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2019
11.25

仰げば尊し、我が師は強し。『スーパーティーチャー 熱血格闘』感想。

Big_Brother
大師兄 Big Brother / 2018年 中国、香港 / 監督:カム・カーウァイ

あらすじ
担任がドニーさん。



香港の徳智(タックチー)学園は、このところの学力低下で教育局からの補助金を打ち切られそうになっていた。そんななかアメリカ帰りの新任教師チャン・ハップが赴任し、問題児ばかりのクラスの担任となる。反発する生徒たちだったが、チャンの知識と行動力に徐々に心を開いていく……。ドニー・イェン主演の学園アクション。「のむコレ3」上映作品。

宇宙最強の男ドニー・イェンがなんと高校教師となり生徒たちと接していくという学園ドラマ。補助金を打ち切られたら廃校の危機、という徳智学園に颯爽とやってきた新任教師チャン。彼の担当クラスはまともに授業を受けようという気のない問題児ばかりの教室。なかでも特に跳ねっ返りな5人の生徒たちに果たしてチャン先生はどう接するのかと言えば、あらゆる知識で生徒たちと渡り合い、どんな人間関係も解決していく、しかも意外なことに拳は使わない(悪党以外には)という、まさにタイトル通りのスーパーティーチャーっぷり。展開が色々と極端な上に、駆け足で泣かせにきたりするので唖然とするところはありますが、本作はドニーさん自身が製作を務めている、ということを忘れてはいけないでしょう。つまりこれはドニーさんから若者たちへの応援歌であり、かつて若者だった者たちへの訓辞なのですよ。ちゃんとアクションも堪能できます。

チャン・ハップ(ヘンリー・チャン)先生役を演じるドニー・イェンですが、『イップ・マン』シリーズなどに比べるとアクションはやや少なめな気も。でも格闘だけではないドニーさんのカッコよさや粋なところがガンガン出てくるので大丈夫。『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』などハリウッド作品でも通じる英語力も駆使して熱血教師を演じます。おばあちゃん子のワイチョン、双子の兄弟で商売好きのカイチンとゲーム好きのカイイン、車大好きレーサー志望の女子ダッナン、移民の子で音楽好きのジョウファといった生徒たちも良いですよ。ほか、リョン先生役に『モンキー・マジック 孫悟空誕生』ジョー・チェン、地上げ屋ロー・ギンイン役に『スペシャルID 特殊身分』ユー・カン、ラム校長役に『ドラゴン×マッハ!』ドミニク・ラム、クワン兄弟の父役に『SHOCK WAVE ショックウェイブ 爆弾処理班』フェリックス・ロクといった布陣。

知識は力だと英語でバシッとキメて、落ちこぼれるには理由があると熱血家庭訪問、うっかり格闘技チャンプと戦い、護身術という名の無双で生徒の未来を守るドニーさんの何という聖人っぷり。ユー・カンとの対決で見せる教室アクションも面白い。ちょっと雑ではあるけど、様々な問題にも切り込んだ意欲作です。

↓以下、ネタバレ含む。








ドニーさんのチャン先生、入った教室がいきなり無法地帯でどうするのかと思いきや、料理に車にゲームとあらゆるジャンルに詳しいというジャブを見せ、輪ゴムでスプリンクラーを作動させて注意を促し(傘も忘れない)、煙草を使って授業を行い正解者にはサボりを認めるという型破り。極端ではありますが、何のための勉強か、というのを「Knowledge is Power!」と言い切るところが彼の教育の大前提なんですね。強いのはわかってますが力を使うことはなく、もちろん教室ドアのトラップなど引っ掛かるはずもなく逆に吹っ飛ばします。常に理路整然と語る見事な教師っぷり。まあこれが『HiGH&LOW THE WORST』の鬼邪高校みたいなヤンキーのたまり場ならまた違うのかもしれませんが、問題のある生徒たちは各人が問題を抱えて目標ややる気を失っているという状態なので、それを解決していくことで信頼を得ていくことになります。何より生徒を決して否定しない、というのを徹底しているのが聖人。

