2013
04.02

思考を促す挑戦。『クラウド アトラス』感想。

cloud_atlas
Cloud Atlas / 2012年 アメリカ / 監督:ラナ・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ

あらすじ
クラウドアトラスって雲の地図って意味らしいよ。



『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟改めウォシャウスキー姉弟(これにはビックリ)、『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ監督による壮大なる叙事詩。

時代も場所も全く異なる6つの物語が目まぐるしく入れ替わって描かれます。最初はその吉野家なみの回転率にあっけにとられますが、それでもさほど混乱しません。TVのようなザッピング感を味わうかと思いきやそんなことはない。場面の転換は意識的だし、あとは登場人物に覚えがあれば話を見失うということもないでしょう。これはかなり高度な繋ぎ技だと思います。

演出的な技に加え、同じ役者が役は違えど複数エピソードに出てるからというのも大きいでしょう。エンドロール直後には誰がどの役をやっていたかを教えてくれます。トム・ハンクスとハル・ベリーは予告編からも推測できましたが、まさかあんなに大人数が重複していたとは。確かに不自然なメーキャップしてるなというのは何人かいましたが。「ヒュー・グラント久し振り!でも出番少ないな」と思ったら結構出てた!みたいなね。

また各時代をつなぐアイテムが登場したり歴史が語られたりすることで、これが一連の時間軸の長い物語であることを示しており、散漫な印象を防ぐ役に立っています。そしてこの繋ぎがあることで、物語は進むにつれて深みを増していきます。人の思い、その力を六重奏で表している。良質な連作短編をこれ以上ない効果的な映像で作り上げています。しかし上映時間172分とかね、もう膀胱が限界だったぜ?

ところで、なぜ6つの物語を同時に進める必要があったのか?そして結局何を伝えたかったのか?このあたりが難解さを助長している気がします。これは観た者に思考を促すことで物語が内包するテーマをより深く理解してもらうという、ひとつの挑戦だったと捉えられるんじゃないでしょうか。

↓以下、ネタバレです。








正直言うと、ホントは各時代がもっと劇的な繋がりをもたらすのかと思ってました。例えばトム・ハンクスとハル・ベリーは連続して転生し続けて、各時代を経てようやく最後に結ばれるとか。あるいは各時代の人物が次元の狭間で一堂に会して何か運命的なものと対峙するとか。たけど、そういう話ではなかったわけです。となると各話には何かしら共通点があるはずです。じゃあそれは何かというと「時代に翻弄される人々が、自ら選択し、その思いを未来へ託している」ってことなんじゃあないかと思うわけです。

時間軸順に見ていくと、エピソード1では、主人公ユーイングは奴隷解放運動へと身を投じます。奴隷制度とその解放運動が歴史の節目であることは言うまでもないですね。白人と黒人の間に友情が芽生えるというのはこの時代の大きな変革でしょう。

エピソード2では、主人公フロビシャーは曲を仕上げて全てを愛する友に託し、命を断ちます。非社会的とみなされていた同性愛者であることを恥じずに貫き、自分の作品を盗もうとする老作曲家には断固屈しない。陶器をブン投げて割るシーンは圧巻ですね。次のエピソードでこの曲を称えるレコード屋の店員がフロビシャーと同じベン・ウィショーが演じているというのは感慨深いものがあります。

エピソード3では、主人公ルイサ・レイは未曾有の惨劇を起こそうという陰謀を阻止するため、自ら危ない橋を渡ります。原発問題、東西冷戦といった背景で、ルイサが世界を救うべく命がけで行動し、それをシックススミスの姪へと託します。最もサスペンス性に富む一遍です。でもそんなことよりハル・ベリーがナイスバディです。

エピソード4では、主人公キャベンディッシュは奪われた自由を取り戻すため一か八かの賭けに出ます。これ最もコメディ風味なんで(このエピソードのヒューゴ・ウィービングには目を疑う)一見時代性は薄そうですが、高齢化社会やカリスマの危険性というものが描かれている、と言えなくもないです。この主人公だけやたらハッピーエンドでちょっとムカつきますね。ちょっとだけね。あと型破りな作家ダーモットを演じるハンクスが面白すぎます。

エピソード5では、主人公ソンミ451が隠蔽された事実を白日の元にさらけ出すため戦います。これは一番分かりやすい。凄惨な現場を見た当事者が社会を変えるため、改革の旗のもと命を懸けるわけですから。これが映像的に一番見ごたえがあるエピソードですが、ちょっとツッコむところもありますね。なんで落ちたのに生きてたの?とか。

エピソード6では、主人公ザックリーは好戦的部族に一族を滅ぼされ、故郷を離れることを選び、新天地へと旅立ちます。そして数十年後、孫たちに昔話としてその思いを託しています。ちょっと西部開拓史というか部族間抗争みたいな印象もありますね。メロニムが出てこなければむしろエピソード1よりも前かと思ってしまいそう(それが狙いか?)。

このように「時代に翻弄される人々が、自ら選択し、その思いを未来へ託している」という点で共通していると言えるのではないでしょうか。ならば、一見複雑なプロットであると見せながら、訴えていることは意外とシンプルです。そのシンプルさを様々な味わいの物語で並行して描くことで説得力を増しているのです。でもそのシンプルで力強いメッセージは、観た者が各編を吟味し、思考しないと見えてこない。やはりなかなか挑戦的な作品だと言えるんではないでしょうか。

ってねー、わりと簡単に言っちゃいましたけど、でもねー、これいくらでも深読みできますからね。僕は原作読んでないしこれ以上は言えませんが、本来はほうき星のアザとか輪廻転生とかもきっと絡んでくるんでしょうね。そんな風にいろいろと解釈や議論ができるというのも面白い点なのではないかと思います。


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