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2019
11.16

撃てよ宿敵、踊れよ戦車!『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』感想。

T-34
T-34 / 2018年 ロシア / 監督:アレクセイ・シドロフ

あらすじ
任意で撃て!



第2次世界大戦下、ナチス・ドイツと戦うソ連軍の新米士官ニコライ・イヴシュキンは、戦車戦で善戦するも敗退、ナチスの捕虜として収容所に。そこでナチスの戦車戦演習のために実弾なしのソ連軍戦車T-34の操縦を命じられる。ニコライは仲間とともに無謀な脱出計画を練るが……。ロシア発の戦争アクション。

第2次世界大戦を舞台に、ナチスに囚われたソ連の戦車兵たちの決死の脱出劇を描きます。捕虜になったニコライが戦車の指揮官だと知ったナチスは、収容所で行われる戦車戦演習の相手として指名。それは武装もなく逃げ回るしかない、でも相手は実弾なので最後は死が待ち受ける、つまりは標的。そんななかニコライは共に囚われていた3人の戦車兵と共に、与えられたソ連軍の戦車T-34を駆っての脱出を企てます。もう最高!のっけからたった一台の戦車で敵中隊に挑んだり、敵収容所からの大脱出を企てたり、街中での戦車戦を繰り広げたりと、とにかく戦車アクションの面白さがこれでもかと詰まっています。砲弾飛び交う戦いは音響の凄まじさもあってド迫力、スリルに満ちた作戦に豊富なフィールド、仲間たちとの一体感、敵の大佐とのまさにライバルな関係。リアルな『ガールズ&パンツァー』にして血沸き肉踊る怒濤の戦車ムービー。こいつは熱いぜ!

ソ連軍のニコライ・イヴシュキン役である『アトラクション 制圧』アレクサンドル・ペトロフの、デキる優等生ながら決して折れないアウトローでもある、というのがスゴくカッコいいんですよ。そのライバルとなるドイツ軍のイェーガー大佐もこれまたキレ者で二人の因縁の対決から目が離せません。演じるビツェンツ・キーファーは『ジェイソン・ボーン』にも出てたんですね。ドイツ軍の通訳としてニコライと話す女性アーニャ役のイリーナ・ストラシェンバウムも気品があって美しい。ニコライと共に脱出を図るステパン、ヴォルチョク、イオノフの戦車兵たちも個性的で、彼らのチーム感が大変良いです。ちなみに彼らが乗るT-34はなんと本物の機体、しかも役者自身が操縦していたというのだからブッ飛びます。

片輪走行、ドリフト旋回、回頭のもどかしさにここぞの一撃と、あらゆる戦車描写を織り込む戦車愛が凄まじいです。戦車内の閉塞感ある顔面アップが続くも、テンポが良いので気にならないし、圧倒的に臨場感の方が上。同じく戦車戦を描いた『フューリー』よりは『オーヴァーロード』に近いテイストじゃないでしょうか。頑丈なT-34の姿は勇ましく、スローの多用や過剰なヒロイックさも似つかわしい。戦争を背景にしながらも見事なエンターテインメント。こいつは面白いぞ。

↓以下、ネタバレ含む。








序盤からたった一台の戦車で撤退の殿を務めろという無茶振りを食らうニコライ・イヴシュキン。両手を吊るした上司が、実戦経験のない若造の士官にそれをやらせるというのが絶望的な戦況を語ってますが、ニコライは怯みません。逆にやる気底辺な戦車兵たちを鼓舞します。祖国のために、と言うのが軍国主義者っぽさを思わせますが、この状況では下手に精神論を説いたりせず兵士としての義務で動かすしかない、というのをわかってるのかも。彼は冒頭で砲撃から4つ数えたら避ける、というのをやってみせることからも非常にデキる男であり、実際たった一台で敵の戦車中隊と戦ってみせるのにはシビれます。ギリギリまで引き付ける焦らない冷静な判断、的確な砲撃で二台同時に葬る手腕、回頭しながら照準を合わせる技術など、八面六臂の活躍。スローで弾道を見せたり、建物に突っ込んでの攻防を繰り広げたりしながら、敵の指揮官機以外を一掃する展開に、同乗する兵士たちもノッてくるし観てる方もアガってきます。

