FC2ブログ
2020
03.18

こなすべき任務か、守るべき矜持か。『PMC ザ・バンカー』感想。

pmc_Take_Point
Take Point / 2018年 韓国 / 監督:キム・ビョンウ

あらすじ
最前線に行く(Take Point)。



エイハブの率いる11人の傭兵部隊はCIAの依頼で北朝鮮の要人を捕らえるミッションに就く。しかし政治的な思惑により思いがけない危機に見舞われ、地下バンカーで逃げ場を失ってしまうばかりか、要人の暗殺者の汚名まで着せられてしまう。エイハブは敵の包囲網を突破して地上への脱出を図るが……。極秘ミッションを描くサバイバルアクション。

韓国と北朝鮮の軍事境界線の地下要塞=バンカーで繰り広げられる、国際的陰謀を絡めた韓国アクション。2023年、PMC(private military company=民間軍事会社)の凄腕の傭兵エイハブにとっては楽な任務のはずだった、北朝鮮の要人を捕らえるというCIAのミッション。しかし11人の部下と共にDMZ(軍事境界線)の地下バンカーに潜り込んだエイハブは、そこに情報とは違う北朝鮮最高指導者「キング」の姿を目にします。何かがおかしいと思いながらもキングやその側近を拘束したエイハブたちは、しかし謎の勢力に襲われて地下での攻防を余儀なくされることに。怪しげなミッションに挑んだ結果、使い捨てられそうになる傭兵部隊が、裏切りと信頼の狭間で見せる命懸けの脱出劇には超エキサイト。大半が英語劇であり、アメリカ、中国、韓国、北朝鮮の4国もが絡むスケール感は抜群。逐一変化する戦局がスリリングで、激しい銃撃戦や次々に襲いくるピンチの連続には息を飲みます。しかもそれが125分間、ほぼリアルタイムで展開するという緊迫感の凄み!これは面白い。

傭兵部隊の隊長エイハブ役は『神と共に』『お嬢さん』ハ・ジョンウ。アクションはもちろん、驚いたことにほぼ英語で喋りまくっていて、今後のワールドワイドな活躍も十分期待できますよ。エイハブが捕らえたキングの専属医師ユン・ジイ役には『パラサイト 半地下の家族』の社長ことイ・ソンギュン。このユン・ジイとエイハブとのギリギリの関係性も見もの。またキャストは国際色豊かで、CIAの司令塔マックことマッケンジー役に『ロボコップ(2014)』ジェニファー・イーリー、エイハブの右腕マーカス役に『リアル・スティール』ケビン・デュランドといったキャスティング。

監督は『テロ,ライブ』でもハ・ジョンウと組んだキム・ビョンウ。ド迫力の戦闘と同時に救命も行うという、死と生が入り乱れる展開が激熱です。転がるカメラの映像という工夫や、義足によるスリルとドラマの両立、まさかの米大統領選の思惑など凄い。てっきりハリウッド製かと思いきや、これが韓国の単独製作というのも驚きです。全てが期待を越えてくる、興奮必至の一作です。

↓以下、ネタバレ含む。








最初のうちはエイハブが新入りを面談したり、CIAのマック女史と金の話をしたりなど、ミッションを開始するまでは若干ダラダラと会話劇が続く感じもあります。なんかマシンでジョギングしたりして手持ちぶさたにも見えるほど。しかし裏では既にターゲットを監視していて作戦は動いているし、スマホを改造して話せるようにしたり、マックとの関係性が危ういものであることを見せたり、米大統領選が進行しているといった伏線を張っているわけです。エイハブが過去に部下の命を救ったという逸話もここで出ており、これが後に彼の行動の拠り所となっていきます。また、何より時間の経過を飛ばしておらず、これがリアルタイムで展開していく話だというのを示しているんですね(最初は気付かなかったですが)。戦闘シーンが始まってカットが切り替わっても、ドラマが複数箇所に分かれて展開しても時間の流れは変わらず、これが途切れない緊張感として全編を覆っています。一度だけエイハブがパラシュートの落下から部下を救おうとした過去のシーンが流れますが、これもエイハブが気絶してる間の時間に符合していると思われるので体感時間は変わりません。これがまず凄い。

