FC2ブログ
2020
03.30

仮面に隠した嘘と真実。『仮面病棟』感想。

kamen_byoutou
2020年 日本 / 監督:木村ひさし

あらすじ
ペ◯ーワ◯ズじゃないです。



医師の速水は先輩に頼まれてある病院の一夜限りの当直をすることに。しかしその夜、ピエロの仮面をつけた凶悪犯が病院に立てこもり、速水らは院内に閉じ込められてしまう。速水は銃で撃たれていた女子大生の瞳を治療し、共に脱出を試みるが……。病院を舞台にしたサスペンス・ミステリー。

現役医師で作家でもある知念実希人の同名ミステリー小説を映画化。ピエロの仮面を被って銃で武装しコンビニを襲った強盗が、夜の病院に侵入、元精神病棟である建物の特性を活かして医師や患者を院内に閉じ込めてしまう。たまたま当直のために来ていた医師の速水と、犯人に撃たれた傷を治療された女子大生の瞳は脱出を試みるものの、通報を拒む院長や何かを隠しているらしき看護師たち、身元不明の入院患者や使われてないはずの手術室など、多くの謎に直面していきます。閉ざされた空間で繰り広げられる閉塞感と、凶悪犯に握られた命の危機、次々に出てくる不穏な言動に翻弄されていくのがスリリング。ミステリーかサイコスリラーかと期待して、犯人の正体やトリックにはなるほどと思ったし、ある人にはサイコみもあったので、その点は満足。ただなあ、色々とノイズが多いんですよ。

当直の手伝いで事件に巻き込まれる速水役は『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』坂口健太郎。映画単独初主演だそうで、患者への話しかけ方という医者っぽさに、機転を利かせたり物事を見極めたりという探偵っぽさもあって良いです。速水と共に脱出しようとする瞳役には『帝一の國』永野芽郁。キュートさを抑えて終始不安そうな面持ちが印象的。田所院長役の高嶋政伸は『犬鳴村』ではちと物足りなかったですが、今回は持ち味活かしてて期待通り。ほか、病院の看護師役として内田理央と江口のり子、速水の先輩医師の小堺役に大谷亮平など。

監督は『屍人荘の殺人』木村ひさし。何となくコメディ指向の人かと思ってましたが、今作はかなりサスペンス寄りですね。ただ事実に気付くのが早いとか、ちょっと隙が多いとか、不可解な行動が目立つなど、気になる点は多いです。原作未読ですがこの脚本で作者は文句言わないのかな、とも思いましたが、作者本人が脚本だったのでまあいいか。気軽に観た方がよいと思います。

↓以下、ネタバレ含む。








序盤の雰囲気や人物の登場などの掴みはなかなか良くて、どこか不穏な病院の見た目や、病院に対して何かを言い含めるような若手たちの言葉など、何かを匂わせる感じがあって期待が高まります。速水の登場時になぜかスローになるのが解せないですが。この時折スローを挟み込んでの仰々しさはよくわかりません。ギャグってわけでもないでしょうが、全体的にシリアスなので、半端にギャグっぽいと浮くんですよね。入院患者たちが「幸せなら手を叩こう」でタンタンってやるのも場違いなほのぼの感だし。とは言え登場人物のお膳立てはスムーズで、その後のテンポも悪くないです。と言うかテンポよすぎて、速水が「この病院は何かある」って気付くの早くないすか?とは思いますが、どうやら探偵役らしいのでよしとしましょう。それにしても病院の当直のバイトとかあるんだなあ。最初はそこに仮面の強盗犯がやってきて占拠するわけですが、この仮面がなかなか不気味かつ表情が全く見えない上に、銃で威圧してくるので緊迫感あります。あんな視界の狭そうな仮面着けてたらいくらでも死角を突けるんじゃないかとも思うんですが、そこはまあビジュアル重視なんでしょう。

ミステリーとしてのどんでん返しや意外な真実などはなかなか面白い。特に舞台立ては、元精神病院ということで階段に鉄格子が付いていたりすることで、ピエロとの追いかけっこにスリルを生みます。そのうち開かずの手術室が発覚したり、隠し部屋が明らかになったりと、ピエロではなく病院の怪しさにどんどんシフトしていくことで興味を引っ張ります。やがて明かされる真相もなるほどという感じで、「川崎13」からのネーミングは気付きそうで気付かない絶妙さ。瞳がやけに化粧が濃く顔を隠すような髪型という不自然さ、病院が満床であるという伏線、院長がすんなり金を渡す理由など、納得できるようにはなっています。ピエロが小堺先輩かと思わせるミスリードといった終盤の畳み掛けもスピーディー。タイトルの『仮面病棟』は、仮面を着けた犯人が病棟を練り歩くというのと、病院という仮面の裏で行われていた臓器移植、というダブルミーニングだったわけです。

ただ、いくら武装してるとは言え、ピエロに逆襲する隙はいくらでもあるように思えちゃうんですよ。二階の外来で皆で座ってるときとか隙だらけだし。また、そんな声をたてたり音を出したらピエロにバレるだろうというシーンがあったり、秘密のエレベーターに乗るときその入り口を隠さないまま行っちゃったらそりゃピエロもすぐ来るし、そういうところで緊張感が途切れます。看護士二人の扱いも雑だし。あと永野芽郁は演技力なのか演出なのかわかりませんが、院長がピエロに金を渡そうとするときに飛びかかろうとする速水を止めるのがかなりわざとらしかったり、真面目そうだったのが急に小悪魔っぽく変貌するのが唐突だったり、どうにも微妙。自分の協力者であるピエロは撃つのに速水のことは撃たない理由もよくわかりません。ピエロは結局病院のスタッフであり、速水は自分を守ろうとしてくれたから助けた、ということなんでしょうが、その辺りの心情が今一つ感じられないのが残念。

院長がピエロにすんなり金を渡す理由は臓器移植がバレないようにということでしょうが、別に隠してた三千万まで出す必要性がないしなあ。高嶋政伸のクレイジーっぷりは良いですけどね。銃を撃って「おお」とか感心するのは笑います。でも速水が記者会見まで開きながら何も提示しないどころか「もう憎むのはやめるんだ!」と瞳に訴えてそれをたまたま瞳が見ていた、という茶番感にはさすがに鼻白みますよ。てな感じで色々と惜しいところはありますが、導入の引き込み方やどんでん返しの面白さはあるし、思いのほか坂口健太郎が引っ張っていってくれるので、そこまで悪印象はないです。原作には続編もあるらしいのでそれも映画化されるかもですが、その際はもう少し丁寧に作り込んでほしいところです。

スポンサーサイト



トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1667-0c25984e
トラックバック
back-to-top