またT-34がやたら頑丈だったり、結構な機動力を見せるのも頼もしい。『ガルパン』で言えばプラウダ高校が騎乗していたマシンですね。ちなみにこの序盤に乗るのがT-34-76、後半で逃走に使うのがT-34-85とのこと。しかしやはり完勝は厳しく、操縦不能になって降り立ち対峙したところを銃で撃たれるニコライ。ここで撃った男がイェーガー大佐であり、冒頭ニコライに砲弾をかわされたのも彼であり、収容所でニコライを見出だすのも彼です。7回も脱走を繰り返してふてぶてしさを増した死にたがり少尉を、自分を追い詰めた男として忘れてないイェーガー。ヒゲを剃ってて最初は誰?と思いますが、鋭い眼光と歯並びでわかりますね。そして問題児と知りながらニコライを起用するのは、彼の腕を認めているから。ニコライも逃走後にイェーガーの追跡を甘く見ない辺り、二人は心の奥底では既に認め合ってるわけです。まあ乾杯するときは言葉が通じないのをいいことに「内臓ちぎれろ」とか聞いたことない暴言を吐きますが。

脱出戦に挑むための準備シーンもたまりません。T-34内の死体を片付けさせるという非道をチャンスに変えての砲弾や手榴弾のゲット、一目見ただけの演習場の地形を砂箱に作り出すニコライの優秀さ、再会したステパンが最初は渋々だったのが「あんたに付いていく」と言うのも熱いし、整備を終えたT-34で「白鳥の湖」を踊るのもイカします。そして演習が始まって煙幕を張ったときのナチスたちの戸惑い、からのパンター撃破されて飛び交う怒号。ちなみにパンターは『ガルパン』では黒森峰女学園が乗ってました(もういいよ)。それはともかく、ただ一直線に逃げるのではなく、敵本部をまず破壊してから、というのが痛快。これで追跡を遅らせる効果もあるわけですよ。もう一つ痛快なのが、通訳の女性アーニャもしっかり連れ出すこと。彼女はイェーガーに使い捨てみたいに言われているのでかなり過酷な目にも会ってるのでは、と思わせるだけに、ニコライと視線だけで会話したり、棚越しに話しながら見つめ合った後に「連れていって」と言ったりするのにはグッときます。そんなアーニャをどうピックアップするのかと思いきや、バス停で待つというね!バス来た?と思ったら戦車だったら、そりゃバス待ちのご婦人方も卒倒しますよ。

クライマックスの市街戦では、段差を使って地面からの跳弾で倒したり、ドリフトしながら方向転換したりといった、戦車カッコいい!というアガるショットもありつつ、3台に囲まれた状況を時速と走行距離、射出時間を計算して作戦を練る戦略的な見せ場、さらに壁を抜けたらバッタリとか、回頭競争に手に汗といったシーンもスリリング。狭い戦車内だけに顔面アップが続くけどその閉塞感がスリルでもあり、主観の視界の狭さと俯瞰した戦車の位置取りなど見せ方にも工夫が見られます。砲撃の迫力だけでなく、砲撃を弾いたら音が響いて聴覚にダメージ食らうとか、遠くで鳴り響く砲撃の音がずっと続いてて不穏さがあったりとか、音楽での盛り上げもありつつ緊迫感あるシーンではエンジン音だけになったりなど、音使いも良いですよ。

戦車以外も印象的なシーンが多く、湖で水浴びする野郎共の仲間感には微笑んじゃうし、まっぱにキャッて言っちゃうアーニャが可愛い。ここまで一緒に来たT-34を乗り捨てて行きたくない、と言うところに、戦車もまた主役の一人だというのが感じられるし、なんかこの辺りまで来るとこいつら大好きになってしまいますね。終盤に手榴弾で撹乱に向かうヴォルチョクがイオノフに「幸運を」と言われて憎まれ口でも叩くのかと思ったら「お前にも幸運を」って言うのなどはグッときます。また、ナチスの悪逆ぶりというのはそこまでは描かれませんが、ニコライらが立ち寄った町で食べ物を奪おうとしてやめたら、町の人たちが率先して与えてくれる、というところにナチスの圧政に苦しむ人々の怒りが垣間見られます。

そうして最後のイェーガーとの対決ですよ。ニコライの「5分くれ!」で仕切り直すのにはちょっと笑いましたが、戦車同士の一騎討ちはまるで西部劇のよう。そして見事に対決を制したニコライが降り立ってイェーガーと顔を合わせるのは序盤の対決とは逆の構図になっています。イェーガーとの握手にはまさか道連れにするのではとハラハラするも、むしろニコライの方が離しがたいのを、無言で視線を交わした後でイェーガーの方から手を離して落ちていく、というのが熱すぎます。まさに互いを認めたライバル同士の決着!最後は全員死んじゃうんだろうな、くらいの覚悟で観てたので、ヴォルチョクが負傷したとは言えなんと全員生き残る、というのがたまりません。こうなったらいいな、というのがことごとくそうなる、ただし予想を越えた形でね、というののオンパレード。やってることはヌルくないし、かといってマチズモでもなく、とことんエモーショナルだしで、もうブラボー!と言うしかない素晴らしさ。だからこそラストの「独ソの戦車兵に捧ぐ」という一文が思いのほか心に響きます。

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