そして次々に変わっていく状況や戦局、思いもよらないトラブルやその回避策というのがバラエティ豊かで、とても地下に閉じ込められているとは思えないほど。まず保護する要人が、名前はキングですが明らかに北朝鮮最高指導者のあの人で、そんな大物と出会ったばかりにCIAの指令部も大混乱に。次いで任務クリアの油断から仲間が瀕死の重症を負うというアクシデント、さらにキングが既に暗殺されたという虚偽のニュース、加えて謎の敵勢力による強襲と、矢継ぎ早のサスペンスが続き、エイハブの部下であるマーカスの裏切りまでが発覚、中国の軍事産業の影が見え、支持率低迷の米大統領を再選させるための起死回生の陰謀までが浮かび上がります。ドラマはあくまでバンカーの中だけで進行しているのに、ニュース映像やCIAとの通信の有無、裏切りや敵襲という要素の見せ方だけで、4国が絡むとんでもないスケールを描き出すのには度肝を抜かれます。

そして各エピソードを彩る様々な工夫も素晴らしい。ボール型で転がりながら、壁や天井まで走れるというカメラによるライヴ映像により、各舞台の様子を映し続け途切れないリアルタイム性を生み出しています。2023年というちょっとだけ近未来設定なのでこのカメラもありですね。激しい銃撃戦も、盾を使って火線に立つというのを主観で映し、盾が破壊されて撃たれるところまでやってくれます。凄いのはエイハブが繰り広げられる銃撃戦の指示をしながら、同時進行でキングの救命措置もするというシーン。戦闘と救命、つまり死と生という真逆の観念を同時に描くというのには驚きだし、両方ともギリギリでこなしていくのがスリリングすぎて漏らしそう。またエイハブの右足が義足で、これが破壊されたことでマーカスとの対決でピンチに陥ったり、その後も行動が制限されるのが上手い。この義足はエイハブが過去に部下を救おうとしたかつての善良さの証にもなっていて、彼の決断により死んでいく仲間たちがその不自由な義足に投影されていくことにもなるのです。

エイハブは撃たれた仲間を置いていく決断をしたり、負傷し家に帰りたいと泣く新人から血を抜いたり(これが酷い)と、作戦上やむを得ないとはいえ他者を犠牲にしていきます。冷徹に振るっているように見えますが、最後まで戦う仲間のジェラルドに「救いたかったんだろ」と言われるように、本意ではない切り捨てに気力を奪われていきます。「すまなかった」とつぶやく姿が痛ましいですが、それをある意味救うのが捕虜となった医師のユン・ジイで、彼が臆面もなく「人を救うのに理由がいるか?」と言うのがエイハブの正気を繋ぎ止めています。このユンさんがなかなかの勇者で、序盤に捕まったときも一人気を吐いたり、危険を省みず血液パックを取りに行ったりもします。ただエイハブとは敵同士なのでどこまで信用できるかわからず、特に敵軍に話しかけられた際にエイハブとの通信機を外して会話するところでは裏切るのではないかとヒヤヒヤ。でも逆に敵を油断させて倒したり、エイハブが撃たれた足を自ら手術するのを遠隔指導したりと最後まで裏切ることはありません。エイハブもはぐれたユンを救うよう指示したりと、いつしか二人が通じ合っていくことでバディものとしての趣も出てくるのがまたたまらんです。

途中エイハブの会話シーンを映し過ぎて戦局が放置気味になるところもありますが、それでもノンストップで進む危機の数々には一喜一憂。戦車まで出てきたときにはあまりの盛り方にそこまでやるかとブッ飛びます。そしてコウモリぶりが油断ならないながらも最終的には利害が一致したマック女史により、ようやく救いだされ空輸されるエイハブとユン。しかしこれでサバイバルが終わらないのが凄い。身重の妻からは難産の知らせを受け、暗殺者の汚名を晴らすため大統領のプロパガンダを強要され、挙げ句ユンを始末しようとするCIAにブチキレのエイハブ。輸送機が攻撃されるという、なおも続く大国同士の争いに、その大国の思惑に沿って動いてきたエイハブは既に仲間であるユンを救うため個人の思いへと立ち返るのです。飛び降りたエイハブの背後で爆散する輸送機は凄まじい臨場感のド迫力で、さらにユンを救いパラシュートを開くところでは部下を死なせ片足を失った過去がまざまざと思い返されるという、最後まで多層的な見せ場を忘れない作りには感嘆です。何とか無事だった二人にじわりと熱くさせながら、無事に生まれた赤ん坊にこの先の希望を重ね、一人の傭兵が辿った2時間を観る者に共有させる。アクションもドラマも盛りに盛った、実に見事な一本でした。

スポンサーサイト



トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1665-20963ef3
トラックバック
back-to-top