2013
06.06

美しいのにこのヤバさ。『イノセント・ガーデン』感想。

stoker
Stoker / 2013年 アメリカ・イギリス / 監督:パク・チャヌク

あらすじ
18歳になるインディアの周りで起こる不可解な死の連鎖の謎とは。



『オールド・ボーイ』の韓国の鬼才、パク・チャヌク監督のハリウッドデビュー作。父を亡くした娘インディアと母エヴィの家に父の弟を名乗る男がやってきて、という耽美的ミステリ。舞台は現代ながらどこか重厚な古めかしさを感じさせます。独特の感性で周りからは浮いている少女インディア、怪しくも魅力的な叔父のチャーリー、奔放さの陰に淫靡さを垣間見せる母エヴィ。この三人に常に纏わりつく不穏な空気が艶めかしい。そんな彼女らをメインに、周りの人の姿が消えていくというサスペンスがクロスします。

いやあこれは演出が素晴らしい。オープニングのキャプションからしてイイ感じです。全体的にどこか古めかしく幻想的なのに妙に生々しい。ヨーロッパ系のような美麗さを持ちつつも不穏な空気。物語はビックリするような展開ではなく、緊張感がジワジワと継続し次第に高まっていくという感じ。潜む狂気を自覚していく過程を、象徴的なカットや複数場面の映像と音声の被せ合い等で魅せる映像、美しさの中に不安定さを孕む音楽で魅せます。サスペンスとしての構成も抜群。

なんと言ってもインディア役のミア・ワシコウスカですよ。あの目力、傾げた首、組んだ腕、そしてピアノ連弾やシャワーシーンでのエロさ。ヤバいです。チャーリー役のマシュー・グードの纏う空気もヤバいし、エヴィ役のニコール・キッドマンの投げやりな危うさもヤバい。こうして見るとパク・チャヌク的な派手なバイオレンスはあまりないにも関わらず、十分ヤバいです。マシュー・グードの、常に見ている感じ、つまりウォッチしている感じってのがもうね、さすが『ウォッチメン』のオジマンディアス。

しかし脚本がドラマ『プリズン・ブレイク』主演のウェントワース・ミラーだというのはマジで驚いた。

↓以下、ネタバレあり。








エグいシーンはあまりないのでそれを期待すると物足りなさを感じるかもしれません。ただ僕はあの美しさは物語には合ってるなあと思いました。そんな中でも「うおおパク・チャヌクすげー!」って思ったシーンの一つが、首が後ろに「コキッ」て折れるところですね。あの絶妙な「コキッ」がリアルすぎます。「クキッ」でもいいです。

周りからは理解されず、あまつさえ疎外されるインディア。彼女の他人とは異なる感性は授業で写生をするシーンにも表れていますが、その特異性に自らが気付いていく経緯が描かれていきます。きっかけはもちろんチャーリーの存在。最初は叔父の存在が促した性の目覚めかと思わせますがそうではなく、むしろ残酷性にこそ悦びを感じてしまうことに気付く。最初は足首を這う程度だったクモが、太ももから股間に消えていくシーンが象徴的。

弟を殺して精神病院に入っていたチャーリーもまた、人を殺さずにはいられないサガを持っています(吉良吉影みたいだな)。彼はインディアが子供の頃から彼女を溺愛しています。黄色いリボンの箱で毎年誕生日プレゼントに靴を送っていたチャーリーは、自分が退院する年は靴ではなく鍵を贈ります。その鍵で亡き父の書斎にある机の引き出しを開けるとそこにはチャーリーの手紙があり、彼の本当の姿が見えるという仕組み。靴を贈るという一見心暖まる話が偏執狂的なエピソードに変わる瞬間ですが、チャーリーとしてはこの鍵により本当の姿を見せ、インディアの本性の扉を開く鍵でもあったでしょう。そしてそれまでの靴からハイヒールに履き替えさせるシーン、これは監督曰く「戴冠式」だそうで、彼女の覚醒の記念に敬意を表したイベントなわけです。インディアもこのときは官能的な反応で返し、あとは二人で遠くへ旅立つだけ、と思いきや……

なぜチャーリーがそこまでインディアにこだわり、まるで彼女の資質を看破したかのようになってるのかは直接描かれてないので分かりませんが(そこはちょっと不可解)、チャーリーは姪を自分と同じサガを持つ同類として育てようとしたのでしょう。そしてそれは成功したかに思えます。ところがどっこい、彼女の資質はチャーリーの予想を超えていたわけですね。インディアにとっては母は別に邪魔者ではない。自分の特異性を認識してしまった今、むしろ邪魔なのは自分をコントロールしようとする叔父のほうなのです。結果、インディアはチャーリーを何の躊躇もなく屠るわけです。

そして父から狩りの手ほどきを受けていたインディアは、サイコパスであると同時にハンターでもある。邪魔だから消すだけではなく、能動的に獲物を仕留めることも厭わない。冒頭での「人は自分を変えられない」というセリフから、最後の獲物を狩るインディアの姿こそが、純真無垢な、イノセントな姿であるということなのでしょう。


イノセント・ガーデン [Blu-ray]イノセント・ガーデン [Blu-ray]
(2013/12/04)
ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン 他

商品詳細を見る


イノセント・ガーデン [DVD]イノセント・ガーデン [DVD]
(2013/12/04)
ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン 他

商品詳細を見る

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/664-3cc7a0ee
トラックバック
back-to-top