2013
09.23

恋の障害は重力(しかもダブル)。『アップサイドダウン 重力の恋人』感想。

UpsideDown
Upside Down / 2012年 カナダ、フランス / 監督:フアン・ソラナス

あらすじ
二重引力のせいでデートするのも大変です。



貧困層の住む下の世界と富裕層の住む上の世界に分かれた、真逆の引力が働く双子惑星で、下の少年アダムが上の少女エデンに恋をする物語。この二重引力という、実にSF的な設定が細部に至るまで徹底して描かれているのがスゴい。

この厳格なルールによる縛りなら、サスペンスやもっとハードなSFにも出来ただろうに、焦点をラブストーリー一本に絞ったというのが潔いです。結果的にSF設定でありながら童話の世界のようなファンタジーっぽさ溢れる作品になってます。重力による縛りは因習や周囲の人間関係などの暗喩かもしれませんが、そういう深読みしない方が楽しいですね。

とにかく世界観の描写が気合い入ってます。見上げれば上の世界から逆さに乱立する高層ビル群。対照的にくすんで薄汚れた下の世界。二つの世界が近づく地点でそれぞれの重力に引かれて渦を巻く気流。そんな画期的すぎる世界の映像が超絶美しい。海から海へのエスケープなんてダイナミックで素晴らしかった。重力ルールを元にしたネタもいいですね。重力クリームとか、滞留する煙とか、逆向きドリンクとか。これこそ3Dにすればいいのにというシーンが山ほどあるんですけど。高揚する音楽もイイ。

アダム役のジム・スタージェスはちょっとニヤけ顔すぎる気もするけど、一途さは伝わるかな。エデン役のキルスティン・ダンストは美しかったです。特に少女時代が可愛い。もちろん重力無視の逆さチューなんて『スパイダーマン』で慣れてますからね。ティモシー・スポールがいつネズミに変身するかとハラハラしたけど大丈夫でした。

重力のルールについては若干穴はありますが、世界の描写と美しさがイイのでそこはそういう設定だと割り切ればそれほど気にならなかったです。むしろ本筋であるラブストーリーとしてのパンチが少し弱かったのが残念。

↓以下、ネタバレ含む。








科学的にどうこう言うのは野暮ですが、あれだけ細かく設定を付けられると余計気になる点もあるんですけどね。逆物質を使ってムリヤリ上の世界に行くのはいいんだけど、髪の毛なんかはもっと逆立っちゃうんじゃないの?とか、燃え出す以前に頭に血が上っちゃうのでは?とか。その逆物質も接触し続けると燃えるという設定ですが、若干アバウトではあるんですよね。冷やせば大丈夫ということは逆引力の作用により発火するとかそういう設定なんでしょうが、そうすると物質は燃えるけど生命体は燃えないのはなぜ?とかね。まあそこは根性でなんとかしてるんですねきっと。このように「そういう設定だから」と割り切れない人は損をするでしょう。トランスワールド社の建物は双子星を繋いで建っているようですがそれぞれの星の自転と公転で影響は出ないの?とか問うてはいかんのですよ。

ただ設定はともかく物語のほうはどうしても気にせずにはいられません。一番の問題はラストですね。ちょっとあっさりしすぎ。ああいう締めかたにするのなら、二人のラブシーンはもっとちゃんと描いてもよかったのでは。唐突すぎて「え、いつの間に?」ってなったよ。「あの抱き合ってクルクル回ってたとき?え?それスゴいな!」みたいにね、なりますね。記憶喪失に関しても「夢で見る」という伏線はあるものの、なんとなく思い出したからOK!みたいな。あっさりです。亡くなった(と思われる)ベッキーおばさんについても特に言及はなく、重要なアイテムであるはずのピンクビーについても一瞬飛ぶ姿が映るくらい。最後に世界を変えたみたいなことを言ってますが、体質が変わってどうなったのか、生まれてくる子がどうなるのか、そもそも富裕層と貧困層の垣根をどう取っ払ったのかというあたりを、二つの世界がなんとなく仲良くなった、みたいな画で終わらせちゃうからもやもやしてしまうのです。なんか肝心な部分があっさりしてるのがね、ダメとは言わないけど物足りなさになってしまっているのです。

ただし、あっさりではあるもののあのラストで描くものはなかなか興味深いです。それは「重力という世界の法則を変えるには、世界そのものを変えるしかない」ということですね。ここで言う「重力」は変えようのない物理法則というより、それに捕われている意識のことです。アダムとエデンがそうするまで、二つの世界が重なることはなかったんだろうし実行する人もいなかったんだろうから、そこを打破したことが「世界を変えた」ことの第一歩ということなのでしょう。考えてみると主人公の名前がアダムなのに対し、ヒロインはイブではなくエデンなんですよ。それは彼女が楽園自体の象徴であるということであり、その後の子供たちが新たな歴史を作っていくということなんでしょうかね。だとすると締めの言葉が「それはまた別のお話」なのは確かに別(の人)の話になるので。

世界の変えた「意識」の他にもうひとつ重要なのは、両方の星の液体を混ぜたものを注射するともうひとつの世界に行けるという発明ですね。世界の法則は変えられないまでも、それをコントロールしようとする。人の叡知はそういった局面を打破するためにあるのだ、というのを物語っています。それももうひとつの世界の人に会いに行くためというのが発端であり、その意識を持ちこんだのがアダムです。確かに「世界を変えた」と言えるでしょう。


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