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2019
12.05

停滞を変化へ、解放を進化へ。『アナと雪の女王2』感想。

Frozen2
Frozen II / 2019年 アメリカ / 監督:クリス・バック、ジェニファー・リー

あらすじ
そして未知の旅へ。



アレンデール王国に光を取り戻した女王エルサと妹のアナは穏やかな日常を送っていたが、ある日自分にしか聞こえない不思議な声に応えたエルサにより、かつて閉ざされたまま出入りできなくなった魔法の森が目覚めてしまう。アレンデールを襲う魔法の力に、森へと向かうことにしたエルサたちだったが……。ディズニーアニメ『アナと雪の女王』の続編。

世界中で大ヒットし社会現象を巻き起こした2013年の『アナと雪の女王』に続編が登場。『シンデレラ』『リメンバー・ミー』の併映で短編2本があったうえに、ディズニーアニメで劇場用に続編が作られたのは近年では『シュガー・ラッシュ』くらいなので、それだけ人気が高いということですが、前作で「ありのままの自分を受け入れる」というテーマを描ききっているだけに、続編が蛇足にならないかという不安はあったわけです。が、そこはさすがディズニー、個人的には前作と遜色ないレベルの出来だと思います。前作から3年、仲間たちに囲まれて幸せな毎日を過ごすエルサとアナの姉妹は、かつて父から聞いた魔法の森が目覚めたことを知り、仲間のオラフやクリストフとともに再び試練へと挑むことになります。今回はエルサの魔法の力の秘密に迫りながら、未知の世界へ向かうという冒険ものの趣があるのがスゴくイイ。また、真実の愛を見つけた姉妹が、今度は変わらないもの・変わっていくものというテーマに向かっていくのも見もの。これでもかと投入する良曲の数々、際立つリフレインの上手さ。描く要素が多いため若干の散漫さがなくもないですが、どれも枝葉ではなくちゃんと本筋に繋げて見せるのが素晴らしいんですよ。

キャストは前作を引き継いでいます。エルサ役はイディナ・メンゼル。今作ではエルサが超カッコよくてですね、氷と雪を操るアクションはもはや『X-MEN』を凌ぐし、ギアッチョさん(ジョジョ5部)もたじたじ。ダブルのマフラーがたなびくような新しい衣装もキマってます。アナ役はクリステン・ベル、相変わらずやかましいし、うっかり具合も大概ですが、エルサがメインと思わせてアナがいてこその話になっているというのが秀逸。オラフ役のジョシュ・ギャッド、クリストフ役のジョナサン・グロフも続投。オラフの芸達者ぶりとクリストフのソロステージは最高です。日本語吹き替え版も、エルサ役の松たか子、アナ役の神田沙也加、クリストフ役の原慎一郎らが、歌も含めて抜群の上手さを見せます。オラフ役は周知の理由で武内駿輔に変わってますが違和感なし。時折やたらイイ声になりますけど。ほか、姉妹の母イドゥナ王妃役に吉田羊、謎の種族ノーサルドラのイエレナ役に余貴美子など。

監督のクリス・バックとジェニファー・リー、音楽のクリストフ・ベックらも続投ということで、地続き感は言うことなし。暴走しがちなエルサとかしましいアナがそれぞれを補い、ときにぶつかり、それでも想い、今できる正しいことを通して真実へと向かうのが、何かもう愛しい。ちゃんと続編としての意義があります。ちなみに超長いエンドロールの後におまけ映像があります。

↓以下、ネタバレ含む。








■冒険が始まる

映像の美しさは明らかに前作以上、と言うか雪や氷が多かった前作に比べて舞台が広がったぶん美術のバリエーションも増えてるので鮮やか。序盤の水面から城に近付くカメラ、秋の森に映える紅葉、荒々しい海で砕ける波など、どれも素晴らしい。そんななかでおなじみの面々がまた登場するわけですが、エルサが「冒険はもうウンザリしてる」と歌うものの前作は冒険という感じではなかったので、今作がしっかりアドベンチャー映画として成り立っているのがすこぶる楽しいんですよ。王国を救う旅をしながら、旅先で出会う人々と交流したり、自分自身の発見をしたりするロードムービーでもあるわけです。

