2013
11.20

空に落ちる恐怖、繋ぎ止める手。『サカサマのパテマ』感想。

saksama_no_patema
さかさまのぱてま / 2013年 日本 / 監督:吉浦康裕

あらすじ
サカサマ人間あらわる!



空を見上げてはいけない人々の世界アイガ、そこで暮らす少年エイジの前にサカサマの少女パテマが現れるというSFファンタジー。重力が逆に働く二つの世界というコンセプト、しかも人だけでなくその世界の物体まで同方向の重力を受けるというところまで、まんま『アップサイド・ダウン』。短い期間でここまでの類似作品が和洋2本、しかも特異な設定のものが出るというのは面白いですね。

しかし決定的に違うところがあって、それは「空に落ちる恐怖」です。『アップサイド・ダウン』ではそこに地面が見えていたので危険さは感じても恐怖感はあまりなかったけど、こちらは桁違い。パテマ視点からエイジ視点になってようやく分かる、踏みしめる台地がないことの心もとなさと言ったら。上と下が逆になっただけでこうも恐ろしい思いをするものか、とちょっと目から鱗。文字通り逆転の発想です。小林泰三の『天獄と地国』というSF小説で重力が逆に働く世界を描いてたのを思い出しました。

そしてもうひとつのキーワードが「密着」。重力が逆に働く少女の手を離すと空に落ちてしまう(=飛んでいってしまう)ので、エイジは何もないところでは常にパテマと手を繋がなければならないという正当な理由があるわけです。時には胸の下の辺りをガッチリとホールド。なんですかあれは!絶対おっぱい当たってるじゃないですか!けしからん!羨ましい!という下衆の勘繰りが止まらないわけですが、重力に対抗するのがスキンシップだというのは大きなポイントですね。

手を繋ぐとお互いの重力が相殺され月面のように身が軽くなるっていうのが、観てて浮遊感を感じて心地いいです。大空が開けているのに空を見上げることが禁忌とされる世界、逆に地下にいながらも賑やかな人々の世界。無機質と暖かみという対照的な美術も魅力的。ただ、それだけにこの世界に対する説明が明らかに不足していて、最終的に観る者を置いてきぼりにしてしまう作りが非常に惜しいです。

↓以下、ネタバレ含む。








何でも説明すればいい訳ではないですが、それでももう少し語るべきじゃないかという点が二つ。一つ目は重力をエネルギー利用しようとして起こった事故、それにより何が起こったのかということ。それが語られないせいでアイガの人々、特に敵のリーダーがなぜあんなにもサカサマを憎むのか分からず、ただのキモい独裁者になってしまってます。人物の背景が乏しくて薄っぺらく感じてしまうのです。そして二つ目は世界の先にある大地が一体何なのかということ。明らかに人工物なのに特に見て回るわけでもなく戻ってきてしまうし、なんなのあれ。あの世界の構造はもはや惑星とは思えないんだけど、その辺り全く触れずに終わるのでスゴくもやもやします。小説版を読めば補完されてるのかもしれないけどそれは別の話。

雰囲気自体は悪くないんですけどね。なんかなじむなあ、と思ったらそれもそのはず。空に向かって降ってきた女の子を救った少年が、その後囚われた女の子を救うため協力者を得て、日常を捨てて敵本拠地に乗り込み、誰も見たことがない地に赴き、少女とともに境界を壊して悪者から世界を救う。これ、構造がほとんど『ラピュタ』と同じなんですよ。空も飛ぶしね。別にパクリとか言っているわけではなく、ボーイ・ミーツ・ガールな冒険活劇はやはりワクワクするなあ、ということなんです。だから決して嫌いじゃない。

パテマとエイジの信頼度が上がるほど密着度も上がる。最後は完全に抱き合ってますからね。地下の青年ポルタがかなりかわいそうですが、この世界が今後どうなるかというのは興味深いです。


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