2013
04.08

力強さとホラー愛。『パラノーマン ブライス・ホローの謎』感想。

paranorman
ParaNorman / 2012年 アメリカ / 監督:サム・フェル、クリス・バトラー

あらすじ
魔女伝説の残る町、霊の見える少年ノーマンは死者の復活を阻止するハメに。



ストップモーションアニメ。人形を一コマ分ずつ動かして撮影する、いわゆるコマ撮りによる作品。一本の映画を作るのに気の遠くなる作業と年月をかけるわけですね。そんな制作者に僕は無条件で「敬意を表するッ!」なのですが、そんなストップモーションアニメの中でもこの作品は出色の出来。

まず人形の動きが抜群にイイ。動作がものすごく滑らかで、一瞬CGアニメかと疑うくらい。でも独特の質感や立体感はやはりパペットのものなので、意志を持って動いているかのような実にリアルな動きです。特に主人公ノーマンのくるくる変わる表情がカワイくてもう。美術や小道具も凝ってて、この細やかさがまたリアリティを伴い物語に入り込みやすくしています。人形制作には3Dプリンタを使ったそうです。CGモデルの顔から人形の顔を機械的に造形したってことなのね。顔面パーツの数で3万個以上!それをいちいち付け替えることであの豊かな表情を実現しているわけですね。

それから、人形のデザインも含め、キャラクターが抜群にイイ。気弱そうな表情と気の強そうな頭髪が同居するノーマンの造形が彼の性格にマッチしてて実によいです。そして周りを固めるキャラもなかなか強烈。バカそうな楽天家の友人ニール、ニールの兄で筋肉バカっぽいミッチ、ノーマンの姉でバカそうな上に尻軽そうなコートニー、どう見てもバカないじめっ子のアルヴィン。ってバカばっかりだな!イヤ、個性的な面々がそろっていると言いたかっただけなんだが……。筋肉バカのミッチだけは見た感じでもう脳みそ入るスペースなさそうなので擁護に困るんですが。

そして物語は、この霊が見えるという特異体質のせいで変人扱いされイジメられるノーマンが、自分を変え周囲をも変えるという力強いもの。孤独を抱える者のやるせなさという点では昔のティム・バートン作品のようで、実際ティム・バートンの撮った『フランケン・ウィニー』よりもある意味バートンぽい。バートンは直接関係ないんだけど。また自分の存在意義を知るという点では『シュガー・ラッシュ』にも通じるものもありますね。つまりそれらの物語が好きな人にはたまらない魅力があるということです。

加えて冒頭から感じるホラー映画愛。ノーマンはポスターやグッズを集めまくるゾンビ映画好きで昼日中からゾンビ映画観てるとかね。一緒に部屋にいるお婆さんとのやり取りの意味が分かったときに「おお」ってなる冒頭からしてイイ。目覚ましやスリッパなどのゾンビグッズもこれまた凝ってて楽しいです。

ホラーコメディとしてのスリリングさと笑いはもちろん、思わず泣けてしまう展開も秀逸な一遍。エンドロール後のオマケもカワイイです。ちなみに、最も変人でありながらキーマンでもあるノーマンの大叔父さんの声はジョン・グッドマンですよ。これだけで安心感が増しますよ。

↓以下、ネタバレ含む。








凝ってるのは美術や小道具だけではなく、設定の活かし方もですね。普通の人には見えない死者と話すことができるというノーマンの設定なら、普通の人にも見えるゾンビものとしての展開は不自然。ところがこれが終盤にちゃんと生きてくる。ゾンビは見えるが霊は見えない、だからこそノーマンにしかできないことがある。気味悪がられるだけだった能力によってしかできないことが、町を救うことになる。ゾンビものの体裁を崩さず霊視の能力を活かている、これがイイ。

また、疎外され孤独にさいなまれるのはノーマンだけではなく、魔女として糾弾された少女アギーも同様。「僕らは似た者同士だ」というようなセリフがある通り、ノーマンはアギーの悲しい運命に自分を重ねずにいられない。そしてアギーを救うことで結果的に自分も救われるという、二重の救済物語にもなっています。

このアギーとの攻防は結構すごい。まるで『キャリー』のような爆発力ですが、こちらはビカビカです。ビリビリか?彼女の恨みの大きさをとそれにより肥大した醜悪さを表しつつ、迫力ある対決シーンとしても機能しています。その後の森の中で二人が語らう穏やかなシーンとの対比も効果的。

ホラー映画要素としては『ミスト』のような集団心理の恐ろしさまで描いてて驚き。もちろんゾンビ要素も豊富。このゾンビたちは責めを負うべき所業を行った人たちですが、反省も後悔もしているし、ゾンビのくせに人間に散々ボコられたので、浄化されるのもよしとしましょう。むしろ追う側から追われる側にシフトするという点が、呪いから浄化へ至る道筋でもあったと受け取れます。

魂が入ったかのような人形たちの名演技と、町を救い家族との絆も取り戻すという力強さ。別に強靭な印象というわけではないですが、これはテーマの力強さです。だって最後の姉ちゃんはカッコいいし、兄ちゃんの性癖もある意味力強い。イイです。


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