また、既存のキャラの立ち位置が冒険によって揺らいだり、再びキャラを立て直したりといった新たな深掘りにもなっているのが続編ならでは。そこにエルサの力の謎や、不思議な声の正体、母の出自、妖精の森で起こった惨劇の真実など多くの謎に迫るサスペンスが加わり、その根幹にエルサとアナの関係がありつつ、ついでに(と言うとかわいそうだが)クリストフのプロポーズや、あとオラフのコミカルさによる笑いがあり、エルサのアクションも増量しながら、さらにミュージカルとしても魅せるという、こうして挙げると驚くほど盛りだくさんな構成なんですね。それだけに前作のようなわかりやすさには少々欠けますが、そのぶん複雑な背景や関係性や感情を描いており、それが前作とは異なる楽しさだとも言えます。


■いつもの仲間と新たな顔

何を隠そう前作が大好きなので、冒頭の小さい頃の姉妹を見てるだけで泣きそうになりますよ。エルサは相変わらず一人で抱え込むし、少しばかり暴走気味だしで不安定ですが、それらを吹き飛ばすほどアクションが超カッコいい。氷を放出して火を消し止め、水面を凍らせながら走っていく姿は完全にヒーローです。大波に突っ込んでいくときなんてスタート前の動きがアスリートだし、水の暴れ馬を手懐けて駆るのにはカッコよすぎてホレます。衣装や髪型が要所で変わっていくのも見所。一方のアナは少し落ち着いたかと思わせて、こちらも相変わらずでせわしない。ジェスチャーゲームでの顔が超うるさいし、エルサへの心配が度を越してて若干おかんみたいですが、エルサがどこか行ってしまいそうな雰囲気なだけに「いつも一緒よ」と繋ぎ止めようとしてるんでしょうね。元カレのハンスがネタにされすぎですが、黒歴史も笑い飛ばせるくらいには時間も経ったということでしょう。

クリストフはアナのピンチには駆け付けるのがナイトっぽいと言えなくもないですが、大体はプロポーズ不発が続いていいとこなし。おばちゃんにプロポーズしちゃうし。置いていかれるし。でも後半に潰されそうになったアナを救った際に「どこ行ってた」とか「あれは何だ」とか無駄なことを聞かず、アナが全てを知って行動していると察して「何をすればいい?」と言うのがカッコいいんですよ。オラフはものまね芸が高レベルだし(特にエルサ)、むっちゃトリビア知ってるし、前作のあらすじを見せるオラフ劇場が最高。ちゃんと夢中になるマティアス中尉がチョロいです。そのマティアス中尉、ノーサルドラとは敵対関係を保ちながらも、34年も閉じ込められていることでどこか運命共同体的な関係になっているんでしょうね。イエレナに「(敵だけど)ちょっと醤油貸して」くらいは言ってそう。

また地水火風4つのエレメントの具現化がバラエティに富んでいてイカします。火の精霊サラマンダーは問答無用でカワイイ。エルサの雪でじゅわーっていうの気持ち良さそうでカワイイ。あざといけどカワイイ。水の精霊ノックは水馬となった姿がケルピーのようで、美しくエレガント。まさに女王エルサの愛馬という感じで、降りた後しゃばーって消えたり、終盤エルサが氷でコーティングしたりするのも良いです。風の精霊ゲイブ、いや風にゲイブって名前付けるの斬新だな!と思いますが、手紙も運んでくれたりして便利。崩れたオラフをさりげなく運んでひとまとめにしておくというサポートも見せますね。大地の精霊アースジャイアントは『ネバーエンディング・ストーリー』のロックバイターみたいですが、三匹が立ち上がったときの迫力などはもはや怪獣映画です。氷のボートで合間を縫っていくのはなかなかスリルだし、岩の投げ方には躊躇がないし、これを使ってダム破壊させようとするアナはわりと頭いいのでは。あとある意味精霊じゃないかというオーケンさんが街に住んでネイリストみたいなことしてるのは愉快。


