2013
09.30

大いなる力、大いなる忘却。『クロニクル』感想。

chronicle
Chronicle / 2012年 アメリカ / 監督:ジョシュ・トランク

あらすじ
超能力者になりました。



謎の物体に触れることで超能力(テレキネシス)を持ってしまった高校生3人を描くSF。前々から評判の高さは聞いていましたが、ついに日本公開。超能力、POV(一人称視点)、青春というキーワード以外の予備知識なしで観ましたが、これは面白い!

「実際に超能力を手に入れたらどうする?」っていうのが出発点なんですよ。これがいい年した大人だったら「人類の平和を守る!」と一念発起してヒーローになるか、「何でもできるぜウッハウハ!」と興奮してヴィランになるかって感じでしょうが、これがまあ高校生ですからね。バレるのはマズいけど色々便利だし楽しいからいいや、みたいなところから始まるわけです。ところがそのうちの一人アンドリューが、いつもビデオ撮影しながら世界と壁を作るいじめられっ子で、母さん病気だし父さんDVだし自分はいまだDTだしで、かなり人生にマイナスを背負った少年なわけです。最後のは別にいいじゃんと思ったらこれがそうでもない。このアンドリューの主観視点で物語が進むわけですが、この視点が変化していく点がキモであり、そんな撮影方法を採用したのが素晴らしい。POVはアイデアと工夫次第でまだこんなスゴいのが出てくるか!と感嘆しました。

最初は小僧共がふざけてるだけで正直退屈でしたが、観終わって振り返ると実に構成が巧みで無駄がないのです。徐々に推移する心情、蓄積される鬱憤、そして目覚め行くダークサイドがとても自然。このあまりの完成度の高さには舌を巻くしかありません。

大いなる力には大いなる責任が伴うべきだけど、現実に起こったらこうなるかもしれないという説得力があります。なんとなくこうなるかなーとは思ってたけど、不安をまとった臨場感もあって予想を越えた凄まじさでした。先入観を持たずに観たほうがいいでしょう。

↓以下、ネタバレ含む。








監督自身がインスパイアされたと語っているように、まさに舞台を現代にし、科学という観点を廃した『AKIRA』という感があります。ラストの破壊シーンは『マン・オブ・スティール』も思い出しますね。しかしそれらの作品とは一線を画するのが、やはり視点の絶妙さでしょう。その効果は大きく2点あるかと思います。

まずは映像的なバラエティの点。女の子側の映像をわざわざ入れるところが実は伏線であり、そこから病院の監視カメラや警察の記録用カメラという定点的な視点、果ては携帯やタブレットなどによる縦横無尽な視点へとシフトしていき、カメラアングルとして終盤の迫力が無理なく出せるところまで繋げていきます。

そして登場人物の心情を映す点。最初はアンドリュー視点であり、彼の立ち位置、追い込まれ方が否応なしに映し出されます。あらゆるところをカメラで撮りながら歩くのだからそりゃ絡まれますよ。しかしそれが彼の世界との接し方なわけです。やがて能力によりカメラは宙に浮き、アンドリューから距離を置くようになります。そして無機質な監視映像になった時点で観客から離れてしまい、ついには完全に第三者の視点になる。これはそのままアンドリューと世界との距離であり、力を持ったダークサイドは全く別の世界に行ってしまうのです。マットとそのガールフレンドの映し合いが常にフラットで安定しているのとはえらい違いです。

そういった視点を上手く使うことで、アンドリューの世界に対する恨み、世界を喰らい尽くそうとする闇が伺えます。抜歯、飛散する蜘蛛、握り潰される車などに見られるように、アンドリューは自らを頂点捕食者に位置付けてしまう。暴走の引き金が母親の薬代を手に入れることであり、覚醒の引き金がその母親の死と父親の愛のなさであるというのは実に悲しいですが、しかし境遇がどうこうではないですね。ガキくさい保身とプライドのために友人を死に追いやったり遠ざけたのは彼自身であり、そこで自分を顧みないことが一番の問題だということを彼は認めません。今まで生きてきて一番楽しかったと語るスティーブも、以前は違ったが今は好きだと本音で話すマットも確かに本当の友人であったし、アンドリュー自身も友人だと思っていたから普通なら言いにくい「経験がない」という秘密まで告白したわけです。力を身に付けたから仲良くなったんだとしてもそれは単なるきっかけであるはずなのに、そこだけを膨らませドス黒い感情のみを残してしまう。大いなる力によって、それを活かすための都合のいい(そして不幸な)忘却が発露するわけです。

chronicleは歴史や物語、記録という意味。バカ騒ぎする映像には3人の楽しそうな物語が映っていたはずなのに、能力の記録しか見なかったアンドリュー。全てを失いながらも、最後にチベットでアンドリューに別れを告げるマットがせつないです。


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