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2020
01.06

水と油と虫除け薬。『ゾンビプーラ』感想。

Zombiepura
Zombiepura / 2018年 シンガポール / 監督:ジェイセン・タン

あらすじ
ちなみにシンガプーラは猫。



陸軍予備兵士のカユは、やる気のないまま陸軍キャンプ地で訓練と警備任務に就く日々。そんな折、キャンプ地で正体不明のウィルスが発生し、兵士たちが凶暴なゾンビに変わっていく事態が勃発。カユは犬猿の仲である上司のリー軍曹、幼なじみの女性シャオリンと共に何とか脱出を試みるが……。シンガポール発のホラーコメディ。「のむコレ3」上映作品。

ゾンビだらけとなった陸軍のキャンプ地から脱出を目指す兵士たちの戦いを描いたシンガポールのゾンビ映画。ぐうたらの弱虫と揶揄されるカユは、何かと言うといびってくる天敵のリー軍曹に今日も文句タラタラ。しかし医療室に行って仮病でサボろうとしたところ、そこに運び込まれてきた急患が心配停止、と思いきや突然ゾンビ化。周りが次々と噛まれてゾンビ化していくなか、軍曹と二人閉じ込められたカユは脱出を図るが、というお話。ゾ~ンビ♪プ~ラ♪という強烈なインパクトのメインテーマに思わず笑いつつ、陸軍キャンプを舞台にしたというのがちょっと新鮮。ホラーコメディを謳っているだけにコミカルさもあるものの、後半はわりとシリアスなんですが、ぐうたら伍長と口だけ軍曹のダメコンビに一人気を吐くヒロインのサバイバルが愉快。色々仕込んだ伏線に工夫があって良いです。

タン・カユ役のアラリックは見た目はやられ役で、風貌はちょっと『アイアムアヒーロー』の英雄(原作の方)に似てるんですが、銃もまともに撃てないカユがどうサバイブしていくのかが見もの。口うるさい上司の軍曹役ベンジャミン・ヘンの、変に真面目すぎて融通が効かない感じとの水と油な組合せも面白い。またカユのお隣さんで幼なじみの女性シャオリン役のジョイ・ピン・ライが、なぜか一番体を張るという同情的なことに。この三人をメインに、閉じ込められた陸軍キャンプ内からの脱出がときに緩く、ときにスリリングに描かれます。

ゾンビが速い系なので走って追ってくるし、光にも音にも匂いにも反応する上に、タフな軍人が多いので結構手強いというのが特徴的。加えて追い詰められた人間の狂気も出てくるので大変です。単独のシンガポール映画ってひょっとしたら初めて観たかも。しかもゾンビですからね、インドのゾンビ映画『インド・オブ・ザ・デッド』を思い出します。粗さやくどさはあるし、もう少し捻りがほしい気もしなくもないですが、スリルもあってなかなかに熱いです。

↓以下、ネタバレ含む。








そこまで笑いが多いわけではないですが、キャラがコミカルなので前半はわりと笑いが多いです。シャオリンが登場時に周りに診察待ちの兵士たちがいるなかで、服をはだけて虫除け薬をブチュ~!と出して塗りたくるのをスローでかましたり、衛生兵が明らかにゾンビ化しそうな奴に人口呼吸(しかもマウス・トゥ・マウス)させられたり、捕らえたゾンビにライトを咥えさせ、その揺れる光で窓の向こうのゾンビ集団をおびき寄せて脱出など笑えます。「筋肉の記憶」によって国歌が流れるとゾンビ兵士たちの動きが止まるというのも面白い。あと色々と伏線が効いているんですよ。カユがやってたレスキューゲームの知識がサバイバルに活きるとか、先の「筋肉の記憶」でゾンビに障害物コースを走らせて距離を取るとか、逆に記憶に従って国旗を降ろそうとするがためにピンチに陥り、銃を草間に隠しておいたのに予想を裏切ってそれをまともに扱えなかったりもします。懸垂ができなかったカユがここぞというところで体を引き上げたり、軍曹が撃たれたと思ったら序盤で言及してたIDタグで弾が止まってたりなど、ベタながら忘れた頃にやってくれたりして、なかなかに練られているのが好感です。あと陸軍のスローガン多いな!

後半はシリアスに振るので笑いは少ないんですが、その分ゾンビものの定番的な要素が絡んできます。一点めは仲間が噛まれたらどうするか、というところ。シャオリンの母スージーが噛まれてから彼女を撃つまでの展開は、ちょっとウェットすぎるし長いというのはありますが、スージーに娘を託されたからこそカユが撃つことができたという成長にも繋げています。またスージーの死は、付き合わせた友人が自分のせいで噛まれたことをカユに再認識させ、軍曹が命令するばかりで何もできないと嘆くという、二人が反省するきっかけにもなります。これを経ているから、二人が倉庫で完全武装していくのには余計アガります。

二点めは極限状態の人間の危うさです。ゾンビより人間の方が怖いというのは定番ですが、それがカユのサボり仲間だったチュアさんだというのが独特。そこまで狂気に駆られるのも、妻子がいることを序盤で示し、ゾンビ化する前の噛まれた同僚を撃ち、逃げようとした車が追突、襲われたところを一人で切り抜け、そんななかシャオリンだけが噛まれないことへの逆恨みと家族の元に帰りたい焦りがある、というように、ちゃんと段階を経ているのが上手い。かわいそうではあるんだけど、人間性を捨て去り利己的な行動に走ったがために悲惨な最期を遂げるというのもしっかりしてます。まあ一番のクズ野郎は真っ先に逃げるドクターの大尉ですけど。

なぜゾンビが発生したかという説明は特にないし、国歌流し作戦は何度も曲が流れたり止まったりちょっと長いし、シャオリンがロッカーにぶつかっただけであんな酷い傷になるか?など気になる点はあります。虫除けで匂いが消えてゾンビに襲われないというのもどんだけ匂いに敏感なんだとは思うし、若干強引な泣かせもあったりしますかね。とは言え「狂犬の子が猫では困る」と父に言われた軍曹の奮起、序盤とは別人のように逞しくなるカユ、一番大変な目に逢うシャオリンの負けん気、そして三人が力を合わせてのラストバトルと、心情の流れ的にも結構自然でよくできています。閉鎖空間が多く軍隊のわりには銃撃も少ないというスケールの小ささが少々食い足りなかったり、低予算ゆえの安っぽさもあるものの、それらを工夫と熱意でカバーしていて良かったです。

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