2013
04.05

既視感と納得による幸福。『シュガー・ラッシュ』感想。

wreck-it-ralph
Wreck-It Ralph / 2013年 アメリカ / 監督:リッチ・ムーア

あらすじ
ゲーム世界の悪役ラルフはヒーローになりたかった。でもね……



登場キャラが見た目も動きもとにかくカワイイ!ラルフの地面をどんどこブッ叩く姿とか、クルクルよく動くヴァネロペの超絶なキュートさとか、ぷいぃ~んってジャンプするフェリックスとか。3DCGなのに動きが8ビットのフィックス・イット・フェリックスのキャラたち、シュガー・ラッシュのちっこいレーサーたちもいいですね。お気に入りはフェリックスです。あの何でも直す無敵さ、ヤツはあれですね、スタンド使いですね、クレイジー・ダイヤモンドの。間違いない。

加えてゲームネタが懐かしいのから新しめのまでいろいろ入ってて、そのネタを見つけるのも楽しさのひとつ。そしてこのゲームネタ要素が設定自体のリスクを軽減し、ゲーム世界でのお話であるという作品内でのリアリティを補強しているわけですね。エンドロールも超ステキ。

子供と遊ぶオンの時間とそれが終わってからのオフの時間、遊ぶ際の役割がおおよそ決まっている、そんな点で『トイ・ストーリー』と設定のベースが似ていますが、遊ぶ対象の子供との絆でなく、キャラ自体のアイデンティティの話なのが大きな違いです。

誰しもが持つ自己の現状への疑問、模索。自分はここにいていいのかとあがいた結果たどり着く心境。冒険と笑いと涙の裏には、とても優しい視点があります。それが疲れた現代の大人にこそ響くのでしょう。響いちゃいましたよ?

同映の『紙ひこうき』も大人のファンタジーでよかったですね。スゴい数の式神だなーって思いながら観てました。

↓以下、ネタバレ含みます。








いやあ、メタルギアの「!」は笑ったわー。

さて、物語が結果的には自分探しの旅であり「誰しも役割があるんだよ」「そのままでもいいんだよ」という、先に述べた優しい視点があるのは分かるんですが、実はちょっと引っかかりを感じるのですよ。それはこの2点。

Q1.色んなものがどこかで見たような気がするよ?

Q2.これ本当にハッピーエンドなの?


で、考えてみて自分なりに回答を出しました。


A1.さりげない既視感から来るノスタルジー

舞台は主に「フィックス・イット・フェリックス」、「ヒーローズ・デューティー」、「シュガー・ラッシュ」の3ゲームですね。この3つの舞台とそこに登場する者たちには、何かを思い出す要素が色々入っています。

まず「フィックス・イット・フェリックス」。この上へ昇っていく面クリア型のアクションゲームは、同じくレトロゲームのクレイジークライマーやエレベーターアクション、レッキングクルーなんかを思い出します。ラルフのシルエットは初期のドンキーコングみたい。子供の頃よく遊んだもんですよ。

次いで「シュガー・ラッシュ」。それ系のレースゲームを思い出すところですが、バラエティあるコース、荒野のような地形から、僕はゲームよりも『スターウォーズEP1 ファントム・メナス』のポッドレースを思い出します。人によっては他のレース系映画を思い出すかも。あとあのお菓子の世界の懐かしさとかね。体に悪そうな色の菓子を駄菓子屋で買い求めた日々。お菓子つながりで「ヘンゼルとグレーテル」なんかも浮かびます。

「ヒーローズ・デューティー」はFPSですが、世界観はほとんど『スターシップ・トゥルーパーズ』ですね。あの絶望的に湧いてくるバグズには圧倒されたものです。

こんな感じで、かつての懐かしいもの、好きだったものをほのかに思い出させるわけです。このギリギリさりげない既視感から来るノスタルジーが、幸福な感じをもたらしてくれます。

決め手はヴァネロペの正体です。これも引っかかりのひとつですが、ここで一気にディズニーらしさが投入されます。これにより一連のディズニー映画に連なるわけですね。ちょっとムリヤリな気もするし、ピクサーだったらこうはしなかったんじゃないかなとは思うんだけど、でも過剰なサービス精神だと考えればこれはこれでいいのかと思えてきました。

(そのうちディズニーランドに登場させようという思惑があるかもしれないが、それは考えないようにしよう)


A2.納得は全てに優先するぜ

最後はラルフもヴァネロペも満足そうに笑って終わります。でもこれってホントにハッピーエンドなの?すべてが終わってもラルフは悪役のまま影の道を歩み、ヴァネロペは人気キャラとして陽の当たる道を歩むわけですよね。それぞれが満足しているとしても、ずいぶん差があるのではないかと思っちゃう。

でもこれ、テーマはヒーローになることではなく、自分が納得することですからね。

ラルフは自分の役割を一旦否定し、回り回ってまた戻ってきます。ヴァネロペは進化したかのように思えますが、そもそも元の姿に戻っただけで、不当に迫害されていたものが当たり前にレースに出れるようになっただけです。状態としては停滞と進化ではなく、二人とも回帰しただけです。

変わったのは自己の正当性を肯定するようになったこと。これだけで納得に値すると思いますが、加えて紆余曲折の結果まわりに受け入れてもらうことが出来たことが大きい。

この「紆余曲折した」というのがポイントで、オンリーワンだからいいのだとか最初からぬるいことを言ってるのとは違い、ナンバーワンを目指しその過程でオンリーワンに価値があることを知るからこそ納得できるのです。この納得した結果が幸福な感じをもたらしているのです。ラルフもヴァネロペも納得し、二人は強い絆で結ばれ、充実した今を生きることができるようになった。これはやはりハッピーエンドですね。

一点疑問なのは、解決してからもヴァネロペがバグ技を使えるのはなぜだ?ということ。でもまあ一度覚えたスキルを経験として活かせますよという、これまたサービス精神の表れだと思えばオマケとしてありかなと思います。


というわけで、疑問に思った事柄が、逆にすごく愛おしさ、多幸感として結実しているように感じるのです。

それにしてもヴァネロペはカワイイなあ。あのカワイらしさにメロメロですよ。そしてあのカッコいい軍曹が頬赤らめて女を見せるのもカワイすぎて悶える。


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