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2020
01.26

笑えて泣けるメタル魂!『ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!』感想。

Hevi_reissue
Hevi reissue / 2018年 フィンランド、ノルウェー / 監督:ユーソ・ラーティオ、ユッカ・ビドゥグレン

あらすじ
トナカイ粉砕!



フィンランドの田舎の村で、12年間ヘヴィメタルのコピーバンドを続けるトゥロたち4人は、ひょんなことから出会ったメタルフェス主催者にチャンスとばかりにオリジナル曲のテープを手渡す。彼らがフェスに出ると聞き喜ぶ村人たちに、バンドはパブにあるステージでライブを披露することになるが……。フィンランド発の音楽コメディ。

北欧と言えばメタル!ということで、フィンランドの田舎を舞台に巨大フェスを目指すメタルバンドを描いた音楽青春コメディです。25歳のトゥロたち幼なじみの4人が組むメタルバンドは、12年間もメンバー宅の半地下で練習を続けていたものの、ずっとコピー曲ばかりでオリジナルを作ったこともなく、しかも一度も人前で演奏をしたことがないライブ童貞。意を決した彼らはオリジナル曲の作成を試みて遂に完成、そこにたまたま現れたノルウェーの巨大メタルフェス主催者に無理やりテープを渡してフェス参加の連絡を待つことに。それまで彼らをバカにしていた村人も彼らを見直し、とうとうフェス前にライブを披露することになります。トナカイが闊歩するフィンランドの田舎でくすぶり、メタラーというだけで理不尽に蔑まれる彼らの悲しくもマヌケな日々に笑わせられ、やがてノルウェーのメタルフェスを目指す痛快なロードムービーになっていくのがたまりません。少しせつなく大いに爆笑。

バンドのジャンルは「終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル」!"トナカイ粉砕"が入ってるところに鬱屈した思いが感じられます。そしてようやく決まったバンド名は「インペイルド・レクタム(直腸陥没)」!ヨハンネス・ホロパイネンの演じるボーカルのトゥロは、見た目ワイルドなのに実は小心者で、普段は介護施設のスタッフ。ギターのロットヴォネンは家業のトナカイ解体場で働く速弾きの名手、ベースのパシはあらゆるメタルに精通する変人、ドラムのユンキは若干ぽっちゃりで前向きなムードメーカー。この長髪にライダースにメタルTに細身のパンツと完全メタルスタイルで田舎で浮きまくるトゥロたちが、果たしてフェスに出られるのか、というのが見もの。

フィンランドのヘヴィメタルバンド「ストラトヴァリウス」のラウリ・ポラーが音楽担当ということで楽曲もしっかりしてます。前半は勝手にドツボにハマるトゥロにやきもきして落ち着かなさもあるんだけど、細かい笑いを散りばめつつ、中盤からどんどんドライブが掛かっていくのが超愉快。大バカすぎる国境警備隊にもやられます。笑えて泣けて熱くなる、デスメタル・グラフィティです。

↓以下、ネタバレ含む。








トゥロたちは12年もやってるので演奏の腕はかなりのものですが、ロットヴォネンの家の半地下でライブもせずオリジナル曲も作らず、自分たちのポリシーであるメタルスタイルをホモとか髪切れとかけなされるツラい日々。なにせファーストショットがトナカイという田舎なので誰もメタルを理解してくれません。このままじゃいかんと12年目にしてようやくオリジナル作りを始めるも、コピーばかりだったから既存の曲に似たものしか作れない。ツラさを表す歌詞だけは皆が賛同するのがせつないです。でも文字通り「トナカイ粉砕」で自分たちのリズムを見つけ、悪魔の血ならぬトナカイの血でフェス主催者フランクにインパクト(と多大なる迷惑)を与えるという、意外とトナカイが役に立ってるのが笑えます。ユンキがフランクのトラックに激突して荷台に転がり込むのには、初めて劇場でブフォ!て吹き出しましたよ。

