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2020
01.08

一人で速く、二人で強く。『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』感想。

Hit-and-Run_Squad
Hit-and-Run Squad / 2019年 韓国 / 監督:ハン・ジュ二

あらすじ
服が臭いのがたまに傷。



サーキットを経営する巨大企業の会長で元F1レーサーのチョン・ジェチョルと、警察庁長官との収賄事件を捜査していた内部調査課の刑事シヨン。しかし圧力により捜査は途絶、交通課のひき逃げ専門捜査班に異動させられてしまう。そんななかでシヨンは3カ月前に起きたひき逃げ事件の容疑者がジェチョルだと知り、洞察力に優れた同僚ミンジェと共に捜査を進めるが……。韓国発クライム・サスペンス。

巨大企業会長と警察庁長官の癒着を追う女性刑事と、ひき逃げ事件で天才的な推理を見せる若手警官の韓国ポリス・サスペンスです。警察署の地下にあるいかにも吹き溜まりのようなひき逃げ専門捜査班に左遷させられたシヨン。メンバーは妊婦のウ係長と頼りなさげな巡査のミンジェのみ。シヨンは異動後も元上司のジヒョン課長と収賄事件を追うものの、ターゲットである企業会長のジェチョルのクレイジーさと長官の圧力に苦戦します。そんななか天才的な洞察力でひき逃げ事件を捜査する同僚のミンジェもまた、ジェチョル会長をひき逃げ犯として迫っていく、というお話。タイトルから想像するようなスピード感はそこまで多くはないんですが、それでも公道で繰り広げられるカーチェイスの爆走感やクラッシュは実にスリリング。話には若干飛躍も見られますが、相容れないように見えたシヨンとミンジェが徐々に共闘していく様や、ミンジェの過去が明らかになっていく辺りは俄然面白く、ノワール強めな物語や個性的なキャラにも引き込まれます。

ウン・シヨン役はコン・ヒョジン、出演作を観たのは初かと思ったら『火山高』に出てました。クールで頑固、でも芯にある正義感が熱い。ソン・ミンジェ役は『毒戦 BELIEVER』『タクシー運転手 約束は海を越えて』など観るたびに強烈な印象を残すリュ・ジュンヨル、今作も巡査でありながら卓越した推理でひき逃げ犯を突き止めるという、一風変わった人物を演じて抜群の存在感。悪徳バイオレンス会長チョン・ジェチョル役のチョ・ジョンソクは、『EXIT イグジット』のビビりながらも心優しい青年とはうって変わり、かなり危ない役柄となっていて驚きます。

何となくもっとチーム感やバディ感のある話を想像してましたが意外とそうでもなく、むしろ個々がそれぞれ突っ走り、それが徐々に交わっていくというのが面白い。話運びが少し粗いのが惜しくはありますが、ミンジェの過去や父との関係、シヨンの選択など、人情ものも絡めたハードボイルドという感じで楽しめました。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭でドライブレコーダーに撮られる現金受け渡し現場の映像を手に入れるため、ジェチョルに迫るシヨンですが、まさかの左遷。彼氏のキ検事をも利用してジェチョルを追うものの、金と権力、さらには恐怖支配により企業を牛耳るジェチョルに辿り着けない。そんな彼女が異動先で出会うのが、優秀なのに平の順巡査というミンジェです。彼もまたひき逃げ犯と睨むジェチョルに迫るわけですが、シヨンはミンジェの才能に驚嘆しつつも一人で行動しようとし、共同で捜査しようとはしません。秘密裏に捜査を進める関係もあるでしょうが、どうも周りと距離を置いているきらいがあるんですね。しかしやがてミンジェやその養父らと一緒に食事をしたりして溝を埋めていくことで、彼女に新たな道が開けていきます。ミンジェもまたかつては暴走族でヤクの売人というとんでもないワルだったわけですが、自分のせいで死にかけ警察を引退した男が、自分を養子にすると言ってくれたことで救われます。一匹狼が人情に触れることで人間性を取り戻すという構造なんですね。

その反対にいるのがジェチョルで、彼もまた一匹狼ですが、反抗的な役員には暴力で脅しをかけ、権力で信号を止めさせて公道を爆走し、ミンジェの養父の乗る救急車に追突しても助けようともしない、と最後まで人間性を取り戻すことはありません。元トップレーサーで大企業の最高権力者、警察にも幅を利かせ金もたっぷりあるのに、それでも現状に満足しないという、力に取りつかれた人物である、というのがミンジェらとは対称的。ミーティングの場で役員に被せたヘルメットにドリルで穴を開けていくのなどは彼の狂気が爆発してて最高なんですが、吃音である理由なども含め、孤独な悪党としての盛り方が良いです。シヨンの元上司であるジヒョンも同様で、最初はクールでカッコいいのに、長官の後釜としてジェチョルと組み署長にまで登り詰め権力を手に入れます。腐敗した警察を正すために悪と組んだジヒョンが、腹心の部下だったシヨンに電話で決別され皆で昼食を食べようとするシーンは、彼女の孤独さを強調させるかのよう。ミンジェの上司のソニョン係長が、警察無線を傍受する者たちに語りかけて協力を得られるのとは逆ですね。

そんな対比があるだけに、ミンジェが過去の姿に戻りジェチョルの取り巻きをブチのめしていく豹変ぶりには、彼がそっち側に行ってしまうのか、といううすら寒ささえあります。鬼気迫る姿はシヨンが撃って止めなければいけなかったほど。とは言え、皆にいじられていたソン・ミンジェから、一直線に暴力的なキム・ミンジェに変身、というのにはアガりますよ。一度自分を落とした相手に、手錠を握り込んで攻撃して倒すのも熱い。そしてジェチョルとの公道チェイス、それまではパトカーの助手席やタクシー利用だったミンジェが、ここで初めて車を運転、しかも超スピードでの対決というのが燃えます。チェイスシーンはもうちょっとあってもよかったかな、とは思いますが、ミンジェとジェチョルの直接対決、シヨンとジヒョン署長との対峙など、クライマックスの展開も魅せてくれます。

会長にビビる関係者が刑務所に行くかと脅されたらあっさり自白しちゃうとか、長官がこれまたあっさり辞任するとか、養父を乗せた救急車がたまたまそこを通って事故るとか、強引なところも多いのが難点ですかね。キ検事がレースに参加するというのもスゴいですが、彼はシヨンに振り回されて気の毒なのでまあいいか。ジヒョンがジェチョルと組むに至る経緯、同期であるソニョン係長との確執などはもう少し掘り下げてほしかったかも。あと最後に刑務所のジェチョルがミンジェと同じタトゥーの女性と何やら話すという、続編を見越したおまけシーンもいらなかったとは思います。でも巨悪の事件とひき逃げ事件を結び付けていくストーリーや、ミンジェやウソンの心情の推移、『ワイルド・スピード』もかくやという高速チェイスなどは面白いですよ。警察を追われて田舎で暮らすミンジェの元にシヨンがやってきて復帰を促すラストも、思いの外爽やかで良かったです。

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