2013
03.27

クズには選択を与えよう。『フライト』感想。

flight
Flight / 2012年 アメリカ / 監督:ロバート・ゼメキス

あらすじ
飛行機を無事不時着させたけど犯罪者扱いだよやってらんねーよヤクをくれ。


ゼメキスが久しぶりの実写作品、主演はデンゼル・ワシントン。なんか重厚な物語が展開されそうという期待を持ちますよね。いやあ。まさかね。まさかおっぱいから始まるとはね。それだけでもう「アレ?なんか思ってたのと違うかも」っていう覚悟ができますよね。「覚悟はいいか?俺はできてる」つってね。

離陸から事故までのシーケンス、これが手に汗握る演出と迫真の映像で素晴らしい出来。予告でそこのスペクタクルに惹かれた人はこのシーン必ず満足すると思います。でもそこからは別の映画。これアクションでもサスペンスでもパニックものでもなく、人間ドラマなのよね。

↓以下ネタバレあり。








全てはウィップ・ウィトカー機長が調査委員会でキメの一言を言うための壮大な前フリだと思うのですよ。思い返すと「おお」と思うんだけど、デンゼル・ワシントンは瞬間的にキレる対話シーンやら指を震わす細かい演技やらで、事前に全てを語ってるんですよね。当然観てるこちらも皆知ってるわけですよ。ああこいつはもうアレだなって。

だって、僕はずーっと「こいつクズだなー」と思いながら観てましたからね。何度も禁酒しようとしてまた飲むし、ヤクやりまくりだし、せっかく慕ってくれた女性とも口論しちゃうし、古くから知ってるCAには自分の正当性を証言しろって言うし、もう英雄感ゼロですね。クズです。

で、そんなクズっぷりを延々と見せられるから、こちらとしてはもうそれが当たり前になってくるんですよ。調査委員会の前夜に酒瓶スパーン!と取っちゃうのも「やっぱそうだよね!」とか思うわけですよ。当日朝のジョン・グッドマン登場には「これでもう大丈夫!」ってなりますよね。なんですかあのジョン・グッドマンの安心感は。

ところが!ところがですよ!調査委員会の席でウィトカーさん、内容が自分に完全有利に動いているにも関わらず、あろうことか最後の質問を聞き返すわけですよ。「すんませんなんすか?」「え、もう一回」「え?うん?」とか確か3回くらい聞き返しますよね(セリフは適当)。で結局認めちゃう。もう「えええええ!?」ですよ。なんで言っちゃうの?と。むしろなんでそこでクズを突き通さないのかと。

でもねえ。自分がクズな分にはいいけど、でも第三者に、しかも死者に、さらに同僚に、ついでに言うと情婦に、なすりつけられるかどうか。これだけの条件を付けたうえで、正真正銘のクズかどうかがあからさまに問われるわけですね。逆に言うと、これだけ条件そろえないと自分を受け入れられなかったんですよ。究極の選択にギリギリで踏ん張ったという感じですけど。

病院の階段場で交わされる会話で、余命少ない男が「受け入れればいい」みたいなことを言いますが、ラストのムショでの機長はまさにその状態だったわけですね。あの階段シーンにはいろいろ集約されてそうです。つまりこれは真実と向き合い自由な空へと飛び立つ旅の話であり、このシンプルなタイトルにはそういう意味も込められているのでしょう。

委員長エレンさんの最後の表情がすごくよかったですね。「なぜ言っちゃうの」と「よく言ったわね」がないまぜになったような複雑な表情。あれは観てる僕らの表情と同じなんだろうなと思うわけです。ラストではいきなり泣かされそうになりますが、なぜ息子の態度があそこまで軟化したのかは特に描かれない(写真がパラパラ映ったりはするけど)。「何者か」という不自然な問いに、そういえば狂信者的な夫婦や階段の男のことがあったので、宗教的な側面があるんだろうなとは思いますが、詳しくないのでやめときます。

上映時間は139分。ちょっと長かったかなー?


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