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2019
11.19

選び取る運命を未来と呼ぶ。『ターミネーター ニュー・フェイト』感想。

Terminator_Dark_Fate
Terminator: Dark Fate / 2019年 アメリカ / 監督:ティム・ミラー

あらすじ
オススメのカーテンはこれだ!



人類が滅亡する「審判の日」は回避されたはずだった。しかしメキシコシティに暮らす21歳の女性ダニーを、未来から現れた最新型ターミネーター「REV-9」が襲う。それを救ったのは、同じく未来からやってきた兵士グレース。彼女はREV-9と壮絶な戦いを繰り広げるが、徐々に追い詰められていく。そこに一人の初老の女性が現れて……。SFアクション『ターミネーター』シリーズの新たな続編。

シュワルツェネッガーが未来から来た殺人マシンを演じた『ターミネーター』、その生みの親であるジェームズ・キャメロンが製作に復帰し、1991年『ターミネーター2』の正当な続編と謳って新たな戦いを描きます。『ターミネーター』シリーズとしては通算で6作目に当たるんですが、『3』『4』『新起動 ジェニシス』を「なかったこと」にして『2』の直接の続編にしてるんですね。そこに思うところはありますが一旦置いといて本作、1、2作目をなぞってるようでズラしていく新機軸を見せ、それでいてさすがにキャメロンが関わってるだけあって話には確かな続編としての趣もあります。何と言ってもサラ・コナーの再登場、これによる地続き感は大きい。でもそれだけでなく、新たな登場人物であるダニー、そして未来から来たグレースの存在感もとても良いです。特にグレースが最高。シュワの円熟味もいい感じに作用してるし、怒濤のアクションにはエキサイト。多少の引っ掛かりはあるものの、ノンストップの追跡劇が実に面白い。

シリーズに28年ぶりの復帰となるサラ・コナー役のリンダ・ハミルトン、映画出演自体が1997年『ダンテズ・ピーク』以来かな?63歳にしてこの体型とアクションは、2018年『ハロウィン』のジェイミー・リー・カーティス以上のタフさ。T-800役のアーノルド・シュワルツェネッガーと再び並び立つのは感慨深いものがあります。そしてグレース役の『ブレードランナー 2049』マッケンジー・デイヴィス、ショートカットにタンクトップ、長身で激しいアクションをこなす姿が異様にカッコよくて、サラに負けないほど魅力的。ダニーことダニエル役のナタリア・レイエスも、ただ怯えるだけではない強気さがあって良いです。また新型ターミネーターREV-9役のガブリエル・ルナ、『エージェント・オブ・シールド』に出てたそうですが、人間と変わらぬコミュニケーションを取りながらも標的には一切容赦ない不気味さが秀逸。

監督は『デッドプール』のティム・ミラー。連続性が途切れず気が休まらない緊迫感で引っ張ります。アクションでのスローの使い方がこの監督らしい。新敵REV-9についてはあまり説明をせず、見てるうちにわかってくる特性が面白いです。そして、人とは相容れない機械、男に追われる女、というのを覆していく構造も良いんですよ。かつてサラ・コナーが見せてきた、運命を切り開く物語が再び展開されます。

↓以下、ネタバレ含む。








■消えた「審判の日」

冒頭は『2』で「審判の日」を訴え叫ぶサラの映像。しかしその運命は回避され、南方でくつろぐサラとジョンの親子。観る前は、予告にも出てこないしジョンがどうなるのか気になるなー何かの事故で亡くなりサラは一人生きてるのかなーなんて考えてたんですが、まさかの"少年期"のエドワード・ファーロングが登場、こいつは確かに続編だ、と思ったのも束の間、いきなりとんでもない事態に。どうりで予告に出てこないはずだよ!『2』を観直した直後だったのもあり、あまりのことに愕然。このショックと喪失感は『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』のラストに張るほどですが、こちらはまだ出だしですよ?作劇上必要な退場かもしれませんが……逆に言えば今作は『3』以降で描かれてきた「ジョン・コナーの物語」ではないと冒頭で宣言しているということ。つまりこれはまず生き長らえたサラ・コナーの物語なんですね。未来を変えようとして一人のときから戦ってきたサラの不在は、確かに『3』以降のシリーズで失われていた大きな要素。そしてあれだけの戦いを経た結果、スカイネットは確かに実現しなかった、というのも大きな違い。本家が"ジョン"と"スカイネット"という大きな枠組みから脱却するというのは意外です。

