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2019
11.14

あの頃の痛みと乗り越える今。『IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』感想。

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It: Chapter Two / 2019年 アメリカ / 監督:アンディ・ムスキエティ

あらすじ
遊びの時間はこれからだ。



「それ」を撃退してから27年が経ち、それぞれの人生を歩んでいたルーザーズ・クラブの面々に、故郷で再び連続児童失踪事件が起こったとして、メンバーの一人マイクから召集がかかる。27年前の誓いを果たすべく町に戻った彼らの前に、再び「それ」の魔の手が襲い来るが……。ホラームービー『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編。

スティーブン・キングの小説『IT』を実写映画化した『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編にして完結編。周囲に馴染めない少年少女7人が集まった「ルーザーズ・クラブ」が、子供たちをさらう「それ」=怪人ペニーワイズの恐怖を退けてから27年後、再び起こった連続失踪事件にペニーワイズの復活を感じ取ったメンバーの一人マイクが、誓いを元に散り散りになっていた仲間たちを呼び戻します。というわけですっかりアラフォーになったルーザーズが、ますます遊び盛りなペニーワイズくんと対峙する命懸けの帰省!各人のトラウマや人間関係を抜群のサービス精神で丁寧に攻めてくるペニーワイズと、大人になってもいびられまくるルーザーズとの対決を描きます。前作の記憶が多少薄れててもルーザーズと共に徐々に思い出せるので大丈夫。怖さは若干減退ながら、現実と悪夢が入り混じる足元の覚束ない不安定さは想像以上。過去は消すのではなく乗り越える、その奮闘に一喜一憂です。

大人になったルーザーズ・クラブの面々を演じるのは、リーダー格だったビル役に『ミスター・ガラス』ジェームズ・マカヴォイ、活発だった女性ベバリー役に『女神の見えざる手』ジェシカ・チャステイン。『X-MEN:ダーク・フェニックス』では敵対していた二人が今度は共闘します。小太りだったロマンティストのベン役にジェイ・ライアン、ゲスいマシンガントークのリッチー役に『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』ビル・ヘイダー、ビビりのエディ役にジェームズ・ランソン、唯一の地元組マイク役にイザイア・ムスタファ、冷静なスタンリー役にアンディ・ビーンと、みんな大人の姿が子役と結構似ているので地続き感があって、特にベンは別人のようなのに面影があるというナイスなキャスティング。そしてペニーワイズ役の『デッドプール2』ビル・スカルスガルドがCGではなく特技の外斜視で恐怖のピエロ祭りを繰り広げます。

監督は前作から引き続きアンディ・ムスキエティ。169分はちょっと長いし正直余分なところもあるんですが、それでも見せきってしまうのがまさにキングの小説っぽいなあと思いましたよ。R15+も辞さないペニーワイズの万能感が凄いです。前作よりファニーで泣ける、あの頃の僕たちを優しく包むジュブナイルであり、今の自分たちへの応援歌でもあります。

↓以下、ネタバレ含む。








原作未読なので、前作の「続くんかい!」には驚いたんですが、ペニーワイズの力は子供では封印するだけで精一杯、あとは将来へ持ち越しだったということですかね。それは愉快だったり甘酸っぱかったりという思い出と共に恐怖の記憶でもあるわけで、大人になって地元を離れていたルーザーズ・クラブの面々にとっては、マイクからの呼び出しは、封じ込めた恐怖のびっくり箱のフタを開くこと。町から離れると記憶が薄れる、というのはペニーワイズの影響力が及ばなくなるからでしょうが、誰しもが今の生活に追われているし、忘れたい過去だからというのもあるでしょう。ルーザーズに課せられる試練はペニーワイズの犠牲者を増やさないことだけでなく、消せない過去を乗り越え、理不尽な苦痛と戦い、純粋な絆を取り戻すことです。そのために必要なのは、実は過去の自分を受け入れてあげることなんですね。ペニーワイズに対抗する儀式のために必要な、一人一人に由来する思い出の品、それを探す過程が鍵となることからもその点がわかってきます。

ビルは作家・脚本家となり女優と結婚して映画作りなどにも関わりますが、結末が酷いと言われまくります。それは幼い弟のジョージーを救えなかったという後悔がいまだに尾を引いているからなのか?ビルはたまたま知り合った子供がペニーワイズに狙われるのを防ごうとしますが、またもや救うことができません。ミラーハウスでの鏡に映る恐怖や向こうへ行けないもどかしさなどは『アス』『ジョン・ウィック:パラベラム』でもやってましたが、ガラス一枚向こうの悲劇に何もできないというのがなおさら過去を思い出させてツラいです。ベバリーは父の死を知らなかったということは絶縁してたということなのでしょうが、父と同じような独占欲の強い暴力的な男と結婚している、というのが皮肉でツラい。そんなベバリーが生家で出会う老婆が怖いです。と言うか異様に大きい目で襲い来る老婆が、漫☆画太郎のマンガに出てくる婆さんみたいだな、と思ってしまい(同じように思った人がいっぱいいた模様)、怖いというよりちょっと可笑しい。奥の方でちょろっと通りすぎるペニーワイズなども面白いし、なんか全体的にクリーチャーが若干ファニーですね。フォーチュンクッキーから出てくるちっこいのとかも。

