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2019
12.19

宇宙に広がるひつじの輪!『ひつじのショーン UFOフィーバー!』感想。

Shaun_the_Sheep_Movie_Farmageddon
Shaun the Sheep Movie: Farmageddon / 2019年 イギリス、フランス / 監督:リチャード・フェラン、ウィル・ベッカー

あらすじ
牧場主、荒稼ぎ。



イギリスの片田舎の牧場で暮らすひつじのショーンたちの前に現れたのは、ある日突然現れたUFOに乗っていた、まだ幼いルーラという宇宙人。街はUFO騒ぎにフィーバーし、牧場主も宇宙を題材にしたテーマパークを作ろうと目論むなか、ショーンたちは仲良くなったルーラを家に帰してあげようとするが……。『ひつじのショーン』劇場版長編の第2弾。

イギリスのアードマン・アニメーションズによるストップモーション・アニメ『ウォレスとグルミット』から派生した『ひつじのショーン』の長編に第2弾が登場。前作の2015年『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』が素晴らしい出来だったんですが、2016年の中編『ひつじのショーン いたずらラマがやってきた!』を挟みつつ、ついに念願の長編です。突如飛来した未確認飛行物体の目撃情報に街がUFOフィーバーに沸くなか、ショーンたちの元に偶然現れた宇宙人ルーラ。その不思議な能力に驚きながらも一緒に遊び回るショーンたち、この機に乗じてアミューズメントパークを作って一儲けしようと企む牧場主、そしてあらゆる面倒ごとを押し付けられる牧羊犬ビッツァー。やがて騒ぎがどんどん大きくなっていくなか、ショーンはルーラを自分の星に帰すため奮闘を始めます。

むっちゃ楽しい!そもそもが台詞のない作りなのに、さらに言葉の通じない異星人との交流を描いて、それを成立させちゃう、しかも羊が!という脚本と演出の凄まじさには驚嘆します。ストップモーション・アニメとしてのレベルは言うまでもなくハイクオリティ。スーパーでの大騒動などはその細かさに感心します。新キャラのルーラもとても可愛らしくてイイ。ちなみにルーラは女の子なんですね。さらに宇宙人をテーマにしたということで様々なSF映画へのオマージュが盛り沢山で、映画好きならニヤリとするシーンは一度や二度じゃ効きません。もちろん老若男女を問わない愉快な笑いが溢れてるし、ルーラを追うエージェントによる追跡劇もあったりしてスリルとアドベンチャーも豊富。

調子に乗っちゃう牧場主、相変わらず不憫なビッツァーを始め、おなじみのティミーにシャーリー、いたずらブタに牛にニワトリ、さらにはゲストキャラに至るまで、みんなに見せ場があるのがイイ。そして最後は爽やかな涙。製作に3年もかかったというだけあり、SF、コメディ、アクション、アドベンチャーと多ジャンルを混ぜ込んで、でもしっかり『ひつじのショーン』。超面白いです。

↓以下、ネタバレ含む。








『ひつじのショーン』での宇宙人ネタは実は初めてではなくて、テレビシリーズの「なぞの訪問者」「なぞの訪問者②」というエピソードでUFOに乗った宇宙人と交流してます。そちらはひとつ目の異形の宇宙人でこれも愉快なんですが、本作の宇宙人ルーラはむしろ犬っぽいデザインで親しみやすさが増してますね。垂れ耳かと思いきや触手だったりするのも心地よい裏切り。念動力でものを動かしたり、甘いもので酔っ払いのようになったり、ゲップが強力だったり、音や声をそのまま繰り返すものまねが得意だったりと個性的。その特性が大騒動を巻き起こしたり、ものまねを使って打開する局面もあったりとよく練られています。まだ子供なので後先考えず遊んでしまうんですが、そんなところがショーンたちと通じ合ってイエーイ!となります。地球にやってきたのも親の目を盗んで宇宙船で遊んでたらたまたま動いてしまったわけで、結構なおてんば。

