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2019
11.07

復活の魔王は種族を超えて。『マレフィセント2』感想。

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Maleficent: Mistress of Evil / 2019年 アメリカ / 監督:ヨアヒム・ローニング

あらすじ
悪はどちらか。



妖精の女王マレフィセントがオーロラ姫と暮らし始めて数年後、フィリップ王子のプロポーズを受けたオーロラ姫は、マレフィセントと共に王子の城に招かれることに。しかしマレフィセントを快く思わない王子の母イングリス王妃は婚礼の日に罠を仕掛ける……。ディズニーのファンタジー『マレフィセント』の続編。

ディズニーアニメ『眠れる森の美女』の悪役を主人公として実写化した『マレフィセント』の続編。オーロラ姫に永遠の眠りの呪いをかけたマレフィセントが、なんやかんやあって姫との絆を得たことで丸くなった前作。それから数年が経ち、すっかり妖精たちの姫として受け入れられたオーロラ姫と、相変わらず威圧感が凄いマレフィセントから物語は始まります。前作でやたら影の薄かったフィリップ王子がオーロラに求婚、それを速攻で受けたオーロラと、娘のように思っているオーロラを取られることに不満を隠せないマレフィセント。二人の絆は王子の母であるイングリス王妃の謀略により再び試されることになります。始まりは穏やかなファンタジーなのに、なぜか婚姻両家のいがみ合いになり、なぜかジェノサイドに発展し、なぜか軍隊同士の壮絶な殺し合いになるという、ディズニーとは思えない殺伐とした展開に。マレフィセントの同族も登場して事態はますます混迷、その攻めた展開がなかなかにエキサイティングです。いやあ予想の斜め上をいく面白さ。

マレフィセント役は『ツーリスト』アンジェリーナ・ジョリー。近年は監督業や俳優業以外の活動が多いためか久々にスクリーンで観た気がしますが、アンジーの迫力ある美しさはますますグレードアップ。そしてオーロラ姫役の『メアリーの総て』エル・ファニングも前作に輪をかけてキュートです。あんな可愛い娘ならそりゃ最強ヴィランもウェルウェル言いますよ。と言うかオーロラ姫の臣民になりたい。マレフィセントと壮絶な母親対決を見せるイングリス王妃役は『アントマン&ワスプ』ミシェル・ファイファー。類いまれなる悪だくみの才能を見せたりメンタル強すぎたりで、思わぬ強敵です。レイヴン(大カラス)のディアヴァル役である『高慢と偏見とゾンビ』サム・ライリーも続投。また『ドクター・ストレンジ』キウェテル・イジョフォーや『アリータ:バトル・エンジェル』エド・スクレインが意外な役で登場します。監督は『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』ヨアヒム・ローニング。

血の繋がりよりも濃い「真実の愛」で繋がれたマレフィセントとオーロラの前に立ちはだかる、「え、そっちなの?」という大きな壁。人間と妖精という種の違いが招く悲劇。そして虐げられた種族が誇りある戦いに挑むとき、遂に降臨する偉大なる魔王!(ウソじゃないです)『眠れる森の美女』ってそういう話なの?という疑念などお構いなしに突っ走るハードなファンタジー、色々と凄いぞ。

↓以下、ネタバレ含む。








今日もムーアの森は平和で穏やか、顔だけデカいのが不気味なバランスの三妖精は相変わらずかしましく、新顔のちっこいのがあざといほどの可愛さで飛び回り、『ロード・オブ・ザ・リング』のエント族みたいな動く木までが出てきます。そんななか、王冠パクられたり水に落ちる羽目になったりとナメられまくってる、もとい慕われているオーロラ姫。そこにサプライズと見せて仕込み通りに現れプロポーズするフィリップ王子に、被せ気味でオーケイするオーロラ。なんかもうラストシーンのようなハッピー感ですが、ここでマレフィセントが出て来て「うちの娘をどこの馬の骨だクソが」と目で語るので(個人の印象です)グッと緊張感増します。マレフィセントはディズニー最強ヴィランとしての余裕を見せたいのかあまり表情が変わらないため、かなり感情が読みづらいんですが、時折その無表情から漏れ出る思いというのが秀逸で、さすがはアンジー。ただなんか翼デカくなってない?あと頭の角が伸びてない?多分変わってないんでしょうが、久し振りに見るとそれくらいあのシルエットは強烈ですよ。

