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2019
11.11

暗殺者は若き自分。『ジェミニマン』感想。

Gemini_Man
Gemini Man / 2019年 アメリカ / 監督:アン・リー

あらすじ
双子ではないです。



政府からのミッションとしてある要人をスナイピングした伝説的な暗殺者ヘンリー・ブローガン。しかし彼は何者かに命を狙われることに。自分の行動を把握しどこからともなく襲ってくる相手に、国防情報局の捜査官ダニーの協力を得て敵の正体を探るヘンリーだったが、そんな彼の前に若い頃の自分と瓜二つの男が現れる……。ウィル・スミス主演のアクション・ムービー。

ウィル・スミスが現在の自分と若い自分の二役を演じる近未来アクション。暗殺のターゲットが聞いていた人物と異なることを仲間から知らされたスナイパーのヘンリーは、事情を知らず自分を監視していた女性を巻き込み、襲ってくる謎の暗殺者と対峙。しかしその相手は若い頃の自分そのものだった、というお話です。特筆はやはり現在のウィル・スミスと若いウィル・スミスの対決。二役ではあるんですが、若い頃のヘンリーを最新デジタル技術で若返らせており、これがCGとは思えないリアリティ。ウィル・スミスが二人と言われても『アラジン』でむっちゃ増えてたからインパクト欠けるよなーと思ってましたが、印象としては全く違います。そんな二人が見せるアクションは、疾走感の凄いバイクチェイスやプロとプロが激突する銃撃戦など、かなりの迫力。ウィル・スミスが走って戦って軽口をたたけば面白くなるというのを久々に見せてくれるし、設定もストーリーも目新しさはないものの、料理の腕次第で十分美味くなると実感。楽しめましたよ。

主演がウィル・スミスというのしか知らずに観たんですが、共演が好みの人たちばかりだったのも気分が良いです。ヘンリーと行動を共にすることになる捜査官のダニー役に『10 クローバーフィールド・レーン』メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ヘンリーのバディとしての存在感が素敵。事態の黒幕ヴァリス役に『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』クライヴ・オーウェンで、冷徹で凄みのある悪役っぷり。ヘンリーの友人バロン役の『ドクター・ストレンジ』ベネディクト・ウォンが陽気で良いです。監督は『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』のアン・リー。CG使いに意外とこだわりがありそうです。ただ製作が『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジェリー・ブラッカイマーというところで、テイストは推して知るべし。

本作は「3D+in HFR」の120fpsという特殊な方式で撮影されています。HFR(ハイ・フレーム・レイト)とは秒間のコマ数(fps)を増やしたもので、通常の映画が24fpsなのを120fpsにまで増やすというもの。ただ実際120fpsで上映されてる劇場はごくわずかなのでその半分である60fpsのところで観ましたが、それでも初のHFRである『ホビット』シリーズの48fpsより多いので画質は非常に高精細。映像の密度が上がったその精緻さは予想以上にアクションの臨場感を上げてくるのでかなり良かったです。個人的には思ったよりヌルヌルしてなかったなと思うんですが、ドルビーシネマならまた違うんだろうなあ。とにかく劇場ならではの体験であり、間違いなくそこが本作のキモの一つですね。

↓以下、ネタバレ含む。








若スミスと今スミスという二人のウィル・スミスが対決、という自分vs自分というのは、最近でも『空の青さを知る人よ』『HELLO WORLD』でもやってましたが、実写となるとなかなか難しいですね。『ルーパー』ではブルース・ウィリスの若い頃を見た目を似せたジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じたり、『ターミネーター2』でサラ・コナーと偽サラ・コナーが同時に映るのはリンダ・ハミルトンの双子の姉妹が演じたりしてましたが、本作ではスミスが二役、しかも若スミスことジュニアの方は全部CGというのを後から知って驚愕。『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』でもターキン提督が顔はCGで復活したりしましたが、もはや実写との区別はほぼ不可能です。とは言え全くの同一人物が戦うわけではなく、ジュニアはヘンリーのクローンということでオリジナルと同じ思考と若さにより追い詰めていく、一方のヘンリーは年の功でこれに対抗するという形ですね。23歳と51歳という年の差は思ったより別人感が強く、でも顔を見るとウィル・スミスなので何とも不思議な気持ちになります。

