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2020
01.04

行くぜ相棒、新たな空へ。『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』感想。

How_to_Train_Your_Dragon_3
How to Train Your Dragon: The Hidden World / 2019年 アメリカ / 監督:ディーン・デュボア

あらすじ
引っ越しだ!



人間とドラゴンが共存するバーク島の若き長ヒックは、相棒であるドラゴンのトゥースや仲間たちと平和に暮らしていたが、囚われたドラゴンを救い続けたため島が飽和状態に。そこでヒックはドラゴンの故郷と言われる伝説の聖地を探し、そこに住民ごと移り住むことにするが……。クレシッダ・コーウェルの同名児童文学を原作とした『ヒックとドラゴン』の劇場版第3弾。

ドラゴンと人間が敵同士だった頃に出会った、ひ弱なバイキングの少年ヒックと傷付いたドラゴンのトゥース。そんな両者の絆を描いたドリームワークス製アニメ『ヒックとドラゴン』、その後成長したヒックがトゥースと共にドラゴン狩りの悪党たちと戦う『ヒックとドラゴン2』を経ての、劇場版としてはシリーズ第3弾。前作が一般公開されず、1作目も劇場で観れなかったので、ついに劇場で鑑賞できたことがまず喜ばしいです。住みかであるバーク島が人とドラゴンで手狭になり、新天地を探すことにしたヒックたち。しかしかつてトゥースの種族ナイト・フューリーを絶滅させた最凶のドラゴンハンター、グリメルがヒックたちを付け狙います。人間とドラゴンという「相容れない者たちの共存」というシリーズで描いてきたテーマをさらに発展させ、その先の「互いを尊重し自立する」というところまで踏み込んでみせるのはお見事。美麗すぎる美術に多様なドラゴン造形など見た目も楽しく、空中アクションのスリル、ヒックとトゥースのバディ感、話運びの上手さなども素晴らしくて、これはシリーズ完結編として完璧と言っていいでしょう。

ヒック役の『ファンボーイズ』ジェイ・バルチェル、アスティ役のドラマ『アグリー・ベティ』アメリカ・フェレーラらは続投し、一族を引っ張る存在として成長した姿を見せます。前作から登場したヒックの母ヴァルカ役の『オーシャンズ8』ケイト・ブランシェット、父ストイック役の『エンド・オブ・ステイツ』ジェラルド・バトラーも重しとなってます。ドラゴンキラーのグリメル役は『グランド・ブダペスト・ホテル』F・マーレイ・エイブラハム、余裕かました強敵としてヒックたちの前に立ちはだかります。日本語吹き替えでは松重豊が演じてますが、見た目が似てるな!ちなみに原語での本来の名前はヒックはHiccup、トゥースはToothless(歯なし)などほとんど皆違うんですが、そこはまあローカライズということで。監督が前2作に続き『リロ&スティッチ』ディーン・デュボアということで、一貫性もバッチリ。

様々な見せ方で工夫のある飛空シーンは相変わらず最高の飛翔感で、スラップスティックを絡めたアクションも気持ち良いです。仲間たちのキャラの立ち方も抜群で、特に今回は双子の女性の方、ラフがスゴい。メスの同種族"ライト・フューリー"の登場にはしゃぐトゥースは可愛すぎて萌えるし、頼りなさが頼もしさに変わるヒックには感慨深さがあります。ヒックとトゥースが共に成長するのが良くて、ラストは爆涙。最初に5分ほど前2作のあらすじがあるので、シリーズ初見でもわかると思います。エンドロールのバイキングも楽しいぞ。

