FC2ブログ
2019
09.11

殺しのクーリングオフ。『やっぱり契約破棄していいですか!?』感想。

Dead_in_a_Week_Or_Your_Money_Back
Dead in a Week: Or Your Money Back / 2018年 イギリス / 監督:トム・エドモンズ

あらすじ
ノルマがキツい。



人生に絶望し自殺を試みるも失敗ばかりの作家志望の青年ウィリアムは、とあるきっかけでベテランの殺し屋レスリーに出会い、1週間以内に自分を暗殺するよう依頼する。しかしその直後、出版社で働くエミリーから小説を出版したいという連絡を受けたウィリアムは、暗殺の契約を破棄しようとするが……というイギリス発のコメディ。

自殺志願の若者が老境の暗殺者に依頼した自分殺しを巡るコメディです。小説家を目指すも全く芽の出ない青年ウィリアムが、飛び降り自殺を図った際に出会った殺し屋レスリー。7回も自殺を試みて失敗していたウィリアムはレスリーの勧めに従い一週間以内に自分を殺してもらう契約をします。面白いのは暗殺者レスリーが英国暗殺者組合という組織に属していて、暗殺件数のノルマがあるということ。これを達成しないと引退に追い込まれるレスリーは是が非でもウィリアムを殺さなきゃいけない、でも小説出版の話がきたウィリアムは「やっぱり契約破棄していいですか?」となります。倫理観などどこ吹く風なイギリスらしいオフビートなコメディで、意外と人も死にまくり。暗殺者組合とか『ジョン・ウィック』みたいで面白いし、多少微妙なところはありますが概ね楽しいです。

小説家ウィリアム役は『ダンケルク』アナイリン・バーナード。神経質そうな見た目で死にたがりを演じます。終始困り顔のせいか時々イライジャ・ウッドに見えて困りました。殺し屋レスリー役は『ローン・レンジャー』トム・ウィルキンソンで、仕事にこだわる頑固な職人爺さんという感じ。この年の差主演コンビのwin-winの関係が崩れてドタバタに変わっていくのが愉快です。また編集者エミリーを演じるフレイア・メイバーも若干変人だけど魅力的。

演出的にはあまり上手くないなあとは思うし、主人公ウィリアムの死にたい理由がぼんやりしてるのも微妙なんだけど、トータルでは笑えるし、それでいて変な緊張感もあるのが独特。No.1暗殺者が意外とバカなのも笑えます。ただ一点だけ、あの人をああいういじり方するのは許せない。

↓以下、ネタバレ含む。








ウィリアムの飛び降り自殺シーンから始まる本作、7回の自殺に全て生き残るとかもう『アンブレイカブル』じゃないかとも思うんですが、未遂を含めると10回というので、悪運の強さとヘボさの男でした。とにかく死にたくてしょうがないウィリアムですが、なぜそこまで死にたがるのかが謎。両親の死とか、自分の書いた小説が認められないとか、友達がいないとか、そういう諸々が合わさっての何となくの絶望ってことでしょうが、その辺りはいまいち深くは描かれません。とりあえずウィリアムの繊細さが生きる気力を失わせているというくらいの背景なので、悲壮感はなし。まあ描きすぎても笑えなくなるのでいいんですけど、人の生死はシニカルな視点でのみ語られるという、そういうラインの話ということですね。自分の小説が世に出そうと言われて揺らぎ、彼女ができたことで死にたくないとなる。そりゃあ彼女ができればそうなります。それでどう死から逃れるかという面白さに絞っていくんですね。

一方のレスリーは仕事こそが生きがいで暗殺者であることに固執する、要はウィリアムとは逆に生きることに貪欲で、ノルマ達成のため何としても暗殺を実行しようとします。三人もミスして殺すのにはもう引退した方がいいのでは、とは思いますが、でもイライラ電流棒をやって集中力を確認しようとするところに諦めの悪さが窺えます。仕事しかしてこなかった男の悲哀でもありますね。暗殺者組合のやたら事務的な対応とか死のカタログとか面白いですが、あれ自分でターゲット探せってことなのか?自殺志願者に営業をかけないとやっていけないというのは世知辛いなあ。No.1暗殺者アイヴァンが実はバカで偽装工作もできないというのが笑いますが、その辺りのマヌケさも味ですね。

ただ、間の取り方が少し長すぎて緊張感を削ぐ(しかもそれほど笑いにも繋がらない)とか、会話シーンがやたら単純な切り返しが多い上に長いなど、上手くないなあという演出が目立ちます。アイヴァンを殺したのをウィリアムからの依頼にする、という後付けも、そんなん通じるの?という無理やり感。あとエミリーのボスであるブライアンが目の前で頭吹っ飛ばされるのはクズ野郎だからまだいいんだけど、レスリーがアイヴァンをめたくそに殴り殺すとかちょっとやりすぎ感もあって、笑っていいものか戸惑います(でもインコ殺したのでしょうがない)。決定的に許せないのはマイケル・J・フォックスをネタにすること。実際ファンなのかもしれないしリスペクトからくるものかもしれないけど、不愉快すぎて笑えません。

ウィリアムの両親にピアノが落ちて潰されるのなどもエグいですが、でもあれでウィリアムが厭世的になったということだろうし、あそこは突如訪れる死の理不尽さという点でよかったです。あとエミリーが可愛いしカッコいいのが救い。勢いで警備員を殴り倒すの最高。レスリーの奥さんが命懸けのトーク術と、つがいの鳥のクッションで旦那を救うのにもちょっとグッときますね。殺す側が死に面し生き長らえる、ここでようやく命の重みというものが増します。逆に生き延びたウィリアムが、エミリーに語ったまんまの英雄的な死を迎えるというのもシニカル。実際に死んだかどうかはボカして余韻に繋げていますが、ウィリアムとレスリーが最後まで対照的であるのは良かったです。

スポンサーサイト



トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1582-aef15be4
トラックバック
back-to-top