ジョンとスカイネットがなくても『ターミネーター』であると思えるのはやはりサラの存在のためであり、しかしサラは既に守るべき者を失っている、というところから新たな世界を構築しようというわけです。この思いきりには正直驚きました。実際はスカイネットに代わり新たに「リージョン」というAIが台頭してやはり人類と戦うし、殺人マシンから逃れようとするという、言ってしまえば"繰り返し"になるわけですが、新たな救世主ダニーとそれを守ろうとするグレースという全く新しいキャラを投入することで格段に新鮮味が増しています。サラ・コナーのその後の物語であると同時に、ダニーとグレースの物語でもあるんですね。この三人の女性を描く比率が結構絶妙なバランス。また、REV-9が今までになくにこやかで人当たりの良さを身につけていて無闇に人を殺さず、しかし目標を見つけたときは周囲全てを巻き込んででも抹殺しようとする、という完全にサイコな人に思えるのも特徴的。逃げる女性たちが追ってくる男と戦うという構図は実にフェミニズム的でもあり、ここは今までになかった新機軸。


■新たな救世主

何と言ってもグレースの存在です。機械かと思いきや強化型兵士であり、れっきとした人間。しかし銃器だけでなく格闘でもターミネーターと渡り合うことができるという、一種のサイボーグに近いかもしれません。このマッケンジー・デイヴィスの演じるグレースが、長い手足を活かしたダイナミックな動き、凛々しい表情ととにかくカッコよく、登場時にまっぱで暴れるのさえ潔い。サラや他の者には構わずダニーだけを守ろうとするのが騎士のようです。なぜダニーを守るのかについて、最初にそれを「救世主の母だから」とサラに言わせる、というのが上手いんですよ。ここでも"繰り返し"があるんだなと思うし、サラに「自分と同じ」と言われたらそりゃ信じます。このミスリードが効いて、ダニーの未来が明かされるのには完全に意表を突かれました。思えばグレースは最初から無条件でダニーを信頼し心配してるし、最初から親しい人のみの呼称「ダニー」で呼んでるんですね(REV-9は「ダニエル」だった)。「未来なんてどうでもいい、今逃げずに戦う」と言うダニーに「あなたが世界を救う」とグレースが告げ、それを聞いたサラがダニーのことを「ジョンだ」と言うシーンにはシビれます。救世主を産む女性、ではなくその女性自身が救世主である、という、ここも新機軸でしょう。

1、2作目と重なるところがありながら絶妙にズラしてくるのは非常にスリリング。これは敵だったT-800が『2』で味方になるのと似た新鮮味があります。前半の舞台がメキシコであるのは『2』と被りながらも次の移動先がテキサスであるとか、『2』で「運命ではない」という意味での「No Fate」が「運命を選ぶ」という意味合いで使われたり、シュワの決め台詞「アイル・ビー・バック」をサラに言わせたりするのも面白い。T-800に関しては冒頭以降、後半になるまで出てきませんが、『2』と同じく味方になるもそれが命令ではなく自身の考えだというのが大きな違い。目的を失い、たまたま救った母子と人間として暮らすようになった、というのは無理があるように思えますが、『2』で学習能力を聞かれ「無限に覚えられる」と言っていたから、生存のために人間らしさを文字通り「学習した」ということでしょう。"カール"としてカーテン屋を営んでいるという設定にはちょっと笑いますが、ダニーに家族のことを「愛してるのか」と聞かれて「人間のそれとは違う」と言うのは所詮は機械としての演算結果である、という自覚なのかもしれず、それがかえって悲哀に見えてきます。家族に対し「戻ってくる(アイル・ビー・バック)」ではなく「戻らない」と言い、ターミネーターのトレードマークとも言えるグラサンをかけない、というのも過去作との対比になっています。


