FC2ブログ
2019
12.10

海を越えたスイーパー!『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』感想。

city_hunter
Nicky Larson et le parfum de Cupidon / 2018年 フランス / 監督:フィリップ・ラショー

あらすじ
邦題はご愛嬌です。



ボディガードなどの依頼を請け負う凄腕のスイーパー、シティーハンターことリョウと相棒のカオリの元に、魅惑の香水「キューピッドの香水」をガードするという依頼が舞い込む。しかし何者かに香水を奪われてしまったリョウたち。48時間以内に取り戻さなければ大変なことになるため奔走する二人だったが……。日本のコミック『シティーハンター』をフランスで実写映画化。

1980年代に連載されアニメ化もされた北条司の漫画『シティーハンター』を、なんとフランスで実写映画化したというアクション・コメディ。探偵やボディガードを生業とするスイーパー(始末屋)で「シティーハンター」と呼ばれるリョウ。そんなリョウと相棒のカオリの元に新たにきた依頼は、香りをかいだ者を虜にする「キューピッドの香水」をガードするというもの。しかし世界を混乱に陥れかねないその香水を、リョウは目の前で奪われてしまう。かくしてリョウたちは犯人を追うことに、というお話。『シティーハンター』実写版と言えばかつてジャッキー・チェン主演で、シティーハンターなのになぜか最後は「ストⅡ」になるという珍作がありましたが、本作はスゴい!もう完璧にシティーハンター!日本人でも新宿でもないですが全く気にならない、どころか原作もアニメ版も取り込みながら実写として成り立たせ、ギャグもシリアスもアクションも魅せまくる見事なバランス。予想を遥かに越える面白さにはオールドファンも納得です。

監督・脚本、さらにリョウ役で主演も務めるのはフィリップ・ラショー。この人は大の原作ファンで、原作者の北条司本人に直接プレゼンして今回の映画化の了承を得たらしく、とにかく原作愛が凄い。リスペクトがビンビンきます。フィリップ・ラショーはコメディ映画『真夜中のパリでヒャッハー!』『世界の果てまでヒャッハー!』を観た限りではとても冴羽獠になるとは思えないんですが、本作を見ると彼以外あり得ないんじゃないかというほど、シリアスもギャグもハマってます。槇村香に当たるカオリ役は『世界の果てまでヒャッハー!』エロディ・フォンタンで、これまたカオリにしか見えない成りきり方。カオリに惚れてしまうパンチョ役のタレク・ブダリ、惚れ薬を悪用しようとするスキッピー役のジュリアン・アルッティは共に『ヒャッハー!』シリーズでもラショーと共演。また日本語吹き替えとしてリョウ役を山寺宏一、カオリ役を沢城みゆきが担当し、オリジナルキャストの神谷明と伊倉一恵はスペシャルゲストとして登場するのもニクい。

今年始めにアニメ版『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』で現代の冴羽獠を堪能したばかりなだけに本作を観る前は不安もありましたが、本当にシティーハンターなんですよ。獠も香も海坊主もイメージそのまま。槇村まで出てくるのには泣きますよ。笑いやお色気はシラける前に切り替わるし、アクションは思いの外凄いことやってるし、話も意外なほど良く練られています。それでいて今の時代には合いにくい"もっこり"を展開の上手さで抑えながら笑いに変えている。原作知らなくても楽しめるようにできてるし、これはもう脱帽です。

↓以下、ネタバレ含む。







冒頭いきなりリョウと海坊主がバトルするという意表を突いた導入に驚きます。しかも手術のためまっぱで横たわるモッコリーノ市長(声はオリジナル獠の神谷明!)を挟んでという、ここで早くもギャグとアクションを融合させるというなかなかの高等テク。しかも大事なところは原作でおなじみカラスのマークで隠すというフルチンアクションにいきなり笑います。リョウの説明やカオリとの関係も台詞のなかでさりげなく説明されるので一見さんでも大丈夫。香がマジ香だし、海坊主もファルコンだし、冴子はちょっと惜しいけどまあいいでしょう。リョウも最初は衣装にコスプレ感がなくもないんですが馴染んでくるし、この人がリョウであるとしっかり印象付けた後はフォーマルも戦闘服も着こなしたりします。掲示板に「XYZ」もちゃんと再現、漫画的誇張である100tハンマーは普通のハンマーに置き換えつつも夢の中では実現しているという念の入れよう。音楽もどことなく80年代を意識してますね。

