2013
03.26

正義vs悪の二重構造。『ジャンゴ 繋がれざる者』感想。

django_unchained
Django Unchained / 2012年 アメリカ / 監督:クエンティン・タランティーノ

あらすじ
黒人奴隷のジャンゴが妻を助け出すため、歯医者と一緒に悪党と対決。


タランティーノが『イングロリアス・バスターズ』以来3年ぶりに放つのは西部劇!もうね、冒頭から面白くてたまらんのですよこれが。タイトルバーン!荒野をバックにテーマ曲ドーン!ジャンゴ~♪と『続・荒野の用心棒』のテーマが流れる、ここまでで既に期待できそうという予感がしますが、そのすぐ後のシュルツ登場のシーケンスでそれが確信に変わります。上映時間165分が長いというけど、緩急付けながらもずっと面白いので気にならない。んーまあね、あれまだ続くの?って思うところがないでもないけどね、そのあと長くないから。

アメリカの忘れたい歴史である奴隷制の残酷さはきっちり描きつつも、それに溜飲を下げる娯楽作。キメのカットがいちいちカッコいい!『イングロリアス・バスターズ』に負けない傑作です。むしろ群像劇じゃないぶん入り込んでしまうし、カタルシスも十分。もちろんタラ映画特有の、ダラダラ長い粋なセリフ回し、独自の感性による音楽のチョイスも健在。現在のタランティーノの集大成ですね。

キング役のクリストフ・ヴァルツ、飄々としながらも魅せまくってて最高。スティーブン役のサミュエル・L・ジャクソン、最初誰かと思ったけど最高。やたらイイ体のジャンゴ役のジェイミー・フォックス、やたら役に合ってるカルヴィン役のレオナルド・ディカプリオも言うことなし。強い個性同士が各々を引き立てあって素晴らしい演技合戦です。

あとね、あの馬車の頭でプラプラ揺れてるふざけた歯の模型、あれイイ。あの脱力加減、イイわー。あげるって言われても「イヤいりません」って即答するけどイイわー。

↓以下、ネタバレ含みます。








観終わってちょっと気になったのは、初の悪役と言われながらも、ディカプリオってそんなに悪くないんじゃね?ってこと。確かに犬に食わせたり残酷なことはしてますが、ビジネスの話はそこまでアンフェアではないし、ラストもシュルツが握手さえすればそのまま出ていけたんじゃね?とか思ったわけです。

でもね、やはりカルヴィンは悪なんですよ。奴隷制を悪いなどとは思ってもいない、マンディンゴの敗者は死んでもいい、自分の王国では自分の言うことは絶対だと、そう思っているわけです。それが当たり前だと思っている。だから自分の所有物である奴隷が逃げれば一日かけても探し出して罰を与える。自分を悪だと思ってない絶対的な悪。ジョジョでいうとプッチ神父なわけです。握手して出て行っても追手を掛けて殺しにきたかもしれない。

フランスかぶれでありながらフランス語を解さず『三銃士』のデュマが黒人であることも知らない(すんません僕も知りませんでした…)、姉を溺愛し、自分のわがままは通ると信じて疑わない。いっぱしの紳士を気取っているけど、稚気にあふれている。要するに若い。

そこでシュルツです。シュルツはカルヴィンとは正反対の絶対的な正義。指名手配犯を殺すことには何の躊躇もしないけど、奴隷制を軽蔑し黒人奴隷が虐げられる場面では眉をひそめる。そもそもジャンゴの妻を取り返すのに付き合うというのが、それはもう金でも同情でもないし道徳心や遵法精神ともちょっと違う、やはり正義感なんですよ。ちょっと青臭いくらいの。そういう意味ではシュルツも若い。

そんな若いどうし、かつ絶対的な正義と悪が対決するのは必然。だから西部劇に付き物のラストの決闘シーンは、ジャンゴとカルヴィンの間ではなく、シュルツとカルヴィンの間で行われるわけです。正確には決闘ではないけども意味合い的にはそうですね。

一方、じゃあジャンゴはどうなの?となるわけですが、ジャンゴは別に自分を正義だとは思っていない。彼はただ妻のブルームヒルダを助け出せればそれでいい。そのために邪魔なものを排除するだけです。内心はともかく、奴隷が犬に食い殺されても表情一つ変えない。ジャンゴの正義は個人的理由での正義です。

それに対するのはスティーブンですよ。ヤツは奴隷頭なのに自分が陰でキャンディ家を牛耳ってるという自覚がある。もう自分が奴隷だとか思ってないですねアレは。他の奴隷たちには容赦ないし、撃たれたカルヴィンに「かぁぁぁるびぃぃぃんん!」と走り寄る姿を見ると彼の父代わりくらいに思ってますよ。こちらは自分の王国を壊されたくないという個人的理由での悪。影の悪の親玉です。

そしてラスト、本来の主人公と本当の悪党、個人的正義と個人的悪の図式で最後に対峙する。これが二つ目の決闘に値するわけです。正義vs悪が二重の構造を持って構築されています。正義だ悪だは個人の主観だ、とかいう議論はこの際どうでもよくて、観客がそう見ているということですね。というわけで、ディカプリオは見事に悪役を成し遂げていたのでした。

それにしてもラストの爆破をバックにキメるジャンゴは超カッコいい!そしてその横で可愛らしく手をたたくブルームヒルダが超キュート。文句なしのエンディングです。

ところでジャンゴの吊りシーンは本能的な恐怖感に震えながら観てましたよ。『カジノ・ロワイヤル』の拷問シーンでも「ギャー!ギャー!」って心で叫びながら観てたけどあれに近い。ジェイミーは全裸ですからね。その真ん前で芝居するウォルトン・ゴギンズも頑張ったと褒めてあげたい。あとブルームヒルダの伝説をシュルツから聞くときに、彼の前でちょこんと体育座りをするジャンゴがカワイイです。


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