2013
09.26

理想郷に真に求めるもの。『エリジウム』感想。

elysium
Elysium / 2013年 アメリカ / 監督:ニール・ブロムカンプ

あらすじ
死にかけたらなんかスゴいのを体に付けられたのでもう行くしかないよエリジウム。



地球には貧困層があふれ、少数の富裕層が宇宙コロニー「エリジウム」に住む2154年。事故により余命5日となったマックスはエリジウムに乗り込むため戦う、というSF作品。監督が『第9地区』のニール・ブロムカンプということもあり、スラム化した地上の風景に感じる既視感は、まんま『第9地区』ですね。

ただし、対照的に描かれるスペースコロニーの描写が実にイイのです。コロニーはやはり丸いものであり、回転することで重力を生みだすわけじゃないですか。そんな基本的な思想が形に表れてるんですね。そして婉曲した内側に広がる緑豊かな世界!これが最高。とにかく描き込みが物凄いのです。これは地上の風景にも言えますが、その細かく描きこまれた風景が素晴らしい。地上から見上げた時に青空にうっすら浮かぶエリジウムの画なんかもイイですね。

未来的ガジェットの数々も秀逸。まずは手術というより工事で取り付けられたマット・デイモンのエクソ・スーツ。この圧倒的パワー!……んー、あれ?なんかいまいち強くないな……基本的にデータ収集装置だからか?何と言っても骨組みだけですからね。それ以外の個所は刺されまくりの撃たれまくりです。防御力ないです。しかも!なぜ服の上から!風呂入れねえ!他にもビームシールドとかイイですね。弾丸防ぎきれてないけど。やたら動きのいいドロイドは『スターウォーズ』っぽいし、受付のジョークが通じないロボットは『トータル・リコール』を思い出します。あと空飛ぶルンバとかね。そんなとこ飛んだら掃除できないよ!ってね、ツッコみますね。

そんなSF描写を堪能しつつ、ずっと不安定な状況が続く緊迫感が魅入らせてくれます。しかしどうにも描ききれてない設定が多々ある気もするのです。例えば、危機意識があるんだかないんだかよく分からないジョディ・フォスター。例えば一握りの富裕層が住むエリジウムは大きさからして本当に一握りの人しか住めないし、政府っぽいのがあるんだけど地上をどうコントロールしてるかが分からない。また、設定以外にもアクションが意外と多くないというのも予想外でした。あのストーリー展開もあって、爽快感はほとんど感じなかったです。

でもスペースコロニーの描写が最高だし、血肉が飛び散るゴアなシーンもあるし、敵が日本刀持ったゲスニンジャだしで、惹かれるシーンも多くてイイですけどね。ついでにマット・デイモンの子供時代の子が結構似てるし。ちなみに『第9地区』で主演だったシャールト・コプリーはずっと気が付かなくて、なんかチャック・ノリスみたいな人だなと思って観てました。

予告で観てスゲーと思ったモノがそのまんまテーマだったのはちょっと意外だったかも。

↓以下、ネタバレ含む。








セキュリティの甘さはホントにザルですね。ジョディ・フォスターが「戦争なら私の出番」と言いながら自分が一番危機意識がないというね。あのサイコなゲスニンジャを単独で使う意味が分からないし、挙句あっけなく殺られてしまう。わざわざ地上から迎撃する(大気圏を超える手持ちの武器ってスゴいな)。肝心のエリジウムはその迎撃さえ振り切れば意外と簡単に侵入できてしまう。そしてわずか一人の手により簡単にリブートして設定変更できてしまう。理想郷としてはお手軽すぎます。ただしこれもテーマに沿って考えると、そういったセキュリティは越えようと思えば超えられる程度のものだというのは、結構現実的だと思うのです。

というのは、テーマが「貧富の差」ではなく「医療解放」だからですね。エリジウムは理想郷として描かれてはいるものの、地上の人々が求めるのは医療マシンだけなんですよ。誰もプール付きの豪邸に住もうなんて思って来ない。住みたいのならあんな強行突破したって捕まるのは目に見えているわけで、迎撃される危険を冒し命懸けでやって来る理由になりません。松葉杖の少女や車椅子の老婆しかり、主人公マックスだって「いつか行ってやる」とか言いながら、死に瀕して切羽詰まったからこそ実際にエリジウムに渡ろうとする。何と言っても寝てボタンを押すだけでどんな病気や怪我もあっという間に治しますからね。癌を完治させ、ほとんど吹き飛んだ顔の欠損さえも元に戻す、これは人類にとって夢のマシンです。逆に言えばエリジウムの価値はそこしか描かれない。地上の人も貧しいながらもどうやら皆それなりに生きているから、医療以外の不満点はあまり見られない。だからエリジウムが全人類に解放されたラストシーンで真っ先に行われるのが、医療の解放なわけです。

現実でも技術や知識、金、人材、医薬品など目に見えない医療の実態と一般社会との間に壁を感じたりします(だからこそ医療ドラマとか出来るんだろうけど)。また、臓器移植や体外受精など国の政策のために受けられない治療というものもあり、そのために巨額の費用をかけて海外の医療を求めたりしますね。医療は戦いの火種にもなりかねない、と言うのはそれほど飛躍した考えでもないのでしょう。誰だって健康でいたい。これは下手すると「自分さえ健康ならいい」という利己的な展開になりかねません。それを避けるためにマックスは最後に犠牲になる必要があった、とも見て取れます。「医療は解放されるべきであるが、それは愛する者の幸せのためである」というのがテーマの着地点となったのではないでしょうか。

そう考えると、マックスの着るエクソ・スーツに対して、なんだか物語に操られる人形っぽさを感じてしまいます。外観が似てるわけではないけれど、どこかマリオネットみたいと言うか。いまいちヒロイックに感じられないのもそんな理由かもしれません。ニンジャもどきのクルーガーもスーツを付けますが、そういう意味では彼もまたエリジウムという何かの象徴に操られた、と言えなくもないですね。


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