2013
05.01

孤高であれ。『リンカーン』感想。

Lincoln
Lincoln / 2012年 アメリカ / 監督:スティーヴン・スピルバーグ

あらすじ
アメリカ大統領リンカーン、最後の4ヶ月。



第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンが、奴隷解放を保証する憲法修正第十三条を下院議会で通すまでを描いた伝記もの。

リンカーンといえば最も有名な大統領の一人ですが、そのリンカーンを描いたこの作品にはあまりにも有名な「人民の人民による人民のための政治」で知られるゲティスバーグの演説シーンがありません。確実に盛り上がるであろう演説シーンではなく、代わりに冒頭でその演説内容を南北戦争駐屯地の兵士たちが暗唱するというシーンにしています。このことからも、この作品がリンカーンという人物をヒロイックではなく、一兵士と分け隔てなく話す一人の人物として描かれていることが分かります。

登場人物も会話も多く、様々な意見が入り乱れるのでちょっと複雑に感じるかもしれませんが、観ているうちになんとなくでも分かってくるので大丈夫だと思います。何よりも、リンカーンはブレません。信念に基づき目的を達成しようとする熱意があるので、そこを見失うことはないでしょう。聖人君子ではなく、水面下の裏工作も真っ向からの説得も権力を誇示した恫喝さえも使い分け、なんとしてでも奴隷解放を実現しようとする熱意です。リーダーに必要なのは、馴れ合いでも保身でもなく信念である、ということを、静かな力強さをもって説いているのです。

リンカーン役でアカデミー主演男優賞を取ったダニエル・デイ=ルイスの、物静かそうでいながら熱さを持ち、折に触れ逸話を語る(これがちょっとウザいですが)飄々とした態度や時に疲れ切った顔等も演じ分ける演技は本当に素晴らしい。トミー・リー・ジョーンズの頑固ジジイっぷりもいいですね。個人的にはジェームズ・スペイダーがいい味出しててよかったです。

政治劇で内容も軽くはないですが、思ったほど分かりにくくもないし、心理戦の駆け引きもあって見ごたえは十分。上映前にはスピルバーグ自ら背景の簡単な説明までしてくれましたよ(これは驚いた)。

↓以下、ネタバレじゃないけどちょっと固い内容。





物語は南北戦争も終結が見えた頃の、奴隷制度廃止を巡る時期に絞ったもの。修正十三条を通すには下院で3分の2の以上の賛成票が必要ですが、リンカーンの属する共和党内でも急進派と保守派がいて一枚岩ではないうえに、奴隷解放反対の立場をとる民主党の票も獲得しなければならない、という非常に厳しい状況。単に奴隷解放と言っても、解放された奴隷数百万人をどうするかという保守派の懸念、人として平等であるとする急進派の意見、人としての平等性を認めない民主党や、奴隷は資産であるとする南軍が入り乱れます。

しかも戦争が終わると奴隷解放の名目が効かなくなってしまう。その前に何としても奴隷解放を実現しなければならない、という二重三重の難題をリンカーンは抱えているわけですね。結果は歴史が証明していますが、そこに至る紆余曲折等は日本人には馴染みも薄いので、話がどう転がるのかが見所です。

この作品を観て改めて思うのは、リーダーの重要性です。先を見通して指示を出し、持てる権利を行使しながらも責任を全うする、それがリーダーというもの。これは政治の話に限らず、一般の企業だって同じこと。上には押し付けられ、下には煙たがられる、なんてよくある話ですが、それだけにリーダーというのは孤独に陥りやすいものです。しかしリンカーンを観て思うのは、リーダーは「孤独」ではなく「孤高」であるべき、ということです。目標を達成するには時に反感を買うかもしれない、しかし信念に基づいて行動することで評価は後から付いてくるのです。

これ以上のめんどくさい話はリーダー向けの自己啓発本に任せますが、ときには「信念を持って行動しているか?」と自分に問うのは効果的かもしれないな、とこの映画を観て思った次第です。んー。まあね。僕の場合は近頃信念が揺らぎっぱなしなので反省しきりですけどね。


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