2013
07.16

ぼくとハカセのなつやすみ。『真夏の方程式』感想。

manatsu_no_houteisiki
まなつのほうていしき / 2013年 日本 / 監督:西谷弘

あらすじ
あの夏、ぼくは物理学者に会った。



テレビドラマ『ガリレオ』シリーズの劇場版第2弾。主要キャストはドラマ版と同様。原作である東野圭吾の同名小説を読んだ上で鑑賞です。劇場版1作目である『容疑者Xの献身』は直木賞まで取った原作を見事に映像化していましたが、ドラマ2期が拍子抜けだったので若干身構えて観てみました。結論から言うと、原作の映像化としては文句なし。どころか一本の映画としてとても良い出来です。

海底資源採掘に揺れる玻璃ヶ浦で、旅館緑岩荘の泊り客が死体で発見され、採掘会社の技術指南として来ていた福山雅治演じる湯川准教授が事件に関わっていきます。その中で湯川が出会う旅館経営家族の親戚の少年、恭平。この恭平少年と湯川のやり取りがとてもイイ。湯川を「博士」と慕う恭平に最初は避け気味の湯川が、徐々に関わり合うようになる描写が微笑ましいです。

キャストが皆良かったです。特に前田吟には泣かされました。そして白竜。このおっさん二人は凄かった。やられました。杏の水着姿もセクシーさは全くないけど健康的。あと音楽の使い所もいい。個人的には美しい海中の映像が好きなので、それが観れたのも嬉しいです。そういえば夏の海だというのに他に水着のお姉さんが全然出てきませんね。ちょっと!そこ大事な点じゃないの!?なんで水着ギャルを出さないのかさっぱり分からないって湯川先生も言ってますからね!(言ってない)

このシリーズの長編らしく、ミステリとしての仕掛けは壮大。湯川は「ある人の人生を捻じ曲げないため」と言って動きますが、これは『容疑者Xの献身』で大いに捻じ曲げてしまった後悔を引きずっているようにも見えます。何度も登場する「全てを知った上で選択するべき」という湯川の台詞は、そのまま事件にも当てはまり、そして共に考えていくことを選択した湯川。全てをハッキリさせず少しだけ残した余韻と、ロケットで海中を見せたシーンの印象深さとが、ひと夏の思い出として切なくも美しい。ラストはこの先訪れるであろう重さに対し、それを救う可能性の爽やかさで涙します。

ちなみに、言いたくないけど言わざるをえないドラマ版との比較について。ドラマ版がダメだった理由は、設定も演出もテレビ的な味付けが極端すぎたということでしょう。内海薫と差別化しようとしたと思われる岸谷が単なる反感を買うキャラになってしまったのも、最初は不憫ささえ漂よっていたコメディリリーフの栗林さんが完全に見下されたイジめられキャラになってしまったのも、全部これ。別に吉高ちゃんも渡辺いっけいも悪くないですよ。行きすぎたマンガ的表現は、本来原作が持つ雰囲気や、ミステリだからこそ許される科学的トリックまで胡散臭くしてしまいました。これは今作にも影響を与えていて、原作にはない「湯川は子供が近くにいるとじんましんが出る」というアホみたいな設定を付けてしまったために、なぜ今回は平気なのか、というのをわざわざ説明する羽目になっています。しかも不自然な上に理由になってない。映画版にとっては気の毒な話です。相棒を女性に変えるのは別に構わないと思うし(現に内海薫は原作に逆輸入されるという珍しい結果になった)、テレビ的な味付け全てを否定する気はないですが、調子に乗りすぎて品位を落としたように感じます。

↓以下、ネタバレ含む。








出生の秘密。過去の事件に関わっている秘密。過去の事件の罪をかぶった秘密。そんな秘密が暴かれることを阻止したのは、秘密の当事者ではない者だったという事実。それは新たな秘密として抱え込まれる。しかしこの秘密を暴くことはそのトリックを明らかにする必要があり、結果それはある人物が自分のやったことを知ってしまうことになる。これがこの事件の方程式です。

殺人は罪ですが、それでもここには悪人が出てこない。全てが愛情ゆえの行動であり、だからこそその決意は固く、だからこそ悲しい。この誰も幸せにならない方程式を解いた湯川は、「全てを知った上での選択」をします。湯川がこういう結論を下すのは初めてのことでしょう。

海の青、空の青、ブルーな真実。そんな青の世界を切り裂く傘の赤が、拭いても取れない血の跡のよう。夏休みらしい花火の記憶さえ事件に覆い隠されてしまう。それらは象徴的な映像ですが、それでもロケットを飛ばし海の美しさに触れたシーンはそれを凌駕します。「楽しかったな」の一言は、暗黒の記憶を忘れえぬひと夏の思い出へと変え、その思い出はいつか向き合うべき事実に対し「一人ではない」ことを思い出させてくれる拠り所にもなるのです。


真夏の方程式 Blu-rayスタンダード・エディション真夏の方程式 Blu-rayスタンダード・エディション
(2013/12/25)
福山雅治、吉高由里子 他

商品詳細を見る


真夏の方程式 DVDスタンダード・エディション真夏の方程式 DVDスタンダード・エディション
(2013/12/25)
福山雅治、吉高由里子 他

商品詳細を見る


ガリレオ Blu-ray BOXガリレオ Blu-ray BOX
(2013/04/24)
福山雅治、柴咲コウ 他

商品詳細を見る

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/682-96f93463
トラックバック
back-to-top