FC2ブログ
2020
01.29

犯人を挙げろ!チキンも揚げろ!『エクストリーム・ジョブ』感想。

extreme_job
Extreme Job / 2019年 韓国 / 監督:イ・ビョンホン

あらすじ
いらっしゃいませー!



ヘマばかりで冴えない麻薬捜査班の面々は、警察のなかでも厄介者扱い。そんななか、国際的な麻薬犯罪組織の情報を入手したコ班長は組織のアジトを監視するため、目の前にあるチキン屋を買い取って部下の4人と共にチキン屋をオープン。しかしこの店が大繁盛して、捜査どころではなくなってしまい……。チキン屋になった刑事たちのポリス・コメディ。

潜入捜査のはずが隠れ蓑のチキン店が大繁盛しちゃうという韓国発のコメディです。コ班長、チャン刑事、マ刑事、ヨンホ、ジェフンの麻薬捜査班の5人は、莫大な損害を出しながら小者を捕まえるのがやっとで、警察内でも肩身が狭くあわや解散という危機。そんななかデカい麻薬取引の情報が入って、監視のために買い取ったフライドチキン店から組織アジトを見張る5人。しかし怪しまれないために営業したチキン屋が大人気に。続けるべきは捜査か、チキン屋か……って、もう爆笑!そして痛快!刑事としては無様なのにチキン屋としては生き生きと輝いちゃうという逆転の構図があまりにも愉快で、個性的でキャラ立ちすぎの麻薬捜査班の面々が面白すぎます。それでいて警察ものとしての見所もあり。驚きのラストまで最高です。

リュ・スンヨンの演じるコ班長はチームのリーダーとして一行を率いるものの、一見硬派なのにプライド0なところが愉快。『犯罪都市』チン・ソンギュの演じるマ刑事は班の金を使い込む適当男ですが、絶対味覚という思いがけない特技が発覚。あと顔も髪型もなんか面白いです。イ・ハニの演じるチャン刑事は女性ながら一番強気なメンバーですが、意外にもツンデレ極まる一面も。『コンフィデンシャル 共助』イ・ドンフィの演じるヨンホはひたすら割りを食い、コンミョンの演じるジェフンはひたすら実直バカ。そんな麻薬捜査班の面々が最高に愛しくなってきます。また彼らのターゲット、マフィアのボスであるイ・ムベ役の『悪女 AKUJO』シン・ハギュンが、危険な雰囲気で物語を引き締めます。

監督の名前がイ・ビョンホンなので「えっ!」と驚きますが、あの役者とは別人ですね。アクションはもうちょいカット割らずに観たかったとも思いますが、コメディ演出のキレの良さは抜群。麻薬捜査班をバカにする偉そうな強行班への溜飲の下げ方も上手いし、チキン屋に絡めたエピソードがどれも楽しすぎ。そして覚悟はしてましたが、観終わったあと案の定チキンが食べたくなります。なんだあれ美味そうすぎる。水原カルビ味チキンはどこで食べられますか?

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭の麻薬捜査班がものすごい無様で、なぜジャンキー一人捕まえるのにとんでもない玉突き事故が起こるのか、しかも捕まえたのは町バスと、のっけから笑わせてきます。署長にどやされ、強行班にバカにされ、さぞかし屈辱かと思いきや、強行班の食事にあっさり付いていくコ班長。いやあんた何やってんすか!黙っていればいぶし銀なのに、情報くれた後輩を先輩と呼ぶし三顧の礼までするしでプライドのなさがスゴい。万年班長の旦那に奥さんは「班長」という言葉だけで発狂するし、娘にはたかられるしでいいとこなしのコ班長。他のメンバーも変なのばかりで、チャン刑事はすぐキレるし、ジェフンは素直だけどバカだし、マ刑事は不敵な顔でしょうもないこと言うし、唯一ヨンホだけがまともで気の毒。それでも組織のアジトが目の前、しかも客としても来るというチキン屋が店を手放すというのでこれを購入。契約時に複雑な家庭環境設定を作ってしまったり、試しに作ったフライドチキンに個性が表れてたりと笑いますが、まさかのマ刑事の才能が爆裂、かくして刑事たちはチキン屋をやることに。