↓以下、ネタバレ含む。








ヒックたちバーク島の人々は、敵対していたドラゴンと1作目でわかりあって共に暮らす道を選び、前作である2作目でそれを実現しています。と同時に、前作ではハンターたちがドラゴンを捕らえ使役するという、バーク島以外ではいまだドラゴンは敵、と言うより隷属するものとして描かれていました。つまり世界はいまだドラゴンを異質なものとしており、受け入れる土壌ができてはいない、ということです。ヒックたちはこれに異を唱え、囚われたドラゴンたちを解放するというゲリラ的活動を行います。前作でドラゴン・ハンターとして登場しながら今やバーク島の一員となったエレットのような者もいるものの、現状は無理やり助けて自分たちの島に匿うしかないんですね。他者の意識をどう改革するか、という点では実は改善はされていないわけです。しかし長い時間が積み重なっているためにそれを覆すのは難しい、というのが現状。これはさらに長い時間をかけていくしかないわけですが、相手が実力行使でくるためにそれも難しい。ヒックが仲間たち全員とドラゴンと共に移住しようとするのにはそういう背景があるわけです(手狭になったのも大きいけど)。

だから「バークは場所ではなく人だ」と言って移住を決断するヒックには、ドラゴンたちをも家族と見なした上での責任感が見られます。それこそ亡き父ストイックの跡を継いだ長としての自覚があって、その成長ぶりには泣かされますよ。七代住んでた島を皆が離れるのもそれだけヒックの人望が厚いということであろうし、そのヒックの先進的な考えに賛同する島民もまた、かつてのバイキングとは違う意識改革が成されているということで気持ちがいい。ヒックは技術的にも新たな改善を重ねていて、尾翼の欠けたトゥースが飛べるよう人口の部品を作ったりしてましたが、さらにドラゴンの鱗を使った耐火スーツとか、空を飛ぶことでドラゴンとの連携も図れるジャンプスーツ、あとこれもドラゴンの生体に関係してるのか炎の剣まで編み出す知恵者でもあるのが新時代のバイキングという感じで良いです。母ヴァルカがヒックが長であることをちゃんと立てつつ母親らしい思いやりを見せたり、回想シーンで父ストイックの言葉が本質として活かされているのもイイ(あとちっこいヒックが超カワイイ)。

仲間たちもますますキャラが立っています。双子の男の方タフはヒゲが生えにくいのか髪の毛を伸ばしてヒゲっぽくし、そのヒゲ髪の中で泣かせようとするという変な趣味が。フィッシュは母性に目覚めて戦闘中もドラゴンの赤ちゃんの育児に夢中だし、自尊心と根拠のない自信がウザいスノットはヒックの母ヴァルカに夢中という熟女好きに。あと双子のもう一人ラフがビッチすぎてスゴい。捕虜なのにグリメルがもて余すほどうるさくて解放されるし「あたしは後ろを振り返らない女よ」にはシビれます(バカすぎて)。でもタフに押されて生まれたから脳が減ったとか言うので、自覚はあるようで憎めません。アスティはむっちゃ可愛いし強いしで言うことなし。ゲップにヒックとの結婚を迫られますが、それが根本的な解決にはならないとはね除けるようにしっかり自分を持っており、それでいてヒックを心から信頼しているのも魅力的。一方で敵役のグリメルは、フューリーを殺し続けて絶滅に追い込んだ男ですが、子供の頃寝ているナイト・フューリーを殺したことで英雄扱いされたがために罪悪感がないんですね。バーク島に乗り込んでヒックを襲う大胆さや、自信ありげな態度を崩さない余裕ある雰囲気、毒や麻酔を使った攻撃など、大変胸糞悪いキャラなのが良いです。ライトを囮にしますが、あれは操ってたわけではなく行動を読んでトゥースを捕らえようとしたのであろうし、かなりのキレ者でもありますね。

