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2020
07.04

孤独の先の輝き。『ジュディ 虹の彼方に』感想。

judy
Judy / 2019年 イギリス / 監督:ルパート・グールド

あらすじ
Somewhere over the rainbow...



『オズの魔法使』のドロシー役で知られる、ハリウッド黄金期のミュージカル女優ジュディ・ガーランド。彼女が1968年の冬に行ったロンドン公演の日々を中心に、一人の女優の歩んできた人生とステージに賭けた情熱が描かれます。

まだ少女の頃、普通の子供たちが普通に享受するものに背を向け、スターでいるために歩き始めた黄色いレンガ道。それが棘の道だと知りつつも投げ出せないジュディがツラい。不眠と鬱に苦しみ、ステージのプレッシャーに苛まれていくジュディ。しかしそれでもショーの観客との間に生まれるものを信じているのが悲しくも美しく、やがて見えてくる彼女にしか見えない景色に泣けます。

ジュディ役は『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズのレニー・ゼルウィガー、奔放さがときにワガママに映るのにそれでも憎めないカリスマ性を見事に体現。出演作を観たのは久々だけど、別人みたいで驚きました。この役で第92回アカデミー主演女優賞を受賞していますね。共演には若き夫となるミッキー役に『ラ・ラ・ランド』フィン・ウィットロック、ジュディの世話役ロザリン(とてもイイ娘)役に『ドクター・ドリトル』ジェシー・バックリー、劇場主のバーナード役に『ハリー・ポッター』シリーズのダンブルドアことマイケル・ガンボン。

子供と一緒にいるために子供と離れるというのが世知辛く、ゲイカップルと食事したり若い男と付き合ったりといった一見奇行に見える行動も、どこか救いを求めているかのよう。それでも彼女の微笑む顔には無条件に惹き付けられ、その孤独さと裏腹なスター性に思いを馳せずにいられません。ステージのパフォーマンスも圧倒的です。

↓以下、ネタバレ含む。








進む道の選択を迫られる少女時代のジュディ、それを強いるメイヤーさんというのはMGMの偉い人ですね、明るく輝くイエローブリックロードの向こうは苦難の道だったわけで、本作以降『オズの魔法使』を観るときに複雑な気持ちにならざるを得ないんですが、ともかくジュディは様々なものを失いながら、それでもステージを捨てられないでいます。スターとしての風格は失わず、しかしスターとしてのプライドが色々と邪魔をして周囲とのトラブルも。レネー・ゼルウィガーは放漫さもありつつスターの存在感もあってよいです。正直ジュディの人間性には色々と引っ掛かることもあります。子供たちに電話するシーンは1か所しかなく、ジュディはその間結婚までしてるわけで、子供たちが「今の家にいたい、落ち着きたい」と言うのも自業自得に見えます。そもそも2番目の夫との間に大きい娘もいるわけでそちらは放置してきたのか?という疑問もあったり。ジュディ自身が母親から愛情をかけられてなかったことが、家族との距離感を測れない要因としてもあったのかもしれません(劇中のマネージャーみたいな女性が母親)。

夫となるミッキー、最初はなんか怪しいと思っていたけど実際は本当にジュディを売り込もうとしていて、それで儲けようという魂胆はあったにせよ悪人だったとは言い難いんですが、それ以前にジュディがいきなり結婚するのには驚きです。子供たちのために働いていたはずなのに、と飛躍してる感があるんですが、むしろステージの呪いともいうべき逃れられない宿命がジュディにはあり、その苦しみを緩和するために男を求めたのかもしれません。他にもファンであるゲイカップルとの出会いは印象的。いきなり食事に誘うのは驚きますが、「味方がいると感じる」と言うように仕事とは関係ない人と一緒にいたかったのでしょう。彼らの一人がピアノを弾きながら泣き出すところはせつないです。あと「ドロシーに夢中だった」と言う医者がその理由を「犬を大事にするから」と言うのには、生身のジュディではなくスターの概念の強調を強く感じます。

とは言え、その呪いなり宿命なりが、喜びをもたらし幸福感をいざなうのも事実で、それを体現するパフォーマンス・シーンは素晴らしいです。歌詞の内容がその時々のシーンに合っているのが上手い。最初の頃は「一人でいい」と歌い、眠れない夜が少女時代とオーバーラップする際は電車で走り回る歌、ゲイカップルには希望に満ちた歌を、結婚後は愛に溢れた歌を、終盤には「それでも生きていく」と歌います。ラストが「虹の彼方に」であるのは予想できますが、まさかのオーバー・ザ・レインボー大合唱には背筋がゾクゾク。客席との一体感が素晴らしく、自身の幸せをフイにしてでも歌い続けたジュディの人生が決して無為なものではないことを見せてくれます。このステージの後、47歳でこの世を去ったジュディ・ガーランド。彼女の歌と笑顔は、今でも映像の中で誰かに喜びをもたらしていることでしょう。

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