2013
10.14

「情熱」が「激情」に変わるとき。『パッション』感想。

passion
Passion / 2012年 フランス・ドイツ / 監督:ブライアン・デ・パルマ

あらすじ
女の争いは美しく恐ろしい。



広告会社の重役で目的のためには手段を選ばぬクリスティーンと、彼女に憧れる有能な部下のイザベル。二人の女性のあいだで繰り広げられるパワハラ・セクハラ対決がやがて恐ろしい結末を迎える、デ・パルマ映像キメまくりのサスペンス・スリラー。知らなかったけどこれ『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』というフランス映画のリメイクなんですね。ただ設定は色々変わっているようです。

前半の攻守が二転三転する広告業界での熾烈な手柄争い、これが現代社会に潜む闇として怖い。むしろある事件が発生する後半より怖いわー。そこには立場を利用し上手く言いくるめる上司の汚さとか、呆然としながらも暗黒面に目覚めゆく歪みなどがありますが、それでは終わらない。ドレスや靴から鮮血まで鮮やかな色使い。女性ならではの官能的なやり取り。取り乱したイザベルを駐車場まで追う長回しのカメラ。呆気に取られつつ最後には感嘆する画面分割。それらの演出が効果的で、洗練された都会のオフィスの裏にある女性ならではの争い方が、ビビッドでいながらウェットに立ち上がります。

主演の二人は快演ですね。クリスティーン役のレイチェル・マクアダムスはキュートなのに腹ん中真っ黒な感じがスゴいです。一介の地位ある者がここまでやるかというネチっこさね。イザベル役のノオミ・ラパスは『プロメテウス』ではシャーリーズ・セロンとやり合ってたし、よほど金髪美女と相性が悪いのだな。狂ったように笑うシーンに悲しみと恐ろしさがにじみ出てます。

ミステリとしては意外性は少ないんだけど、見せ方が巧みなので観入ってしまいます。あとあれね、尻視点の映像。斬新だけど、難を言えば主役であるはずの尻が見えないってことですね。これ重要じゃないですかね!(力説)

↓以下、ネタバレ含む。








華やかでいながら目的のために手段を選ばないクリスティーンは、情事の映像を見せつけたり相手のPCから偽造メールを送ったりパーティーで笑い物にしたりと明らかに常軌を逸しています。野心家の範疇を超えて狂っているかのよう。最初は彼女に憧れていたイザベルはクリスティーンの仕打ちに徐々に正気を失い、鬱憤を爆発させて車で暴走したり言われるがままキスしたり、そして最後には凶行に至ります。そのイザベルに恋愛感情を持つダニはその思いのあまり脅迫まがいに関係を迫ります。そんなことで相手を意のままにできると思う時点でこれまた正常な判断に思えません。

しかし3人ともおかしくなっているようで、実は全員冷静なんですよね。クリスティーンが敵を陥れる手管は念が入っているし、イザベルが目論んだのは完全犯罪だし、ダニは切り札になると思って映像を撮っていたわけです。みな一手先で目的を達成するために「情熱」を持って事にあたり、それが「激情」として行きすぎた結果身を滅ぼしていく。『パッション』というタイトルの由縁はそこにあるのではないでしょうか。

冷静でありながら穴があったのも共通しています。クリスティーンが、恐らくマイクと思ったんでしょうが実際は誰からかも分からないお誘いカードに無防備で目隠しとか、イザベルが肝心の証拠をクリーニングに出されてしまうとか。ダニなんてパーティーに元カレが来てたって刑事に言ってる場面で「あれ?いたっけ?」って思いますからね。

しかしラストはスゴい。イザベルとダニの会話で刑事がバラの花束を持ってきたって言ってるけど、あれはダニが事切れた後の話のはず。じゃあ刑事が花束持ってきた後に最後の殺しがあったのなら刑事がエレベーター内で告発映像を見て上を見上げるのは時間的におかしい。刑事はクリスティーンの姉にエレベーターで合図を送っている。しかし姉は夢だった。でも告発映像は送信され刑事はそれを見ている、イザベルはいつから寝ていたのだろう。なぜ刑事は部屋に戻って来ないのだろう。全て夢かと思いきや傍らには死体。一体どれが現実でどれが夢なのかよく分からないまま「THE END」。この観る者を混沌に叩きこむ怒涛のクライマックスは、メインである殺人事件の真相よりも驚きです。


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