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2019
10.10

殺戮の守護天使は正義を求める。『ライリー・ノース 復讐の女神』感想。

Peppermint
Peppermint / 2018年 アメリカ、香港 / 監督:ピエール・モレル

あらすじ
ヤバい話は断ろう。



ロサンゼルス郊外で暮らすライリー・ノースは、裕福とは言えないながらも夫と娘と3人で幸せに過ごしていた。しかしある日、麻薬組織の犯行により家族の命を奪われてしまう。それから5年後、姿を消していたライリーは復讐のため再び街に舞い戻ってきた……。ジェニファー・ガーナー主演によるリベンジ・アクション。

ただの主婦であった女性が家族を殺され修羅に変わる復讐劇。ライリーは本当にごく普通の妻であり母親で、娘の級友の金持ちママにいびられたりもするものの、家族と共にハッピーに過ごしています。そんななか夫の友人が麻薬組織の金を奪おうとしたために、巻き添えで夫と娘まで殺されてしまうライリー。組織の力によって犯人は無罪放免、絶望したライリーは自らを鍛え上げ、麻薬組織と一大決戦を繰り広げます。とにかくライリーの怒りと絶望による復讐が凄まじく、しかも『ジョン・ウィック』に張るほどの強さ。アクションは若干カット割りが早いけど、やってることはちゃんとわかる絶妙なバランスで、場面の省略を効果的に行うことで物語のスピード感が増し、予想以上に拡大していくスケール感も面白い。殺人マシンと化しながらも随所で描かれる彼女の悲しみが染みます。

ライリー・ノース役は『エレクトラ』『ダラス・バイヤーズクラブ』のジェニファー・ガーナー。ただの主婦がどうすればここまで人間兵器になるのかという銃撃も格闘も段違いな強さを、説得力ある動きで魅せてくれます。ライリーを追う刑事のカーマイケル役に『10 クローバーフィールド・レーン』ジョン・ギャラガー・Jr.、その同僚の刑事モイゼス役に『バンブルビー』ジョン・オーティス。監督は『96時間』のピエール・モレルで、リーアム・ニーソンに劣らぬ最強復讐人を立ち上げています。

もっと一人ずつじっくり殺るのかと思ったら、そこは序の口なのがスゴい。猛烈な銃撃戦や格闘もこなし、挑む相手が麻薬カルテルというのがまたスリリング。でも酔っ払い親父へのバイオレンス説教や、スラム街での天使っぷりが闇の騎士のようでもあって燃えます。『96時間』以上に殺しまくり『エレクトラ』以上に強いジェニファー・ガーナーの迫力が最高です。

↓以下、ネタバレ含む。








ライリーは射撃は百発百中、格闘も武器も爆弾も使いこなし、傷は自分で塞ぐという超高スペックで、たった一人で麻薬組織を相手取りながら次々に撃破していくかなりの強さ。ただどういう訓練をしてきたとか、失踪後の経緯はほとんど描かれません。勤めてた銀行を襲ったとか密入国したとかいう会話と、あとはどこかの国で格闘技をしている様子が映るくらい。この大胆な省略で全体のスピード感が上がってテンポが良いです。事件や裁判に関わった奴らをもっと一人ずつじっくり殺すのかと思ったら、これもわりと省かれます。実行犯の三人は、車が揺れてるので何かエロいことでもやってるのかと思ったら殺し合ってる、という冒頭のシーンなどはあるものの、あっさり観覧車に吊るして終了。また、金で手を引かせようとした弁護士は殺られたという話だけで終わるので若干の物足りなさもありますが、カルテルの人間以外は判事を爆殺する際に正義を問うところに集約させているのでしょう。これは命令を下した組織自体を壊滅させるところまで描くためであろうし、そう考えるとシーンの取捨選択が上手いです。

ライリーは仇を殺しまくりますが、ただ復讐に狂っただけの殺人鬼とは描かれません。そこには家族を奪われた者のどうしようもない悲しみ、そして立場の弱い者や貧困層の悲哀も含まれます。彼女の夫の死は悪い誘いを断ったのに仲間と見なされ殺されるという、完全にとばっちりでありあまりに理不尽。そして有無を言わせず犯人たちを無罪にする判事や何も反論しようとしない検事のやる気のなさ(ライリーに対するのと同様に金を渡した可能性も)。ライリーは何を求めるかと聞かれ、復讐ではなく「正義」と答えます。世の理不尽に審判をくだす正義、それが復讐の言い訳でないことは、酔っ払いを脅して息子のために改心させようとするシーンにも見られるし、危険が増すことをわかりながらスラムの犯罪率を低下させるほど悪党を退治したことからも窺えます。スラムでマリアという少女がライリーを見ていたのは、ライリーに救われたことがあるからなのでしょう。名もなき人々が彼女を「守護天使」と呼ぶのがじわりときます。

その正義を遂行するためのアクションは壮絶。ロンダリングの場所で殺しまくるシーンでは物が飛び散る銃撃戦、高窓から飛び降りながらの襲撃、狭い通路での戦いなど容赦ないです。自らアジトを襲撃する際は車を盾に侵入し、次々撃ち殺しながらボスのガルシアを討ち取る寸前まで。このガルシアはボクシングをやっているシーンで手強い印象を与えたり、カルテルから得た地位を守ろうとする野心を見せたり、自分の娘の前でライリーを刺すクズ野郎っぷりもあればライリーの狙いを見抜く頭もあったりと、なかなかの強敵であることを示すのが上手い。ラボを爆発させてラボごとライリーを葬ろうとまでするし。ラストには人質を取って万事休すのスリルがあったり、ライリーを気遣ってると思われたカーマイケルがまさかの裏切り者であったりして畳み掛けてきます。既にニュースの主役になっていたライリーが「パーティー会場はここよ」とSNSで中継することで起死回生を狙うのも面白い。

判事の家で娘が持っていたのと似た馬のおもちゃを持ち去ったりといった、細かいところでライリーの苦しみを見せるのが丁寧。警察に囲まれながらもガルシアを撃って姿を消したあと、家族の墓の前で「会いたい」と言うのには泣けます。復讐したところで家族は戻らないという空しさを感じさせる辺り、ジェニファー・ガーランドは演技でも魅せますね。娘の誕生パーティーを台無しにしたママ友ベスにワンパンかますのは溜飲が下がるし、何よりガルシアの組織をついに壊滅させ復讐を遂げるカタルシスはありますが、そもそも原題『ペパーミント』は娘が頼んだアイスの種類であり、娘と最後に交わした言葉でもあるわけでツラさは残ります。てっきり最後は墓前で死ぬのかと思いきやモイゼス刑事が逃がすというのは意外。モイゼスはライリーに感化されたようにも見えなかったですが、カーマイケルの裏切りがモイゼスに本当の正義の意味を問い直させたのかもしれません。ぶら下がる手錠からのエンドクレジット、というラストのキレ味!新たな『イコライザー』誕生か?続編ができたら嬉しいです。

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