そして落ちこぼれ5人への熱血家庭訪問ですよ。生徒たちの実態や夢やらが語られるのには「そんなん書いてんのか?」とは思うし、環境やそれへの対応などもこれまた極端ですが、ドニーさんならではのポジティブ教育が爆裂。女性蔑視で政略結婚まで押し付けるダッナンの父には、カートで娘と競争させるという予想外の荒療治。公道を走っちゃダメなのでは、という疑問は置いといて、娘が轢かれたと思った親父が号泣で解決!ドニーさんはフラッグの振り方までカッコいい。香港生まれなのに外国人扱いで職質を受けるジョウファには、自ら飛び入りで歌っちゃうことでステージを体験させ、クワン兄弟のパワハラアル中親父はカウンセリングに行かせて、子供たちも課外授業として行かせて会話させるという泣き展開。ちょっと家庭の問題に首突っ込みすぎだし、クズ親たちが先生と話した途端に改心するという性急な展開には唖然としますが、これ本来は連続ドラマでやるような話なので尺の都合はあるでしょうね。それでも力技で泣かされます。

極めつけはワイチョンが格闘技チャンプに筋弛緩剤を入れようとしたのを止めにいったらチャンプと戦うことになっちゃう、というヤツですね。ロッカーやシャワールームまで使った大立回りは、間取りの活かしか方や小道具の使い方まで立体的で実に楽しい。そして案の定チャンプまで倒しちゃうドニーさん!テレビで先生のことを報道されちゃうとか智徳学園まで取り沙汰されるとか謎の展開はあるものの、すっかり先生にしてやられた生徒たちも勉強に励むように。先生が机をバンバン叩きながら指していく辺りテンポもよいです。しかしまさかの双子の兄カイチンの自殺未遂。ビジネススクールという目標と成績の上がらない焦りが絶望に変わったということなんでしょうが、これはさすがに唐突すぎるし、チャン先生が学園を去る理由としては重すぎます。ただ、ここで先生が教育局に対して教育問題、人種差別、格差問題について毅然と言う、というのが重要。大学に行かない8割の生徒を見捨てない、自殺者の増加を憂い、そのために何ができるかを考える。それこそドニーさんが言いたかったことなのかな、と思うのです。

冒頭で校長の「なぜこの学校で教師を?」の問いに答えないところは伏線だな?と思うんですが、むしろ一言では言えないからでは、というくらいスゴい経歴。卒業式をブチ壊し、アメリカに渡って海兵隊に入り、戦争で無常を感じて世界中を旅して回るようになり、恩師である元校長の推薦で教師に、ってなぜそこで教師に?という感じですが、自分の経験を通して若者たちに伝えたい思いから教師になったわけです。その表には出さなかった熱意を知ることで、生徒たちは去り行く先生を追いかけ、教師たちは自ら補講して生徒たちを試験へ挑ませ、校長は進退を賭けて保護者を説得する、というように自分を省みて未来を見るようになります。みんな素直すぎるしチャン先生を好きすぎますが、熱いじゃないですか。リョン先生なんて生徒たちの前でチャンを食事に誘うしオッケーされて喜ぶしで、違う意味で先生大好きです。

若干都合のいい展開ではありますが、そのなかでアクセントとなるのが学校を地上げしようとするロー・ギンイン。学園を潰すため生徒たちを試験に出さないよう閉じ込める悪党たちに対し、ついに先生の護身術という名のアクションが炸裂、手下たちはボールをぶつけられたり、なんか尻にブッ刺されまくったりしますが、ローがチャン先生と因縁があったというのは素直に驚き。卒業式で暴れたチェンにより手を痛めてピアノの道を絶たれた生徒が、まさかスゴい柄のスーツを着込むマフィアになっているとは。演じるユー・カンは『アイスマン』シリーズでもドニー・さんと共演してるだけに、二人の教室での一騎討ちは見もの。机にガッタガタぶつかりまくるの痛そうだし、壁のパイプや天井の電線をひっぺがして机で閉じ込めてグルグル巻いたり、机をリングにしながら場外乱闘もしたり、グランドも取り入れながらの激闘は、さすがアクション監督が『るろうに剣心』シリーズの谷垣健治!という工夫の数々。

ローはチャン先生が変えてしまった過去の犠牲者であり、ここに先生自身が自分の罪とどう向き合うか、という深みがあります。相手がローだと知っても生徒たちを守ろうとするチャンが、最後の一撃を打てず黙って教室を去る、そこにローが「俺はピアノが好きだったんだ!」と叫ぶのがものすごくせつない。このくだりがあるだけで本作を観て良かった、と思いますよ。そんなローが再びピアノを弾いてみることで自分を取り戻そうとするのがまた泣けます。そして先生・イズ・バック!アンド新入生への新たな熱血教育が始まって締め。罪は背負い、傷は抱え、それでも未来を指し示す先生に、教育の大変さと重要さを見ることができます。

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