■歌で紡ぐ世界

楽曲はスゴく良いです。前作ほどじゃないと思っても、それは『レット・イット・ゴー』があまりに聴き慣れすぎたから、というのもあると思うんですよね。ちゃんと歌によって話を進めたり、重要なことが示されたりするので(オラフとクリストフのソロ曲はともかく)停滞はせずテンポもよいです。新曲は7曲。『イントゥ・ジ・アンノウン ~心のままに(Into the Unknown)』は主題歌だけあってキャッチーで、ミステリアスな雰囲気から徐々に盛り上げての解放感があります。イドゥナ王妃が歌う『魔法の川の子守唄(All is Found)』はアナがエルサを寝かしつけようとするときやハニーマレンとの会話でも使われ、やがてアートハランへと導くという"繋げていく曲"と言えるでしょう。『ずっとかわらないもの(Some Things Never Change)』は紅葉した葉で各キャラを渡りながら、陽気な曲調をメイン4人が掛け合いで歌っていくのが楽しい。アートハランでエルサが歌う『みせて、あなたを(Show Yourself)』は謎の声のメロディもフィーチャーしながらその主との邂逅に使われ、しっとり始まりアップテンポに変わって『魔法の川の子守唄』と融合したのち壮大に締めるのが良くて、劇中で一番好き。『わたしにできること(The Next Right Thing)』はアナが悲しみを決意に変える曲なだけあってエモーショナルです。

オラフの歌う『おとなになったら(When I Am Older)』は、オラフって子供だったのか……と軽い衝撃を受けつつ(確かに生まれて3年だけど)、ここで4エレメントが軽く顔見せもしてますね。誰だよサマンサって。最高なのはクリストフの歌う『恋の迷い子(Lost in the Woods)』。なんだこの懐かしいのは(爆笑)。80~90年代のロックバラードを参考にしたというだけあって、シカゴか!という曲調だし、アナに置いて行かれての「一人でまた取り残された」の出だしが気の毒すぎて笑うし(笑うんかい)、増えるわ、消えるわ、どアップだわ、木の実をマイクに見立てるわ、完全にクリストフのMVです。もうね、クイーンかと。雪の女王だけに。せつなげに歌い上げるクリストフとは裏腹に、子供には通じない笑いがこみ上げて止まりません。でも腹話術ではないスヴェンと同時に歌う、という夢のコラボを何気にやってたりします。


■繰り返される言葉

前作もそうだったんですが、繰り返しを行うリフレインの上手さというのがあります。森の呼び声のメロディも何度も繰り返しながら歌にも取り込まれていたり、前作の曲『雪だるまつくろう』が少し流れたりもします。前作冒頭のハーモニーがノーサルドラの民が歌ったものだった、というのは後付けな気がしますが、上手くハマっていて面白い。また、音楽だけではなく台詞や歌詞にも繰り返しは何度も見られて、その言葉を印象付けます。その最たるものが本作のテーマの一つである「変わるもの、変わらないもの」。ようやくエルサの氷も溶けて『ずっとかわらないもの』を歌い今の生活が変わらないことを願うものの、この歌がカボチャは腐り葉っぱはしおれるという変わることへのオラフの恐れから始まるように、永遠に変わらないものはあるのかという疑問が提示され、変わっていく現実が描かれます。また「今出来る正しいことをする」はエルサとアナが魔法の森へ行って声の主を探そうとする動機になるわけですが、今の生活を変えないための最善のつもりが、行動することで何かが変わっていくという矛盾も孕んでいます。しかしこれが最後にアナがやり遂げるための指針にもなっていく、という繰り返しを見せるんですね。また「水には記憶がある」によって過去の過ちを知ったり、両親がエルサのために航海に出たことがわかったりと痛みを伴いますが、オラフが元に戻る根拠にもなっています。

『イントゥ・ジ・アンノウン』で歌うように、ありのままが受け入れられはしたものの、自分は人とは違うと思ってきたがために、自分にだけ聴こえる謎の声に応えてしまうエルサ。そのためにアレンデールは火が消え水が失せ強風が吹き地面が揺れるという、父が話した魔法の森の影響を受けて「旗を掲げよう」と歌っていたその旗も吹き飛ばされる事態に。そして旅の途中エルサは「ずっと一緒」と言っていたのに、愛ゆえにアナを遠ざけます。オラフが自分の中に怒りを感じると言うのが何か唐突だったんですが、エルサを襲うのと同じ水の記憶にある精霊の怒りがオラフに伝播したのかもしれず、あるいは怒りを訴えながらも戸惑う様子を思うと、エルサの覚悟を感じたのかもしれません。そして自分を呼ぶ声が母であった嬉しさもつかの間、トロールのパビーがエルサの力では敵わないかもしれないと危惧した通り、真実の記憶はエルサさえも凍らせてしまいます。子守唄が「溺れないように」と語っていたように、深みにハマって溺れてしまうわけです。

