2013
04.21

痛快な夫婦愛。 『ヒッチコック』感想。

hitchcock
Hitchcock / 2012年 アメリカ / 監督:サーシャ・ガヴァシ

あらすじ
名作『サイコ』は難産だった。



アルフレッド・ヒッチコック。この世界で最も有名な映画監督の一人が、これまた世界で最も有名なスリラーの一つ『サイコ』を作る経緯を描いたドラマです。

メインの話はヒッチコックと妻のアルマとの夫婦愛です。と言っても単純に夫婦の愛がどうこうではなく、むしろ二人の間には徐々に確執が生まれていき、ちょっとしたすれ違いが嫉妬を生む。これどうなるの?というのが見所の一点。

そして、映画作りの苦悩っていう視点がもう一点の見所。有名監督ゆえのプレッシャー、飽きられてるのではという危機感、作りたい映画を作れない鬱憤。ヒッチコックでさえ何でも自由にやれていたわけではなかったという、レベルは違えど常人と同レベルの悩みを抱えているという人間臭さ。そこに妻への疑惑まで加わってくるんだからもう大変です。

『サイコ』を映画化する過程が、上記の2点目のテーマである映画作りの苦悩を掘り下げ、1点目のテーマである夫婦の絆の話と直結してるのです。そして製作のためにあの手この手で映画を作り上げ、上映にこぎつけた結果のカタルシスが素晴らしい!題材に反して、ラストは痛快でさえあります。

白布越しにシルエットを見せたり、なにかとその体型を全面に押し出してシンクロ度をあげてるので、顔はそんなに似てないアンソニー・ホプキンスが見事にヒッチコックに見えてくる。女優陣がスカーレット・ヨハンソンにジェシカ・ビールと何気に豪華なのも素敵です。あ、もちろんヘレン・ミレンも素晴らしいですよ。まさかの水着姿まで披露してるし。あとジェームズ・ダーシーがアンソニー・パーキンスそっくりで、もうノーマン・ベイツにしか見えない!彼の登場時には館内にどよめきが起こったくらいです。

どこまで事実かは分かりませんが、あの傑作誕生にはにこんな経緯があったのか、と感慨深いです。『サイコ』を観てなくても楽しめるでしょうが、ほぼネタバレなのでやはり事前に観ておくことをオススメします。

↓以下、ネタバレ含む。








ヒッチが『サイコ』映画化にここまで情熱を傾けていたとは驚きでしたね。『サイコ』は元々は実在の連続殺人鬼エド・ゲインをモデルにした小説で、当時は誰もがその映像化には反対するような類のもの。なぜヒッチは周囲の反対を押し切ってまでこれを映画にしようと思ったのでしょう。物語に引きこまれたからという描写も特にないし、自信のほどを問われると言葉を濁します。

それはエド・ゲインが登場するヒッチの妄想、白昼夢が語っているように、様々なプレッシャーなりストレスなり不安に起因していたのでしょう。現にアルマの浮気を疑うようになってからゲインの登場は増えていきます。シャワーシーンではゲインが乗り移ったかのような鬼気迫る演技指導。そこにあるのは殺意、破壊衝動。『サイコ』の中に自身を投影してたであろうことが見て取れます。その結果作られた映画は、自ら「駄作だ」と悲しげに言いきるものでした。身勝手な妄想が空回りした駄作。

ところがここで冷戦状態だったアルマの提言により再度、編集が行われることになります。ヒッチとアルマが二人で喧々諤々しながら再編集に挑むシーン、その一気に畳み掛けてくる展開に超興奮。それまでのダメヒッチを返上し、かつあの名作がまさに再構築されている瞬間に立ち会っているようでたまりません。

特にあのバーナード・ハーマンの音楽を入れることにしたところ。アルマが「これがいいのよ」と言ってあの音楽がキャッキャッキャ!って鳴り響いた瞬間にもうアドレナリン噴出ですよ。最初は反対していたヒッチの手のひら返しも笑えます。

ラスト、上映中の劇場ロビーで、聞こえてくる観客の悲鳴に合わせて踊るように手をふるヒッチに同調せずにはいられません。ここ最高。そしてヒッチはアルマの大切さに気付くのですね。多分とっくに気付いていたけど意地みたいなもんがあったのかもしれない。そしてヒッチの中のエド・ゲインは去っていきます。

夫婦の話の比重があとちょっと大きかったら、多分つまらなくなっていたでしょう。バランス的にはギリギリだったと思います。でもそのギリギリが功を奏して、映画作りと夫婦危機をうまく絡めつつ、夫の天才を信じる妻と妻の献身に気付いた夫、という綺麗なラストに着地しているのです。


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