■過去作との類似

『3』以降をなかったことにすると言いながらも、ぶっちゃけそれらと被るところも多々あるんですが、それでも一味違う工夫が施されているという印象。強化型兵士グレースは『4』のあの人に近いですが、連続で動きすぎると熱を持ってダウンしてしまうという弱点を持っているのがスリルになるし、デカい車に追いかけられるカーチェイスは『3』でも壮絶なのをやってましたが、ブレードで車をガンガン跳ね飛ばし道路もバキバキに破壊する荒々しいチェイスはド迫力。T-800が機械でありながら見た目は年を取る、というのは『新起動』まんまですが、タイムスリップしてやってくるときは周囲が凍りつく、というのは新しかったりします。スカイネットのタイムトラベル・マシンとは違うということでしょうね。

そしてREV-9、『3』のような液体状の表皮とメタルの骨格を持ちますが、これが分離してそれぞれで動けるというのは斬新。液体化したときの色が銀じゃなくて黒というのにはちょっと「おっ」と思いますよ。起き上がり方の気持ち悪さは『新起動』に似てますがさらにメカっぽく、収監所で殺しまくり大勢に一気に捕まれても斬り進むという強引さが強力です。液体と骨格どちらが本体か?合体したときのメリットは?などぼんやりしている部分もありますが、必要以上に説明しないのが却って恐ろしさになるし、『新起動』でのT-800の笑顔とは比べ物にならないコミュニケーション能力が危険。未来で海からわらわらと湧いてきたり空からも襲ってくるターミネーターの絵面はヤバいです。


■ジョンのために

ダニーはジョンである、というところでサラとグレース&ダニーの物語をクロスさせつつ、サラとT-800の関係も描かれていきます。なぜスカイネットを潰したのにT-800が現れたのか?というのが引っかかるんですが、これは『2』のT-1000と同時期に既に送られてきていた、ということなんでしょうね(それ以外説明がつかない)。それ以降に送られてくるターミネーターはリージョンからなのかな?そこは曖昧なんだけど。とにかく、グレースに「ジョンはどうした」と言われて睨み上げるときの表情に22年経っても消えない怒りを見せるサラと、贖罪として「ジョンのために」サラに情報を流していたT-800。全て終わったら破壊すると言うサラに素直に「わかった」と言うのは、子供に対する愛情(というより優先度とか目的か)を知ったからなのかもしれません。

クライマックスのダムでの戦いは、T-800はどうやってダムの底から戻ってきたのか?とは思いますが、REV-9に対し4人で戦うというチームを感じる戦いが新しく、鎖を使ったアクションもカッコよいし、危機また危機の畳みかけ方が凄まじいです。「絶対呼ばない」と言っていたサラが「カール」と呼びかけると目覚める、なんてのは、やるとは思ってたけどグッときたし、表皮を倒して骨格と共に崩れていくT-800が最後に言うのが「ジョンのために」なんて、そりゃ泣きますよ。

グレースを退場させるのは実にもったいないと思うんですが、なんか写真とかレントゲンとか撮られてたのが後に影響してくるのか?キャメロンはまた3部作構想があるらしいので(実現するかはまだ未定)、そこでリージョンの実態とか描くつもりかもしれませんが、さすがにスカイネットもなくなった今、シュワのT-800はこれでもう終わりじゃないかと思うんですよね。それはそれで寂しいですが、何より今作は1、2作目を踏まえた上で重ねながらズラすというのがとてもハマっていたと思うし、自ら運命を選んだ女性たちのドラマが非常に際立っていたし、不確定な未来への余韻を残して終わるのがシリーズに似つかわしく、正直これで完結でもいいような気もします。とは言え、僕は『3』以降は別のユニバースと思った上で本作も受け入れるくらいにはこのシリーズは好きなので、続編が出ればそれはそれで観てしまうとは思うんですけど。二人の救世主が駆る車は果たしてどこに向かうのか、新たに選んだ運命に思いを馳せてしまいます。

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