ベンがリッチなイケメンになっているのには驚きますが、でも目の感じとか何となく似てるんですよね。ベンは建築家とか空間プロデューサーとかの大物のようですが、人が集まれる施設を作りたいと言うのが、阻害されていた子供時代を拭い去りたいかのよう。学校でロッカーに入ったら後ろにペニーワイズ、というのがイヤンですが、ベバリーへの思いがせつなかったり、子供時代のサイン帳に自分の名前しかないというのがツラいです。喋りの達者なリッチーは、なんとホールを埋め尽くす観客の前でショーをやるほど人気のスタンダップ・コメディアンに。実はゲイであるということが暗に示されるゲーセンのシーンが可哀想でツラい。そんなリッチーを襲う巨大木こり人形の当てつけたようなマッチョさがえげつないです。リスク管理を仕事にしているエディは薬局で縛られた母親を見つけます。かつて自分を病気だと言って縛っていた母が逆に縛られているというのは、ツラかった彼の心の投影なのか?逃げ出したもののゾンビっぽいヤツのゲロを顔面から浴びるのがイヤすぎます。

そんな感じで、思い出の品はそれぞれのツラい過去に繋がっており、彼らはそれと向き合うことになるんですね。その上でペニーワイズとの決戦に向かう。つまり乗り越えるべき過去とペニーワイズは重なっているのです。言っても大人だし、結構みんな成功してる方だし、ビルが「だんだん慣れてきた」と言うようにただ怯えるだけではない。それでもペニーワイズに苦戦するのは、かつての自分を否定せず受け入れることが難しいからです。だから怖くはないんだけど、手に汗握るんですね。まあ苦戦するのはペニーワイズがもはや何でもありのチートだからというのもあります。変身しまくるし巨大化するし『スコーピオン・キング』みたいなサソリ形態になったりするしで、やりたい放題。死んだスタンリーの頭が『遊星からの物体X』みたいになったり、「凄く怖い、怖い、怖くない」の扉の犬が可愛かったり(変貌するけど)。あといじめっ子だったバワーズまでペニーワイズに操られて登場し、トラウマをほじくり返しながら襲ってきます。リッチーが頭カチ割ったけど、その後どうなったんだろう……。

クライマックスは再びあの家の地下へ、さらにその下の広大な空間へ。もはや異世界です。そこでビルはジョージーの死は自分の責任ではないと子供の自分に告げ、ベバリーは自分が父の所有物ではないことを明言し、リッチーはエディに救われて自分の思いに気付きます。トイレで血に飲まれたベバリーと地中に埋まりそうなベンが繋がり、ベバリーはあの詩の主がベンであるとようやく知り、ベンの報われなかった恋心はついに陽の目を見ます。自分を、そして互いを信じることで、恐怖と孤独を糧にするペニーワイズの力は弱まるのです。最後は「言葉攻めで倒せるんかい!」とも思いますが、これは自分たちの過去を受け入れトラウマをハッキリ否定する行為でもあるからこそ、そこに巣食ってきたペニーワイズに効くのでしょう。最後の湖でエディを失い泣くリッチーに皆が抱きつくシーンは、前作でビルを皆が抱きしめたのと重なり、彼らがあの頃の気持ちを取り戻したことがわかって泣けます。

冒頭のゲイカップルが酷い目に逢うのは(こういう不幸があることを訴えたい意図があったらしいですが)全く本編と関係ないし、ほっぺにアザのある女の子が死にっぱなしなのもモヤモヤするし、余分に思えるところもあります。ただこれらは169分あっても描き足りなかった部分でもあるのかなとも思うんですよ。むしろよく一本にまとめたなーと。一人27年間頑張っていたマイクがやけに影が薄かったりと掘り下げ不足のところもありますが、 子供時代のシーンの挿入も巧みだし、ビルが子供の頃の自転車に乗るのなんてノスタルジックで爽やかだし、その自転車を買い戻した店の店主がスティーブン・キング本人(!)だし、ジェシカ・チャステインのおっぱいはスゴいし、そこまで過不足は感じなかったです。ラストのスタンリーからの手紙は泣けるところ。自ら命を断ち早々に退場したスタンリーですが、彼の死がルーザーズを再び結束させたと言えます。だからショーウィンドウに写るあの頃の彼らの姿は、ちゃんと七人が揃っている。ホラーとしての怖さは控えめですが、それは過去を乗り越えるために恐怖に屈しないということの結果でもあるでしょう。大人のジュブナイルとしてよく出来ていたと思います。

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