2013
08.05

湿気に満ちたドライな物語。『ペーパーボーイ 真夏の引力』感想。

the_paperboy
The Paperboy / 2012年 アメリカ / 監督:リー・ダニエルズ

あらすじ
冤罪なのか?新聞記者が追う真実とは。



てっきり保安官殺害事件の真相を追うサスペンスだと思ったら、これが予想外の展開。新聞記者のウォードとその弟ジャックは、殺人犯のヒラリーの冤罪を晴らすため婚約者のシャーロットと行動を共にするんですが、このシャーロットという女性からして会ったこともないヒラリーと結婚すると言ってる頭おかしい人なわけですよ。かと思うと兄貴の仲間のヤードリーってのが野心丸出しの曲者だったり、その兄貴自体がもっとヤバかったり。冤罪と思われるヒラリーもホントにそうなの?というほど怪しいヤツだし。そんななか大学中退して新聞記者としてはまだペーペーのジャックは、若さゆえの鬱憤と衝動に突き動かされていきます。

なんかもう湿気が凄いんですよ。ウォード役マシュー・マコノヒーの湿った性癖、シャーロット役ニコール・キッドマンの「壁越しの天使」からの堕天、ジャック役ザック・エフロンのパンツ一丁でたぎるDTぶり、全て湿り気を帯びてる。口半開きのヒラリー役ジョン・キューザックはクズ具合もパンツの中もジメッとしてるし。そして重要な場所となるのが沼。これでトドメですよ。物語自体もまるで沼の中に引きずり込まれそうになるような恐ろしさを孕んでいます。ニコール・キッドマンに至ってはとにかくエロい!え、そこまでやるの?というくらいエロい。

事件の真実より徐々に本性をあらわにしていく周りの人たちの異常性のほうに引き付けられ、最終的に新たな狂気を伴って本筋に戻ってくるという流れがたまりません。いろんな意味でちょっとエグいけどじわじわくる。その浸透の仕方もまた湿気に満ちているという感じです。湿気映画です。でも視点はあくまでドライ。引きつけられる魅力があって「真夏の引力」というサブタイもなかなか合ってると思います。

↓以下、ネタバレ含む。








雨の中踊ったり、クラゲに刺されたからといって尿をかけたり、水だけじゃなくワニやら人やらの血も流されて、とにかく水分補給に関してはとどまることを知らない湿気ぶり。

そんななかドライなのは、前半たっぷりと湿り気を帯びていたシャーロット。ヤードリーに「この40女が」と言われてもお人形のようなメイクで若々しく見せていた彼女ですが、一皮むけば「男と女にはいろいろある」と言うような投げやりなところがあります。中盤、熱心にアプローチするジャックにメイクを落とした顔で会った時も、一時の思いだと一蹴する。壁の向こうの囚人たちに天使と呼ばれて喜んでいたのも壁を隔てていたからこそで、釈放されたヒラリーが訪ねてきたときに見せる表情は明らかに戸惑い、そして諦めを見せる。人生に対する諦観がそこにはあります。

またウォードも、ゲイでドMで仕事も片目も失うという、デキる男からの転落ぶりが凄まじい。すっかり自堕落になり、干からびていく。相棒は出世し、自分は真実に近づきながら何もできないという、焦燥の中にも諦めが滲んでいます。

そして乾ききってしまったシャーロットもウォードもヒラリーの沼に取り込まれてしまいます。残ったのはまだ若く人生への渇望があるジャックだけ。元々ウェットな彼だけが、過剰な水分に溺れることなく沼から脱出できたのです。そう考えるとジャックが元水泳部というのも、最後の脱出劇での活躍と存在のウェットさという二重の意味でいい伏線になってます。

さらにこのウェットな物語が、第三者的視点として、メイドによってドライに語られる、というのも構造として面白いですね。


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