アホすぎるメンバーたちも愉快で笑いが絶えません。特にベースのパシ、むっちゃ音楽詳しいけど紹介が「変人」なだけに、ジャンル名長すぎだし、図書館でジャスティン・ビーバーのCDを求める女子に有無を言わさずメタルCDを貸すし、突然KISSばりのメイクで"クシュトラックス"を名乗るしでヤバさ爆発。ロットヴォネンはノリノリでトナカイ解体、その父親が指をなくして天然のメロリックサイン出せるのが凄い。なんかロカビリー的な音楽で人気らしいヨウニは見事なクソ野郎っぷりですが、そのヨウニが売り付けた廃車寸前のバンを悪魔的だー!と格安で買っちゃうし、そのバンを使ってスピード違反対策のスピードカメラで宣材写真を撮るとか、悲しすぎて笑います。

バンド名さえ決めてなかった彼らが果たしてフェスに出られるのか、というので引っ張りますが、正直前半はトゥロのウソがどんどん取り返しの付かないことになっていくのが落ち着かないです。フェスに出れると確信してるわけでもなさそうなのに、周囲の期待に応えなきゃというプレッシャーから引くに引けなくなっちゃうんですね。ヨウニが意中の女子ミーアに手を出そうとしてるのも黙って見ているしかできない。介護施設のオウラから聞いてライオンからエサを奪うことで自信を得ようとするものの、さすがにライオンはヤバいので代わりにグズリと対決するのが悲しくも笑えますが、グズリはイタチの仲間だけど肉食でかなり凶暴らしいので危ないからね!しかしそんな努力も空しく、初のライブで村人の前でゲロ爆流(ついでにユンキ炎上)です。フェスも断られるし、笑いながらも結構ヘヴィな状況なんですよ。しかもバンを取り返したユンキが不慮の事故(よりによってトナカイ)で、「また死んだか」とか言われてたのが本当に死んでしまうのには驚き。いつも前向きでトゥロを励ましていただけにこれはショック。パシのメイクが葬儀のときはちょっと泣いてる感じになってるのも地味にきます。

しかしこれでバンド解散かと思われたトゥロが、スピードカメラで撮った写真(意外とキマってる)のユンキを見てついに奮起、ドラムが叩けるという伏線を張っておいたオウラを拉致り、クソ野郎ヨウニに凄んでバンをパクってフェスに旅立つのが熱い。オウラはずっと尻丸出しだし(メタル聴いて安定、ヨウニの音楽で発狂に笑う)、パシは肩や腕の釘が刺さるせいか最後は鋲に変わってたりしますが、ユンキを棺桶ごと連れていくのには泣き笑いですよ。そしてその棺桶が、崖下に追い詰められたときに皆を導くように海にダイブするのも熱い。しかしメンバーたち以外で、ここにきてこんな大バカ投入するかという国境警備隊には腰抜かします。マッチョなマムの大佐の張り切り具合がイタいし、自称デルタフォースに明らかにヨボヨボ爺さんがいるし、キリストの晩餐のコスプレをテロリストと間違えるとか爆笑です。泳ぎ着いた先がマジでヴァルハラかと思ったらバイキングのコスプレだし(レゴラスまでいる)、でもその結果が船で会場まで行くというのが最高。

車盗んで死体を掘り出しテロ犯として追われ海をわたる、って確かにメタルっぽいのが痛快。なぜかこれが大々的に報道されてトゥロたちは一躍スターになるし、トゥロが応援に来たミーアについにキスする時にライオンの鳴き声が響くのも笑いながらも熱い(勝ったのはグズリだけど)。ついにインペイルド・レクタムのデビューライブ!しかもフェスで!と思いきや、まさかのゲロ放出再びにはドン引きしますが、それさえも演出(のふり)でデスボイスで叫び始めるトゥロ、それに続くメンバーたちにはこれまた泣き笑いですよ。ミーアの親父が「息子になるかもしれない男だ」と言うのには手のひら返しすぎて苦笑いですが、バイキングたちが警官隊を防ぐのが泣けるし、1曲しかないのが惜しいほどの堂々たるステージには燃えます。さすがに最後に逮捕されますが、それさえも伝説としての箔になるであろうインペイルド・レクタムにエールを送りたくなりますよ。いやあ面白かった。久々にメタルを聴きたくなりました。

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