そしてドラゴンのトゥース、今回はナイト・フューリーのメスである通称ライト・フューリーが現れて恋に落ちるわけですが、色んな生物の求愛行動を反映したダンスを練習するのがいじらしいし、求愛中に「どうすればいい?」という感じでヒックを見ちゃうのが可愛すぎます。一人では飛べなかったのについに人工尾翼を着けることに同意してライトに付いていこうとする辺り、愛ですねえ。前作でドラゴンの王の片鱗を見せましたが、今回はガメラのような火球を吐いたり、電撃まで出したりとかなりの進歩。聖地で響かせた鳴き声などはまるでゴジラのようで、確かな王の風格が見られます。ライト・フューリーの方は火球のようなものを吐いた直後に姿を消すのでテレポートでもできるのかと思いましたが、あれは一瞬ステルス状態になるってことなんでしょうね。この2頭の求愛ダンスから飛行する一連のシーンは、ちょっと長いけどとても良いです。今回は新しいドラゴンはそれほど出ない、いや出てるけど前作の超巨大ドラゴンがインパクトでかすぎたので目立たないんですが、それでもゲップが不吉だと騒ぐホブゴブラーがネズミ算式に増えていくのが不気味で愉快だし、敵方の毒を吐くドラゴンなどは見た目も凶悪。

群れで飛ぶ、雲の上を飛ぶ、超スピード、きりもみ、積乱雲に突っ込む、など様々な飛行シーンはどれも飛翔感に満ちていて素晴らしいです。また映像が本当に美しくて、序盤のバーク島の色とりどりで立体的な建造物の数々や、崖から見下ろす敵艦隊の偉容など多くの見所があります。ドラゴンがあれだけ大量に飛んでいると腐海の蟲みたいにも見えてきて圧倒的。そしてドラゴンの聖地、海に落ちていく滝の壮観さや、広大な鍾乳洞の迫力、天空のように青く輝く地下の情景にストームフライが光輝いたり、赤く輝く奥地の絶景まで、目を見張る美しさに泣きそうになります。シリーズ通してのビジュアルコンサルタントを務めているのが『ブレードランナー2049』などの名撮影監督ロジャー・ディーキンスだというのを知って、それも納得。

世界の果てにはドラゴンが生まれ暮らす聖なる地がある、という伝承が真実であることを知り、そこでトゥースが王としてドラゴンたちを従えるのを見たヒック。それはヒックの知らなかった本来のトゥースの姿です。トゥースのことを思えば故郷に返すべき、しかし別れはツラいという葛藤。そんななかグリメルに拉致されたトゥースたちを救うため、ヒックたちは賭けとも言うべき潜入作戦に出ます。そしてヒックを救うため、グリメルと共に空から落ちていくヒック。そんなヒックを彼と交流のないライト・フューリーが救ったのは、パートナーを命懸けで救ってくれたからでしょう。新たにドラゴンの信頼を得たヒックですが、しかしこの戦いで他の人間たちがドラゴンと共存できる段階でないこともまた明らかになったのです。そしてついに訪れるドラゴンたちとの別れ。無言で鞍を外していくバイキングたち。トゥースに出会ったときに目をそらしながら手を鼻先に付けたのとは逆に、鼻先に置いた手を目をそらしながら離していくヒック。それは共存できなかった悲しさであり、かけがえのない相棒を失う寂しさですが、それでも争い合った歴史を覆すだけの信頼をこれから育んでいこうという、未来へ希望を繋いだ別れでもあります。

バークの人々は結果的に新たに快適な故郷を見つけ、ヒックはアスティと結婚することになります。この地に足を付けた選択は、ヒックの青春時代の終わりでもあるでしょう。しかし物語はそれで終わりません。アスティと二人の子供と共に海に出たヒックは、同じくライト・フューリーや子供たちと佇むトゥースに再会します。トゥースが最初ヒックに気付かないので野生に還ってしまったのかとヒヤヒヤしますが、あれはヒゲのせいかな?(ヒゲヒックがジェイク・ギレンホールにそっくり!)共に片足・片尾翼を失いながら、共に成長し、貫禄まで備えたヒックとトゥースには感無量。そして今度はヒックの子供たちがトゥースの鼻先に手を触れることで、新たな関係は受け継がれていくのです。原題は「How to Train Your Dragon」ですが、必要なのは訓練(Train)ではなく信頼であるという、三部作の完結編として見事な着地に喝采を送りたいです。

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