そんなマレフィセントと戦うにはそれなりの大物が必要(いや別に戦う必要性はないんだけど)、ということで前作ではシャールト・コプリーの狂王が物理的に立ちはだかりましたが、今作ではミシェル・ファイファーのイングリス王妃が精神的かつ謀略的に襲ってきます。王妃は、嫁はいいけど人外はダメとばかりに会食の席で嫌み極まる口擊を繰り出し、オーロラのために角をヴェールで隠してまで出席したマレフィセントも激昂、ブチ切れて帰ってしまいます。意外と口下手なのか?さらには王妃の忠実なる僕ゲルダに弱点の鉄でできた矢で撃たれ、海に落ちるマレフィセント。ここでオーロラとは離ればなれになってしまうわけですが、マレフィセントを悪し様に言う王妃の言葉にオーロラは戸惑い、闇の種族ダーク・フェイに救われたマレフィセントは、人と友好に暮らすべきと言うリーダーのコナルと人間死すべしと猛る若手のボーラの間で選択を迫られます。それぞれが互いへの愛情を試されるんですね。ちなみにマレフィセントを落としたゲルダ、アナウンスから製鉄、ボーガンにオルガンまでこなして超有能です。

ダーク・フェイはマレフィセントと同じ種族であることが明かされ、今まで一人だと思っていたマレフィセントは思いがけず仲間と出会うわけで、これは揺らぐところ。助けられたマレフィセントが髪を下ろした姿がまた美しすぎるんですが、と言うかあれってああいう頭じゃなくて頭巾を被ってたのか、というのはちょっと衝撃。しかもマレフィセントは一族の元祖であるフェニックスの血を引く最強の者であるらしい。いや、盛りすぎでは……とも思いますが、これが後に活きてきます。ダーク・フェイたちは良いですね。ファンタジー的な有翼類のシルエットも、一人ずつ違う装いも凝っていて実にカッコいい。彼らが集団で飛んでくる様には勝てる気がしません。しかし鉄の精製、そして対妖精殺戮兵器の開発と用意周到なイングリス王妃は迎撃準備万端。そしてマレフィセントを庇い命を落としたコナルにもう無理とばかりに飛び立つボーラ軍団。一方で罠とも知らず城に出向く森の妖精たち。かくして大決戦、大虐殺の火蓋は切って落とされる!

一体何を見せられているんだ?と思いますが、王妃一人の思惑によりここまで捻れ、自分たち以外の種族を滅亡させようとする、というのはまんまファシズムなんですね。対妖精兵器で成すすべなく落とされていくダーク・フェイ、教会に閉じ込められ消滅させられていく妖精たち。エント族(違うけど)は仲間を庇って本当の木になり、三妖精の一人はまさかの花に。それを建物の外から見ているしかないオーロラ。彼女は兵器の開発者が羽をもがれた元妖精であることも知り、あまりにも無力な自分にうちひしがれます。そんな仲間が次々散っていく地獄絵図のなか、満を持してのマレフィセント登場にはシビれますよ。変身できなくなっていたディアヴァルは望み叶って巨大熊ガラスに、ダーク・フェイも巻き返し、もはやイングリスに勝ち目はないかと思いきや、オーロラを盾にして逃げ切ろうとするメンタルは凄い。しかもマレフィセントを討ち取るところまでいくんだから大したヴィランです。

でも大丈夫、フェニックスだから!というわけでオーロラもギリギリ救い、イングリスも打ち負かすマレフィセント。二人の絆を試すとかは若干うやむやになってるというか、そもそも離れても互いに心配しあってるので別に揺らいでなかったんじゃないかと思うんですが、ともかく王妃が姫を突き落としてそれを不死鳥が救うという光景は、両軍の毒気を抜くのに十分。剣を捨てるフィリップ王子をボーラも認め、前作に出た呪いの針により寝続けていた「眠れる城の王」も目覚めます(キスはなし)。でもね、気まずいよね。さっきまで殺し合いしてたからね。だからと言ってこの状況で結婚式を強行するオーロラさんのあまりに強引なハッピーエンドには唖然とします。イヤある意味スゴい一手だけど。あれだけ虐殺を行った王妃は八つ裂きくらいするのかと思ったら、ヤギにするだけですからね。

ここがディズニーの限界か、とも一瞬思うものの、でもファシズムを打ち倒して自由を勝ち取り、互いを理解し合う象徴として人間と森の男女が結婚するというのは、多様性を示したこれ以上ない大団円でもあるわけですよ。まあ予想外の大活劇も見れたことだし、拳を合わせてわかることもある、ということでいいじゃないですか。ウェルウェルです。

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