懸念だったのは、実写では生々しいし今の時代セクハラになりかねない"もっこり"の扱いですが、序盤こそライフルのスコープでジョギング女性を覗くという犯罪チックな描写はあるものの、リョウが男に惚れることでえげつないエロシーンにはならない、さらにそれを笑いに転化しているというのは上手い。そもそもラショー作品には下ネタもあるので、下着姿の女性がわんさか出てきたりと原作よりそこは強めではありますが、眉をひそめるほどでなくあくまで"お色気"という感じ。あのリョウが女子の着替えの中でそちらを見もせずに座り込むなんてあり得なくて衝撃ですよ。尻を脱毛される海坊主とか、モッコリーノ(酷い名前だな!)の写真をシェアするシスターとか、あと銃を向けられたミニスカ看護士の裾がまくれるのを何度も繰り返すのがしつこくて好き。スキッピーとかパンチョとかは完全にギャグ要員でシティーハンター関係ないんですが、パンチョはウザいけどエレベーターに挟まれたカオリを助けたり意外と役立ったりするし、惚れ薬効果にいち早く気付いたスキッピーさんがモデルのジェシカ・フォックスとの情事(?)を中継しちゃったり、家族の秘密を全部バラしちゃったりするのが笑えるので許せます(ちなみにスキッピーの奥さんの声がオリジナル香の伊倉一恵)。あとジェシカ役のパメラ・アンダーソン、あのセクシーさで50過ぎというのがスゴい。

余分にも思えるギャグシーンがちゃんと面白く感じられるのは、ギャグがタルくなりそうになるとアクションやシリアスが入ってくるというバランスの良さがあるからですね。脚本がよく練られています。ベッドを引きずって爆走するカーチェイスでは、火花を散らしながら引っ張られるベッドが結構スリルで、かと思えば衝突した車から追っ手がスッ飛んで行くのをスローで映しながら『トップガン』の「Take My Breath Away 愛は吐息のように」を流すとか、なんでだよと思いながらも爆笑。キューピッドの香水が惚れ薬であるというのには最初はふざけすぎなようにも感じましたが、これには洗脳薬という恐ろしい一面を持つシリアスさがあるし、動物にも効いちゃうためにカモの群れが付いてきちゃうのがカワイかったり、惚れ薬で無双なスキッピーさんが最後にやっぱり良くないと良心を見せたり、単なるマクガフィンではないというのが面白い。薬が効いたら目が赤くなるというのも親切設計。パンチョがドアを蹴り開けようとして足だけ出ちゃうという笑いが実は敵の気を引くのに役立ってたり、犬が投げたものを拾いに行くというギャグが敵ボスの吹っ飛ぶ原因となるという伏線も効いています。首だけの相手に人工呼吸するのはさすがにやりすぎですが。

アクションシーンの白眉は『ハードコア』のような完全一人称アクションをやってのけたというところですね。マグネットで銃をくっつけたりそこから銃を取ったり、クレーンに振り回されたり車が突っ込んできたり、というのをワンカットで映すという、結構スゴいことやってて驚きます。終盤にリョウとカオリが互いに銃を取り合いながらダンスのような銃撃戦を繰り広げるのも見所(なぜ弾が当たらないのかという野暮なことは言いません)。そこに至る前、カオリを救いにきたリョウがカオリの聴いてたモーツァルトを聴きながら進んだり、カオリの爆弾を外して自分がつけながらカオリを逃がすというのも熱い。なぜリョウにカオリの付けた香水が効かなかったのか、元々好きなら効かないからだ、というさりげなくリョウの愛情がバレちゃうというのがこれまたシティーハンターじゃないですか。自白薬を打たれたリョウが本心を言っちゃうのも、ギャグとして使いながらカオリへの本心が垣間見えてキャー!ってなります。

槙村(ヒデユキ)との別れまで入れるのはそこまでやるかという感動がありますが、リョウとカオリの関係をわからせるには必須のエピソードなのでこれを入れるというのがわかってんな!という感じだし、槙村の時計を着けていたブラックハンドを最後に倒すというのも熱い。そのブラックハンドの正体、香のピンチ、からの生きてたリョウの数度の狙撃で壁を撃ち抜くというラストは激熱。最後に香水を弾にして復讐するというのがシャレていながら、イラストではなく実写のカラスも飛ばすという凝りよう。しかもやってくれました、エンディングに重ねるように響き始める「Get Wild」には感涙!コミックを閉じて締めるというラストまで完璧です。若干コメディ寄りな気もしますがそれはそれで面白いし、安易なコミック実写化に陥らず原作愛をこれでもかと詰め込みながら、自分たちの味も損なわずに創意工夫を凝らすという、見事なアップデートでした。ちなみにリョウ役のフィリップ・ラショーとカオリ役のエロディ・フォンタンは、実生活でもパートナーだそうです。キャー!(ちょっと赤面)

スポンサーサイト



トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1624-a8b5b5d9
トラックバック
back-to-top