2013
06.10

超ホラーなラブストーリー。『リアル 完全なる首長竜の日』感想。

real_kubinagaryu
りある かんぜんなるくびながりゅうのひ / 2013年 日本 / 監督:黒沢清

あらすじ
恋人を救うべく入り込んだ仮想世界、そこに隠された謎とは。



意識の戻らない女性、淳美と話すために、恋人の浩市はセンシングという装置により仮想現実上で彼女の意識とコンタクトを取る、というお話です。『マトリックス』や『トータル・リコール』なんかのSFチックな仮想現実よりは、現実とわずかに位相の異なる意識下の世界という感じなので『インセプション』や『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』なんかのほうが近いでしょうかね。でも近いというだけで、テイストは全く異なります。

第9回「このミス大賞」受賞作ということでミステリのつもりで観たんですが……なんだこれは!これもう完全に黒沢清ホラーじゃないか!(喜んでます)やけにロングで長く撮ったり、アップの時は画面の半分くらいが空いてたり、とにかくもう空間が怖いんですよ。今にも何か出てきそう。でも出ない。かと思うと思いがけないところで出てきて「え?うわ、うわー!」ってなったり。何度背筋がゾワゾワしたか分かりません。別に霊が出てくるわけではないし、ホラーだなんて一言も謳ってないんだけど(それどころか黒沢清作品だというのさえ大っぴらにしていない)、現実と少しだけズレた生命のない無機質な世界というのが映像にするとすごく怖い。すっかり油断してたらとんでもない恐怖でした。ホラーとして最近観た『クロユリ団地』が完全に霞んだほどです。超こえーよ!あと中谷美紀の佇まいが怖い。

ただし本筋はホラー主体の話ではなく、なぜ彼女は意識が戻らないのかという謎に迫るミステリです。これが二転三転して予想がつかない。しかもそうやって展開するたびに二人の思いが交錯していくことで、真っ当なラブストーリーにもなっています。ラストはとんでもない展開に唖然としますが、僕は逆に面白かったですよ。

佐藤健、綾瀬はるかというスターを起用しながらも作家性を忘れてない。それでいて綾瀬はるかをちゃんと走らせる(=揺れる)という眼福。眼福です。大事なことなので2回言いました。細かいところで分からないこともあるんだけど、果たして現実か仮想現実かを思い返してみるのも楽しい。すんげー面白かったです。

↓以下、ネタバレ含む。








オダジョーが『舟を編む』の編集者役とすごいカブってるんだけど。まあいいんだけど。

至る所に潜む不安定さ、恐怖表現が素晴らしいです。ドアノブがなぜか胸の高さにあるドア。フロントガラスがやたら広い車。明滅する蛍光灯。不穏な映像が随所に紛れ込み心をざわつかせます。ドライブ中の明らかな合成の背景には現実感を奪われるし、それが微妙に歪んで見えるのも不安感を煽ってきます。そして不意に現れる残虐なオブジェ。目線を落とすと足元にいるソレ。もう「ひゃー!」ってなります。貸倉庫で扉が勝手に開くところなんかもイヤンって感じです(あれは結局何だったんだろう。心の隙間的なもの?)。最も不気味なのはフィロソフィカル・ゾンビですね。仮面をかぶっているかのような無表情が不気味すぎる。松重豊あたりはちょっと笑っちゃいますが。ロープレのNPCって実際にはあんな感じなのかもしれないと思うと、とても『ソードアート・オンライン』のような世界にはならなそう。

『インセプション』が多層構造の最奥に秘密がある構成だったのに対し、こちらは中盤で世界を反転させて欠落を埋めていく構成になっています。前半で「首長竜の絵を持ってきて」というのは、浩市が自ら忘れようとしていた記憶へアクセスするためのヒントを自分から出していたことになります。このように前半の謎を後半で埋めていくのが面白い。そうして封印した過去の記憶を呼び起こすことが最終的に目的になるわけです。

しかしいまいち分からないのが首長竜。友人を見殺しにした後悔を表すメタファーだというのは分かりますが、なんで首長竜?一応ペンダントの中身(タツノオトシゴ?)が首長竜に見えるってのが理由っぽいですが、それだけであんな大暴れするほどのシンボルになるんでしょうか。記憶を封じるのに首長竜の絵を描いたってのもちょっと分かんないです。他にも不明確な要素は色々あって、それらはこじつければいろんな意味付けが出来そう。そんな深読み出来そうなところがまた面白い。

最終的に描かれるのは関係性の確認です。浩市は既に再婚した母親とは一定の距離を保つようになっており、そのせいか淳美とずっと一緒にいるという関係が壊れることを恐れています。意識世界で淳美にその恐れを言わせることで表面化させていたわけです。それが終盤では自分の意識世界で本当の淳美にずっと一緒にいようと言われたことで、関係性を確信できた。自分の望みが相手の望みでもあった、だから最後に目を覚ます。やはりこれはラブストーリーなのです。


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