一人だけ浮いてる感が強すぎるのです。なぜここまで容姿も感覚も違う世界に来たのか。自問した結果が「精一杯生きるため」だと言うのです。これね、これはもう神の子が悟りを開くためする苦行のようなものですよ。

ここで月の使者たちが降臨するシーンに注目すると、もうあれ完全に仏じゃないですか。しかもなんか陽気な音楽奏でながらやってきて圧倒的な神々しさ。いくら弓矢で武装した兵士を配しようが絶対敵わない、と思わせるのです。そして不条理な思いも忘れがたき記憶も、すれ違いざま全てを飲み込みそして取り込んでいく、まさに神のみわざ。これは『平成狸合戦ぽんぽこ』の百鬼夜行シーンが持つ人外の無敵さとお祭り感に通じます。要するに月の都は天界であり、そこの住人は神なのです。

「夢だったのか」というシーンが2回ありますね。最初は祝いの宴から逃亡して走りまくり雪に倒れるところ。次が捨吉との逃避行(というか逃飛行)。どちらも現状から逃れて自由になろうとする場面です。これもラストの神々降臨を考えると、むしろ夢ではなく天の力で元に戻された、あるいは予知夢を見せられたと考えるのがしっくりきます。とするとこれは「苦しみから逃げ出すことは許されない」ということを示しているように思えます。

そして天の子は月の使者たちに迎えられます。山川草木・花鳥風月を慈しみ、人の世の苦行に耐え、神として天に上るわけです。最後に記憶を失ったはずの姫が涙ぐみながら地球を振り返りますが、記憶が残っているということは、もはや人間ではなくレベルアップして神になったのだと考えられます。つまりこれは神の武者修行の話なのです。赤ん坊の姫が月をバックに浮かび上がる最後なんて、まるで『2001年 宇宙の旅』のスター・チャイルドのよう。万物をつかさどる神の存在であることを示しているように思えてならないのです。

とまあ、どうしてもかぐやの存在に違和感を覚えてしまったために敢えてかぐやの心情を考慮しない解釈をしてみました。貶めてるわけじゃないんですけどね。だって「姫の犯した罪と罰」と言うなら、罪は下界の者を踏み台にしたこと、罰は下界の美しさはもう空の上からしか見られないことですよ。地上に行く前にあの歌を歌っていたという天界の人と同じ運命を辿るのでしょうね。とか言いつつ、妻子ある男をあっという間に駆け落ちにまで引きずり込むかぐや姫の魔性を見て「銀座ナンバーワンのキャバ嬢になれそうだ」と思ってしまったことは反省してます。


かぐや姫の物語 [Blu-ray]かぐや姫の物語 [Blu-ray]
(2014/12/03)
不明

商品詳細を見る


かぐや姫の物語 [DVD]かぐや姫の物語 [DVD]
(2014/12/03)
不明

商品詳細を見る

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/732-1ef10bb6
トラックバック
back-to-top