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2020
01.09

救うために、勝つために。『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』感想。

hero_academy_2019
2019年 日本 / 監督:長崎健司

あらすじ
プルス・ウルトラ!in 南の島。



ヴィランたちが運ぶ怪しげな荷物、それをヒーローたちが追うという事案が発生する。一方、出久たち雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒たちは、学校の方針で那歩島へやって来て地元に根差したヒーロー活動を行っていた。しかしそこへ突如謎のヴィランたちが襲来する……。アニメ『僕のヒーローアカデミア』の劇場版第2弾。

堀越耕平によるコミックをアニメ化した『僕のヒーローアカデミア』が、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 2人の英雄』に続く劇場版として登場。人口の8割が「個性」と呼ばれる特集能力を持つ社会で、ヒーローを目指すデクこと緑谷出久ら雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒たち。今回彼らは「次世代ヒーロー育成プロジェクト」の一環として、日本の南方、那歩島へクラス全員で訪れ、インターンでも訓練でもなく実際のヒーロー活動をすることに。そんななか那歩島に上陸し島を破壊し始めた謎のヴィランたちに、A組生徒たちが立ち向かいます。前作に続き限定空間での話ですが、今作の特徴は通信手段を断たれてプロヒーローの加勢が絶望的ななか、自分たちだけで敵を倒そうとするというところ。そのためヒーローとしての行動がより切実に求められます。原作のテイストはそのままに、この一本でヒーローの矜持を描き切るのは熱い。

作者の堀越耕平が総監修とキャラクター原案、監督が長崎健司、脚本が黒田洋介、アニメ製作がボンズと、前作と同じ布陣が安心感ありますが、話も思った以上に練り込まれていて、前作を越えてやろうという気概が感じられます。特にアニメのエフェクトの限界へ挑戦するかのようなアクション表現は『ドラゴンボール超 ブロリー』に匹敵するほどパワフル。ゲストキャラとして登場する謎のヴィラン一味、ナイン役には井上芳雄、スライス役に今田美桜ら。キメラ役は『アナと雪の女王2』のオラフこと武内駿輔ですがオラフと全然違っててスゴい。このゲスト・ヴィランたちがとんでもない強さで、特にナインはある秘密によってほぼチートであり、そこがスリリングです。

雄英生だけでこなすという展開により、前作に比べて皆に見せ場があるという頑張りが見られて良いです。前作がデクとオールマイトの共闘だったので、今回デクと爆豪が中心となるのは必然ではあるでしょうが、それでも熱い。あとラストにとんでもない大ネタがあって度肝を抜かれます。え、それここで使っちゃっていいの?原作に影響ない?というレベル。でも原作ではむしろ使えないかもしれないですね。上手いと思います。

↓以下、ネタバレ含む。








前半は那歩島での雄英生たちのヒーロー活動。とは言ってもやってることはほぼ便利屋で、沖縄を思わせる南の島の呑気さも相まって何だかほのぼの。逆に言えばちょっとタルいんですが、生徒たちの日常を描くという側面もあるので、キャラが好きなら楽しいところではあるでしょう。また真幌と活真という島の姉弟が、序盤からデク&爆豪と絡んで二人の在り方を端的に見せつつ、ナインたちの目的にも関わっていくということで重要な役回り。この姉弟、何度逃げろと言われても逃げないのにはちょっとイラつくんですが、怖くてすくんじゃうほどまだ幼いということでもあるんですよね。活真はヒーローに憧れながらも個性がヒーロー向きじゃないと言いますが 、その回復系スキルはあまりないものだし、デクと爆豪を復活させるのにも非常に役立っており、対する姉の真幌の個性、幻を見せるというのは弟を救うための必死さになる、というようになかなかの上手い絡め方。

教師たちが不在で1年A組だけで話が進むので、生徒たちそれぞれの見せ場も増えています。尾白の尻尾攻撃や常闇のダークシャドウ辺りはかなりの戦力になってるし、瀬呂のテープ技はスパイダーマンばりにアグレッシブに。青山のヘソビームや峰田のもぎもぎも頑張ってるし、砂糖のキン肉マン的なアクション(顔も)や梅雨ちゃんのエキセントリックな活躍、芦戸の酸攻撃のえげつなさに障子のバックアップなどもイイ。ヤオモモの創造の力とスーツのエロさは凄まじいし、飯田のエンジンもここぞというところで爆走するし、轟は今回地味めかと思いきや最後は内から氷、という派手さで魅せてくれます(あとエンデヴァーが意外と親バカ)。単独ではなく誰かと組んで能力をさらに効果的に使う、というのも良くて、お茶子が自分と耳郎ちゃんを浮かせてデクに引かせるとか、切島が爆豪に繋ぐとか、ウェイ状態の上鳴を避雷針にして雷攻撃を防がせるなど、様々な工夫が凝らされています。

ヴィラン側の4人もなかなかの曲者。包帯で無機物を操るマミーは多勢相手にもひけをとらず、スライスは髪の毛カッターで広範囲に攻撃できるし、キメラは攻撃防御共に強すぎて倒せる気がしません。そしてナインは盾に雷と複数の個性を持つ超チート野郎。これらをどう攻略するかというのを、勢いだけでなく作戦を立ててロジカルに見せていくので、生徒だけで倒すことに違和感がないのはこれまた上手い。難点はヴィラン側の背景が弱すぎることですかね。目的が今一つぼんやりしてるし、死柄木との関係も何だか微妙。ナインの個性がオール・フォー・ワンと被るのもちょっとアレですが、まあそこはいいでしょう。とは言え今回のヴィランは見た目のインパクトと怒濤の強さ、居場所なき者が世界を求めるという動機だけで十分機能してるので良いです。

それほど強い相手だからこそ、デクが選ぶたった一つの方法しかない、というところに説得力が生まれます。デクと爆豪は徹底して正反対のキャラであり、原作でも二人の関係はたびたび言及されますが、助けて勝つと言うデクと、勝って助けると言う爆豪は根っこの部分は同じ。デクやオールマイトの秘密を図らずも共有していることもあり、この二人でしかできない対抗策でもありますが、これは『劇場版 ONE PIECE STAMPEDE』以上の大ネタ。そしてバトルシーンを凄まじいエフェクトの嵐で描くのがあまりに激しく、音はバックに音楽を流すだけというのがかえって壮絶。最後は元に戻り、ことが終わる前に気絶したから戻った、あるいは奇跡だ、というのはさすがに苦しいですが、そのままでは原作が終わってしまうのでやむなし。映画ならではの大仕掛けですね。

ヒーローとはなんぞや、というのを語りすぎるのは個人的にはやっぱり気になるんですが、前作で描いたオールマイトからデクへのスピリットの継承という点を、今回はデクから活真に受け継がせるのが熱い。デクがかつてオールマイトに言われた言葉「君はヒーローになれる」を活真に告げるのには、そりゃあ泣きます。ベタな熱さを突き詰めて工夫を重ねてこれでもかと放出することで、ヒーローとは人々を救う存在だというのを描いてみせる。正しく原作の拡張を成し遂げていて、やはり上手いなあと思わされるのです。

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