それでも最後の力でアナに真実を伝えるエルサ、それと共に崩れていくオラフ。子守唄が暗示したように、アナはエルサとオラフを失って、真実とやるべきことを知ります。でも変わっていく悲しみに憂いていたオラフが「変わらないものとは愛だ」と言いながら消えていくのは象徴的。姿はなくとも愛は残る、ということであり、その言葉は常にエルサと一緒にいようとしていたアナが変わるきっかけにもなったでしょう。未来が見えないときは今できることをする、だからアナは二人を失いながらも、今すべき正しいことをしようと立ち上がるのです(クリストフがまだいるということを完全に失念している気もしますが……)。


■疑問点を考えてみる

なぜ森が閉ざされてから34年も経った今になってエルサが呼ばれたのかがよくわからないんですが、愛する人たちはここにいると言いながら「台無しにしたくない」とどこか無理をしているエルサが、無意識に本来の居場所を求めてしまい、それに森が呼応したということかもしれません。王国を離れて兵士も連れず仲間だけで行くというのが現実的ではない気がしますが、魔法の力で避難中だから部隊編成もままならなかったのでしょう。アレンデールから魔法の森までの距離感がわかりにくいですが、大体馬車で丸一日の距離だから、時速10kmとして途中休憩を挟んでおよそ200km、東京から浜松くらいですかね。それだけの距離をダム決壊による濁流が届くものだろうか、という疑問もありますが、ダムの下流は両脇の切り立った崖がガイドになるから分散しないし、エルサが「精霊も許してくれた」みたいに言うので魔法の力も働いていたのでしょう。

ダムを壊せば過去を精算できるのか、これは魔法の力を抑えていたわけだから精霊としては優先事項、加えて争いのきっかけだったダムをアレンデールとノーサルドラの子である姉妹が協力して取り除いたことで贖罪と見なされたのでしょう。エルサが氷結から復活してすぐにアレンデールに向かえたのは、溶けたあと水に落ちるので水の記憶から経緯を知って駆けつけることができたのでしょうね。最後の濁流ストッパーが凄い威力なのは、第五の精霊を自覚した後の初撃だからです。あと空が晴れたあと大量のトナカイが輪になって走りますが、どこにこんだけいたんだ?というほどの頭数。これは……まあ魔法の森は結構広そうだし、京都の鹿だってあれくらいいますから(多分)。


■溶けた氷と取り戻す空

命懸けで真実を得たエルサと、国を守るため必死で動くアナに、立ち塞がる兵士たちも盾を打って地の精霊を誘き寄せ、ダム破壊は成功。それにより精霊パワーは全快、エルサも瞬時に解凍。前作では凍ったアナをエルサが涙で救い、今作では凍ったエルサをアナが正しいことをして救います。エルサは想いで、アナは行動で互いの助けとなるんですね。だから第五の精霊として森を司る精神的支柱のエルサと、女王として国を治める行動派のアナというのはとてもしっくりきます。変わらないで一緒にいようという、ある意味束縛とも言える関係から、互いのために変わる道を選び"橋の両端"として常に繋がっている関係へ、そして本当の意味でのありのままの自分になるのです。クリストフのプロポーズ大作戦も最後のあのタイミングでストレートにやられるとグッときます。クリストフが片ひざついた辺りから、もうアナが泣き始めちゃうのにはもらい泣き。オラフも水の記憶により連続性をもったまま元通りになるのが実にハッピーです。

居場所を見つけた前作とそこから本当にいるべき場所を知った今作、と考えると、前作と二つ合わせて一つの物語であるとも言えそうです。姉妹は離れてしまったけれど、もはや距離が二人を遠ざけることはないのでしょう。エンドロール後のオラフ劇場(オラフ死ぬ、と自分までネタにしてて笑う)でオラフがマシュマロウやスノーギース(小雪だるま)に「(記憶があるから)生きてる」と言うのも、互いへの思いを忘れないことが生きてる証である(たとえ離れていても)と捉えることができます。そしてアレンデールでは国の旗を掲げていた場所に、二国のこれからを示すように幼い頃の父と母の銅像が立ちます。それは「変わらないもの」の象徴でもあるんですね。ラスト、水馬に乗り大海原を駆けていくエルサの表情には、もう迷いも憂いもありません。そこには見えなくなっていた未来が見て取れます。過去の過ちを描きながら未来の話にしている、というのがとても良いのです。

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