FC2ブログ
2020
02.26

トンネルを抜けると犬の影。『犬鳴村』感想。

inunakimura.
2020年日本 / 監督:清水崇

あらすじ
実在します。



臨床心理士の森田奏の周りでは、兄が心霊スポット「犬鳴トンネル」を訪れて以来不可解な現象が起こり始める。トンネルを抜けた先にあるという村、そこには一体何があるのか。真相を知るため奏は犬鳴トンネルへと向かうが……。心霊スポットを舞台に描くホラー。

心霊現象で名高い「犬鳴トンネル」を題材にしたホラー映画。トンネルを抜けた先で恐ろしい目に逢った森田悠真と連れの明菜。正気を失った明菜は奇妙なことを口走るようになり、悠真は妹で臨床心理士の奏に相談するも、怒りに任せてトンネルに入った末に行方知れずに。そして奏の周囲でも奇妙な出来事が次々と起こりだします。全ては「犬鳴トンネル」に通じるのか?その先には何があるのか?というお話。福岡県に実在する心霊スポットが舞台とのことですが、この物語自体はフィクションですかね。実際に怖いことが起こる場所で怖いことが起こった、というのがポイントなんでしょうが、怖いかと言われると正直、うーん。もちろん個人差はあるでしょうが、それなりに要素は揃ってるはずなのに、前半はともかく後半に行くにしたがって怖さは薄れていきます。ドラマの方に重点を置きたかったのか、どうも半端な感じがします。

主人公の奏役には『ダンスウィズミー』三吉彩花。スラッとした立ち姿が魅力的で、ホラーヒロインとしてはそこまで派手ではないもののまずまずの存在感。奏の兄、悠真役の『十二人の死にたい子どもたち』坂東龍汰、悠真の彼女である明菜役の『ミスミソウ』大谷凜香といった若手も頑張ってます。ただ、奏の父役の高嶋政伸、母役の高島礼子は、共にどうも使いどころが違うような気も。母方の祖父役、石橋蓮司もなんか優しげな感じのおじいちゃんで、いやいいんですけど。奥菜恵が出てるのは『呪怨』繋がりがあって面白かったです。

というのは『呪怨』シリーズの清水崇が監督なんですね。なので気付いたらいるとか、ぞわぞわと群がるとか、ホラーとしての見せ方は心得たものです。目新しい表現もあるし。ただ、これが都市伝説の怪奇なのか、土着的言い伝えの怖さなのか、呪われた血筋の恐怖なのか、何がメインなのかがよくわからなくて困惑。良いシーンもあるんですが、何かこう、上手くハマってない気がしてしょうがないです。

↓以下、ネタバレ含む。








最初は心霊スポットでユーチューバー的な動画を撮るカップルが出てきて、正直またこのパターンかとは思うんですが、そこはもう今の時代は避けられない描写なんですかね?ともかくまずは現代の怪談と言うか都市伝説を探ったら、本当にヤバイの出た!みたいな導入。そこからトンネルの奥で受けた何らかの呪いなのか、トンネルを離れても憑かれたようにフラフラする明菜、というので不気味さを見せます。おもらししながら歩くというのが既に人としての理性を失っていることを感じさせるし、明菜が落ちてくるシーンなどはゾワリとします。ただ、そこから謎めいた村の土着的な怖さが立ち上がってくる、かと思いきや、奏を始めとした森田家の忌まわしき過去という血筋の話へとシフトしていくんですね。一見怖さ要素盛り沢山なんですが、これが困るんですよ。ダムに村を沈められた村人たちの恨みなのか、母方の先祖の呪いなのか、はたまた犬の呪いなのか?誰が何を恨んでなぜ奏たちを襲ってくるのか、いや語られはするんだけど、輪郭がいまひとつ曖昧で引き込まれないのです。

村人の霊たちは顔もハッキリせず、軌跡を残しながらわらわらと移動するのが特徴的で、これはこれで面白い表現だとは思うんです。意外と怖さには繋がってない気もしますが。ただ、後に奏たちの先祖であることがわかる青年の霊に関しては姿がハッキリしていて、しかも腕を掴むこともできるし、フィルムを回すこともできる。奏に真実を告げるという明確な目的があるから他と違うのか、それとも過去の世界へ引き込む役割があるからなのかよくわかりませんが、霊はもっと霊らしくしてほしいとか思っちゃうんですよ。あと犬は何なんだろう。山犬がとりついた?犬神憑きということ?あの赤ん坊は犬と人の子なのかそういうわけじゃないのか、この辺りもよくわからないわりには、あの女性が突如として犬人間化するのには唖然とします。役者の体の動きだけで犬人間を表すのは大したもんだとは思いますが、なんか『キャッツ』を思い出してジェリクル・キャットの歌が聞こえてきちゃいましたよ?悠真の友人たちが電話ボックス内で溺れるのは何だかバラエティ番組の罰ゲームみたいな絵面だし、女の子が車のボンネットに落ちてくるのはビクッとしますが、それは単なる驚かしで恐怖ではないです。

高島礼子が犬化するのもよくわからなくて、トンネル前で子を思って泣きわめくことで先祖の犬の血が目覚めたのか?祖母が犬化したという話はなかったと思うので、それがきっかけということでしょうか。あのトンネル前の重そうな壁が現れたり消えたりするのも、超常現象としてはあまりにも不自然。父は村を沈めた電力会社の血筋だったということですが、その沈めた村の女の孫とわかってて結婚したと思われるのに、家族のことを「怖かった」とか言うのが意味わかんないし、奏が父に詰め寄るのも唐突だし、奏が戻ってきたらいきなり実家の壁に森田家をディスる言葉が書き殴られてたりするのも不可解(明菜の家の人たちの仕業ということ?違う?)。結局あの犬人間は父の家系に復讐したかったのか、でも子供たちは自分の子孫でもあるわけで、血筋の話に関してはどうも座りが悪いです。「怖い」と言っていた父がなぜか最後は優しくなってるのもよくわかりません。

現在の奏と子供時代の奏をシームレスに映すシーンなどは良いです。この演出はいつの間にか過去の犬鳴村に迷い込む奏とも通じているし、家の前に置き去りにされていたという祖母が、実は奏が届けた赤ん坊だった、という時空の捻れも面白い。ただホラーとしてどうかと言われれば明らかに物足りないです。奏の担当だった少年のリョウちゃんが、出奔した村の生き残りの子供、というのも実にわかりやすく説明していて逆に拍子抜けだし、奏がなぜか最後に犬化するというのが取って付けたようでどうにも解せません。かつてのJホラーの旗手に過度の期待をしすぎたのだろうか、という点で中田秀夫の『貞子』をも思い出してしまいます。ツラい。ただ、エンドロールで本当の現地の映像をドローンで撮ったらしき映像が流れるのだけは少しゾッとします。しますが、それが本作を観たからなのか、現実の映像だと気付いたからなのか、もはやよくわからないのです。

スポンサーサイト



トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1657-34bf363e
トラックバック
back-to-top