店を開けば客が来る、怪しまれないためには品を出すしかない、しかしこれが予想以上に美味かったために口コミで大人気に。一人だけ真面目に張り込みや尾行を続けるヨンホに対し、他の面々はホールを回し、チキンを揚げ、たまねぎを刻み、売上を計算するのだ……みたいに何か誇り高い感じで言い出してバカすぎます。「俺たちは刑事だ」と言いながら、問合せの電話には低姿勢で淀みなく店名を言うコ班長に、なんかこのままチキン屋の話で終わるんじゃないかという危機感さえ覚えます(笑うけど)。法外な値段をつけても、高級チキンでSNS映えすると、潰れるどころかますます繁盛、買ってきた他店の品を出しても売れる、さらには日本の観光コースにまで組み込まれるというのがいかにもありそうで愉快。いらっしゃいませー!パンパン!じゃないですよ。すっかりチキン店の親父に成り下がった(成り上がった?)コ班長、妻にバッグを買って帰ったらシャワー浴びるとか言われて戦慄です。本店再開時にはとうとうヨンホまでが「ごめんね~♪」みたいな歌で踊らされて仲間入りです。なんだあの歌。

それでもアジトに突入しようと、チキン屋から横並びで画面に向かってくる5人がカッコいい……!と思ったら対象が引っ越してて、それまでの努力(主にチキン屋の営業努力)が水の泡に。テレビでバラされて停職食らうわ、妻に退職金でやり直そうと言われるも退職金はたいたことがバレるわで、チキン・バブルもここまでかと思います。ここで組織のボスであるイ・ムベの手先が何も知らずにフランチャイズを持ちかけ、何も知らずに受けちゃうコ班長。チキンのタレに麻薬を隠して運び、チキンと相性のいいピザと組み合わせて拡大しようとするのはなかなかの策士だし、ここからのすれ違いも愉快ではあります。ただ、金の味を覚えてわりとマジでチキン店優先で辞表まで渡すコ班長にはちょっとモヤモヤするんですよ。支店の状況調査が捜査会議みたいになってるのには笑いますが、刑事かチキン屋かどっち付かずな感じがするんですよね。でも後から思えばこの一歩引いた立ち位置にすることで、刑事として走り出すのが際立つようになっています。それにコ班長は最後イ・ムベに店を台無しにされたことで怒るので、ちゃんとチキン屋のために戦ってました。そっちかい。

実はクライマックスに至るまでは、アクションらしいアクションは皆無なんですよ。チャン刑事だけはなんか蹴りが鋭そうというのはありましたが、冒頭も結局走るだけだったし、やるにしてもコミカルでギリギリな戦いなのかなーなんて思ってたわけです。だからこそ、拉致られたマ刑事が一人暴れまくりからの「柔道韓国代表だ!」にはアガります。そして強行班の後輩が「彼らなら心配ない」と言うところで、同じ警察なのに冷たい……いや待て……まさか?からの、実は皆クソ強い!というのには爆アガりで思わずガッツポーズですよ。それまではアクションが必要な局面がないし、なくても十分以上に面白いので気にならない。隠し方が上手いです。しかも鬱屈を溜めに溜めてからの爆発なのでそりゃもう痛快。「麻薬捜査班は麻薬で死に物狂いのやつらを相手にするから強い」というロジックも強引ながら納得させられちゃうし、チャンは元ムエタイチャンプ、ヨンホは元特殊部隊というバックボーンにもシビれます。ジェフンは野球部だから我慢強い、というところでちゃんと落とすのがコメディとしてエラいですよ。しかもラリって狂犬になってるから問題なし。チャンと組織の殺し屋という女性対決もお約束ながら燃えます。

そしてコ班長は12回刺されても生きてるゾンビのような男として伝説になってるんですね。妻が「ゾンビと呼ばれる」と言ったり、パンツにお守りを仕込むのも伏線だったわけです。コ班長は一度脱いだときにやけにいい体してるなあと印象付けるカットがあって、それが強さの説得力になってるのも上手い。ジェフンを庇って撃たれるのには熱いものがあるし、最後に本当にゾンビっぽい動きでイ・ムベに噛み付くのには笑います。散々コ班長たちをバカにして優位に立ってた強行班が、組織の奴らにボロクソにやられるとか、最後到着したら全て終わってる、というところで溜飲を下げるのも痛快。でも麻薬捜査班は強行班をバカにし返さないのがまた粋です(町バスで言われた分はスクールバスで返すけど)。しかもなんですか、チャン刑事がマ刑事を「顔しか取り柄がない」と言ってからの濃厚なブチューは。班長とヨンホがずっと「撃て」「撃て」とつぶやいてるのは爆笑です。とにかく見事な大団円、ラストに特進した5人が並んで、ものすっごいイイ笑顔を見せるのも爽やかで最高。そしてぜひうちの近所でも水原カルビ味チキンを売り出してほしいぞ。

スポンサーサイト



トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1644-47c5cb66
トラックバック
back-to-top