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2019
12.08

お部屋の隅から届く優しさ。『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』感想。

sumikko
2019年 日本 / 監督:まんきゅう

あらすじ
絵本の世界へ強制召喚!



いつもの喫茶店「喫茶すみっコ」を訪れたすみっコたちが、店の地下室で見つけた1冊の飛び出す絵本。それを眺めていたすみっコたちは、突然絵本の中に吸い込まれてしまう。そこで出会ったのは、自分が誰なのかもわからない一匹のひよこ。すみっコたちはひよこのおうちを探すことにするのだが……。可愛らしいキャラクターが織り成すファンタジー。

「リラックマ」などで知られるサンエックスの人気キャラクター「すみっコぐらし」を劇場版としてアニメ化。人見知りだったり気弱だったりしていつも部屋のすみっこを好んでそこに陣取る不思議な生き物「すみっコ」たち。ある日、喫茶店の地下で見つけた不思議な絵本に吸い込まれたすみっコたちは、迷子のひよこのおうち探しのため様々なおとぎ話の人物を演じていきます。「すみっコぐらし」自体はキャラのグッズを見かけたことくらいはあってもよく知らなかったんですが、最初に登場キャラの説明があるのでそれほど困りません。何より可愛らしい絵柄と柔らかさを伴う動きは本当に動く絵本のようで、ほのぼのします。でもどこか悲しみを湛えた雰囲気があって、それが優しさにより癒されていくという話なんですね。

寒がりで人見知りのしろくま、自分探し中のぺんぎん、はじっこの残り物であるとんかつ、恥ずかしがり屋で気弱なねこ、本当は恐竜の生き残りであるとかげ、という5人(5匹?)のすみっコが登場。ただのカワイイ動物キャラ、というのではなく、それぞれがすみっこにいるしかないはみ出し者たちなんですね。そんな彼ら(彼女ら?)が、絵本の中で出会ったこれまたひとりぼっちである迷子のひよこ?の仲間を探してあげようとするところに奥深さはある、と言えそうです。台詞はなく時々言葉が表示されるくらいですが、それとは別にV6の井ノ原快彦によるナレーションと、本上まなみによる物語の朗読が入るという構成。

基本的には子供に向けたものだと思います。ただ、話的には孤独と共存を描くという、刺さる人には意外と刺さりそうな内容なので、そこにやられてしまう大人も多いことでしょう。上映時間65分しかないですが、様々なおとぎ話が展開していきます。過度の期待を促すような前評判は気にせず、絵本を読む感覚で観た方がよいかと思います。

↓以下、ネタバレ含む。








まず可愛さ以上にその特異性に目を見張るキャラクターにちょっと驚きます。各々が種の特性から少し外れたマイノリティであるというのが特徴ですね。しろくまなのに寒がり、ねこなのに気弱(これはいるかもしれないけど)。ぺんぎんかと思ったら正式名は「ぺんぎん?」で、本来は頭にお皿がある生物だとか、とかげかと思ったら実は偽物で本当は恐竜だとか、とんかつのはじっこの残り物だとか。いや何だとんかつって。つーかあれ口じゃなくて肉なのか!様々なネガティブな設定を背負ったすみっコたちが文字通り部屋の隅に座って過ごすという絵面は、ほのぼのしながらもどこか現代人の抱える孤独の象徴のようにも見えてきます。あとそれぞれに相棒がいるんですけど、しろくまにはふろしき、とかげにはにせつむり(本当はなめくじ)、ねこにはざっそう(ざっそう!?)、とんかつにはえびふらいのしっぽ(!?)、他にもたぴおか、ほこり、おばけ、まめマスターなど、それをキャラにするかという発想にブッ飛びます。

そんなすみっコたちが絵本に吸い込まれて様々なおとぎ話の主人公を演じるわけですが、それぞれが別の話を演じるのを並行して語りながら、本来の目的であるひよこ?のおうち探しをしていきます。ねこは「桃太郎」、しろくまは「マッチ売りの少女」、ぺんぎんは「アラビアン・ナイト」、とかげは「人魚姫」、とんかつは「赤ずきん」となって話を進めていくわけですが、どこもひよこの居場所ではなさそう。この辺りはおとぎ話のパロディの形で愉快なエピソードが綴られていったり、飛び出す絵本ということでページの裏に落ちたら別の話に移動するギミックなど、楽しくはあります。とんかつが狼に食べてーって言うのとかカワイイし。とは言え、ほんわかしてる絵本の世界のなかでの楽しさ、というレベルなので、絵本を読むような感覚で臨んだ方がいいだろうと思うんですよ。ナレーションも絵本を読み聞かせる体なんだろうなと思うし。イノッチのナレーションは喋り方自体は良いんだけど、正直ない方がスッキリ見れてよかったんじゃないかと思いますが、そこも子供向けなのでやむを得ないんですよね。

ひよこを巡る終盤の展開は意外。恐らくそうであろうと予想させる「みにくいアヒルの子」もひよこの居場所ではなく、つまりひよこはどこにも居場所のない子だと結論付けられるわけです。そんなひよこに自分たちのすみっこの場所を、しかもど真ん中を空けてあげるすみっコたちにはじんわりするし、すみっコたちが絵本から脱出しようとしてピンチに陥った際に、鬼や狼らの悪役が駆け付けるのにはグッときます。そしてひよこが本の裏側の落書きであると明かされるのには、納得と同時にどうしようもない悲しみ。そこはどこにも行けない、誰にも繋がれない場所であるという、結構へヴィな突きつけ方です。でも同じような孤独を味わってきたすみっコたちだからこそ、どこかへ行くのではなく今いる場所を幸せなものにする、という手段でひよこを救うんですね。賑やかでカラフルに変わったひよこの世界には泣けます。絵柄だけではなく結末までが優しいお話でした。

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