アクションはかなり良かったですよ。最初にジュニアと対峙する街中でのシーンは、建物内に逃げながらの銃撃や放たれた手榴弾の爆破などをワンカットに収めての緊張感や、階段下のジュニアと鏡越しに会話するというまさに鏡写しな二人など面白い。コロンビアの道をバイクで走り回るシーンは出色で、ほぼ主観での凄まじい疾走や幅の狭い高所でのスピード感、バイクをアクロバテッィクに使った打撃やギリギリでの回避など畳み掛けてくるのがエキサイティング。カタコンベでの対決では暗所のなか銃撃+格闘アクションで魅せます。クライマックスの市街戦では、ドアを開けた瞬間バンバン撃っていくのなどはFPS風味もありつつ、最後に激強い謎の男がターミネーターばりに燃えながら襲ってくるのとか何者!?というのを煽ってきます。で、これらのアクションがHFRにより流れるような動きで見れるので、さらに底上げされるんですよね。どうせならブダペストの温泉でのバスタオル・アクションとかあってもよかったんですが。

逆に言えばHFRとアクション以外は「謎の勢力に狙われたスゴ腕のエージェント、そこには国家的な陰謀が絡んでいた」というわりと普通のスパイ映画みたいな感じではあります。ヘンリーは伝説的な暗殺者のなので強いのはいいんですが、水が怖いという設定が微妙に活かされてないし(水に落ちてもすぐ助かる)。全体的に『ハルク』のような重さがありつつそこまで突き抜けた痛快さがあるわけでもないので、ウィル・スミスの持つ陽性の魅力が半減してるような気も。あとクローンとは言いながらSFっぽさはほとんどないです。そもそも「ジュニアはヘンリーが知らない間に生まれた実の息子だった」という設定でも十分成り立つんですよ。あんな大々的なクローン作戦が秘密裏にまかり通るとか、DIAと癒着してるとは言え一企業がそこまで力を持つのかというのも不自然。ヴァリスはジュニア起用の理由を「闇と対峙させる」と言いますが、赤子のときから育てたなら人格も違ってるだろうし、若いゆえに自分相手と戦うなんて動揺するに決まってるんだから失策としか思えません。あとヴァリスが最後に一人丸腰で現れたのも意味不明。愛を訴えて何とかできると思ったのか?

ただ、自分がクローンだと知った若者がどういう選択をするか、というところが焦点ではあるでしょう。ジュニアは服を脱がせたダニーを直視できなかったり、ヴァリスに「愛してる」と言われて涙したりといったピュアさがあります。それだけに、クローンを戦場に送り込むことで家族を失わなくて済むと言うヴァリスに、たとえ彼がジュニアへの愛情を抱いていたとしても、ヴァリスは本当に「家族」と言えるのかと思ってしまった、ということなのでしょう。最終的にヘンリーに味方する根拠としては若干弱い気もしますが、ヘンリーはそもそもジュニアを殺す気がないし、家庭も持たず任務だけだった人生を後悔するようなことも言うので、クローンも人間だとして疑似親子(と言うと語弊があるけど)のヒューマンドラマに落ち着くのは妥当なところ。でも終盤襲ってくる最強の男が、ヴァリスのクローンとかかな?と思ったらもう一人のジュニアだった、というのには意表を突かれました。ここで一気に複製された者の悲哀というのが出てきます。『ルパン三世 ルパンVS複製人間』を思い出しました。

ダニー役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドがタフで魅力的だし、飛行機好きすぎだったり陽気に乾杯したりといったバロンのキャラが愉快なのは良いです。それだけにバロンはわざわざ殺すことなくない?とも思うけど。ヘンリーが70人以上も殺してきたのは仕事だからともかく、最後に殺したターゲットに関しては何も言及されないのはいいのか?とも思いますが、ジュニアに心の傷を負わせないために最後にとどめを刺して全てを背負おうとするので良しとしましょう。とにかくアクションの新たな見せ方、感じ方というのを示してくれたことが本作の白眉だし、ウィル・スミスを十分堪能できたので満足です。

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