2013
09.15

思いがけない副作用。『サイド・エフェクト』感想。

Side_Effects
Side Effects / 2013年 アメリカ / 監督:スティーブン・ソダーバーグ

あらすじ
薬を飲むときは用法・容量を守りましょう。



事故を起こした女性エミリーを診ることになった精神化医バンクス。しかし彼が処方した抗鬱剤がとんでもない結果に、というサスペンス。ソダーバーグ監督はこれを最後に劇場映画からは引退するそうですが、「なんてもったいない!」と思わずにはいられないほど面白かったです。

冒頭で示される流血現場、インサイダー取引で服役していた夫を待つ妻、と不穏な空気をわずかに纏わせつつ、突然起こる事故。そこにたまたま関わることになった精神科医は鬱病に効く新薬を渡すものの、そこで衝撃の事件が起こり、物語は思いもしない方向へ。精神病薬にまつわる闇をえぐる社会派ドラマかと思ってたら、あまりの意外性に驚きました。語り方はソダーバーグらしく淡々と進むため、いつどのように展開するか分からない。「サイド・エフェクト」とは副作用という意味ですが、この物語ではそれは薬のことだけを指すわけではないようです。

精神科医役のジュード・ロウのどんどん変貌していく様が素晴らしい。エミリー役のルーニー・マーラに至っては、見た目が可憐なのに眼が死んでる演技がスゴいです。そしてキャサリン・ゼタ=ジョーンズは相変わらずいい女!あとチャニング・テイタムが空気!

これ以上はネタバレになるので以下で述べますが、なるべく事前情報は避けて観てほしいですね。別に難しい話じゃないし。ちなみに、エロいシーンがヤバくなる直前に微妙にピントをずらしてボカシいらずにしたところは「おお」と思いましたよ(つまりルーニー・マーラはまた脱いでます)。

↓以下、ネタバレ含む。








この作品に関して「スゴいなー!」と思った点が3つあります。

まず転落のスゴさ。バンクス医師は患者の経過を見て薬を処方しただけのように見えるのに、事件が起きて全責任が自分にかかってくる。仲間の医師の信頼、新薬提供の副収入、自らのキャリア、そして何より家族まで失いそうになります。このいつもの日常からあれよあれよという間に転がり落ちる展開がまずスゴい。ここから、てっきり自分の無実を証明するため裁判を起こして新薬の会社を訴える、みたいな法廷ものにでもなるのかと思ったら、そんな社会派な話にはならないんですよね。そこがとても気に入っています。

次に仕掛けのスゴさ。シーバート博士が写真を送り付けたところでようやく「あれ?」となり、仕組まれた事件だったことがわかるものの、味方は誰もおらず証拠もない。調査が手詰まりになり、薬と偽って水を使った仕掛けで逆転を狙うもそれも通じない。バンクス医師は追い詰められ、徐々に狂っていっているようにさえ見えるため、「ああジュード・ロウ可哀そうに……だからストレスであんなに頭髪が……」と大変失礼なことまで思ってしまう(思わないか?)。ところが彼は狂うどころか、状況を打破するためイチかバチかのハッタリ勝負に出るわけです。これは計算高さと大胆さがないとできないこと。つまりこの仕掛けに至るまでもが演出であるわけです。バンクスがシーバートと握手をしながらエミリーを見上げるシーンなんてニヤリとしますね。

最後に解決方法のスゴさ。黒幕のシーバート博士を陥れるためにエミリーを味方に付けるという発想がイイです。二人の繋がりが肉体関係にあったというのも納得できる理由なうえにちょっと刺激的で実によろしいですね!(興奮)しかしそれ以上にスゴいのがエミリーへのケリの付け方。シーバートは逮捕させたものの、裁判で心神喪失で無罪になったためエミリーはもう有罪にはできないわけですよ。刑事事件の裁判で判決が確定するとその事件の審理はもうできない、いわゆる一事不再理の原則があるためです。だから一生閉じ込めておくわけです。仕掛けた者たちにしてみれば、人柱になるはずの者がここまでやり返してくるとは予想外の「副作用」だったわけですね。

事件が起こりミスリードをしながら最後に探偵役が解決する、という点でこれは立派なミステリです。よく練られたスコット・Z・バーンズの脚本も、一歩引きつつも時に人物に肉薄するソダーバーグの演出も冴えてますね。もちろんそれに応えた役者陣の演技も見事。

ちなみにチャニング・テイタムは空気だ、と書きましたが、これも狙ってやっているに違いないんですよ。だって『エージェント・マロリー』でも『マジック・マイク』でもテイタムの印象は強烈だったわけだし。結局この夫はエミリーにとって自分の人生を狂わせた邪魔者でしかなかったわけで、それを印象付けるために逆に印象に残さないようにしたのでしょう。エミリーが過去話をするシーンがありますが、それを聞くだけでもこの二人合わないな、と感じるし。だから刺殺シーンのルーニー・マーラの無表情ぶりも、薬のせいに見せるためではなく殺すことをなんとも思ってなかったからだと伺えます。そもそも二人しかいないシーンで夢遊病のように見せる必要はないわけで、つまりこれは観る者へのミスリードなんですね。実に上手い。

ソダーバーグさん、やっぱり引退撤回してくれないですかね?日本の某大監督の例もあるし、一回くらい撤回してもいいんじゃないですかねー?


サイド・エフェクト スチールブック仕様 [4,000個 初回数量限定生産] [Blu-ray]サイド・エフェクト スチールブック仕様 [4,000個 初回数量限定生産] [Blu-ray]
(2014/03/08)
ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ 他

商品詳細を見る


サイド・エフェクト [DVD]サイド・エフェクト [DVD]
(2014/03/08)
ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ 他

商品詳細を見る

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/701-d38a87e5
トラックバック
back-to-top