このルーラ、言葉は通じないんですが、元々人間の台詞はない(人の言葉もわざとボカしてある)というシリーズなのでそれほど困りはしません。でも本作ではあえて何のことかわかるようにしてる言葉が4つあって、「ゾンゾン(だっけ?)」は宇宙船のことだし、文脈からもパパとママはわかります。で、もうひとつが「おうち」ですね。つまり「HOME」です。とくればこれはショーン版の『E.T.』なわけですが、通じる言葉があるというのはシリーズとしては画期的と言うか、ちょっと間違うと世界観を壊しかねないところ。でも逆に、言葉により「通じ合う」ことをさらに強調できていると感じるバランスが良いです。

SF映画のオマージュはどれもわかりやすくて楽しいです。『E.T.』は全体的に踏襲してる感じですが、月の看板をバックに飛んだりルーラが能力を使うとき光ったりなど特に多いです。『サイン』のようなミステリーサークル、そこに『2001年宇宙の旅』の「ツァラツストラはかく語りき」が鳴り響くのには大げさすぎて笑うし、『メン・イン・ブラック』のようなエージェント・レッドがボタンを押すときの音が『未知との遭遇』のあの5つの音だったり、あと彼女の吹く口笛のメロディは『X-FILE』だったような?クライマックスでエージェント・レッドが乗り込む車が『トランスフォーマー』のように変形したかと思ったら、その形は『ロボコップ』の"ED-209"みたいというのも楽しい。牧場主がトチ狂って建設(作るのは全部ビッツァーだけど)を始めるテーマパークが「FARMAGEDDON(ファーマゲドン」という、「FARM(牧場)」と『アルマゲドン』を掛けたネーミングなのも愉快です。

今回(と言うか毎回だけど)不憫な目に遭うビッツァー、牧場主には仕事を押し付けられ、ショーンたちのことは何でも禁止してでも管理しなければならず、さらに糊でくっつきまくったり、宇宙人に間違われたりと散々ですが(本当はショーンとは仲良しです)、今作では同じく不憫仲間としてエージェント・レッドのアシスタントであるロボットの"マギンズ"が登場。これまた『ショート・サーキット』を彷彿とさせるロボですが、必死に働いてるのにあまり気にかけてももらえないというのが健気と言うか、表情とかは全然ないけど感情が出ていてカワイイ。笑いどころは多々ありますが、ルーラの冷凍ピザでヘアカットとか、宇宙ステーションにUFOで傷を付けるという車持ちなら発狂のシーンとか、黄色い防護服の"ハズマッツ"の皆さんがマヌケなのも笑えます。それでオープンするんかい!というファーマゲドンのサギっぷりが、本当にUFOが現れたことで観客大興奮!という捻りも上手くハマっていて楽しいです。

ショーンがルーラの母星に信号を送るためにレッドと争いながらも高い場所を目指していくのはスリリング。レッドは前作『バック・トゥ・ザ・ホーム』の捕獲人に当たる悪役かと最初は思うんですが、彼女が宇宙人探知省で働くのは実は幼い頃に出会った二人の宇宙人にもう一度会いたいから、というのがわかってくるんですね。全く笑わず、常に険しい顔をしていたエージェント・レッドが、ついにやってきたルーラの両親に邂逅したとき、自身の描いた絵を掲げながら少女のような顔で見上げるのにはグッときます。そしてルーラとの別れにあのいたずら好きのショーンが涙ぐむのにはこっちだって泣きますよ。と言うか『E.T.』で号泣した人がこれで泣かずにいられるかってもんです。ショーンは子供であるルーラと遊びながらもそれを見守るような行動をするという、お兄ちゃんとしての役割を果たすんですね。しかも母親がそばにいるティミーとは違い、ルーラは遠い異星に一人きり。それだけに情の移り方も段違いだし、ショーンがちょっとだけ成長するような感じもあって微笑ましいです。

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