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2019
08.24

寓話としての雄大なる命の環。『ライオン・キング』感想。

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The Lion King / 2019年 アメリカ / 監督:ジョン・ファヴロー

あらすじ
ハクナ・マタタ~♪



アフリカのサバンナで、動物たちの王ムファサの子として生まれたライオンのシンバ。いつか父のように偉大な王になることを夢見るシンバだったが、王位を狙う叔父スカーの策略によりサバンナを追われることに。放浪の末たどりついたジャングルで成長したシンバの元に、やがて一頭のライオンが現れる……。ディズニーアニメの『ライオン・キング』をフルCGでリメイクしたアニマル・アドベンチャー。

雄大な自然が拡がるアフリカのプライドランドと呼ばれる地での王子シンバの成長と冒険を描いた、1994年のディズニー・アニメ『ライオン・キング』が実写化。正確にはほぼ全てCGなので実写ではないんですが、かと言ってCGアニメというルックでもないため「超実写版」と銘打ってますね。叔父スカーの謀略で故郷を追われ、新たな仲間と出会い過去を忘れて過ごすシンバが、サバンナの窮状を知り立ち上がる物語。アニメ版と全く同じ展開ですが、これがフルCGと言われても信じられないほどのリアルさで、セリフを消せばネイチャードキュメンタリーにも見えるほど実写としか思えないのがとても新鮮。もうね、リアルすぎてメスライオンとか個体の区別がつかないんですよ。下手に擬人化したような表情を付けず動きも本物そのものなのに、でも歌も会話も楽しいし、演出も効いててしっかり面白い。

シンバの声を『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』のドナルド・グローバー、シンバの幼なじみナラ役をビヨンセが担当し、歌でも参加しています。イボイノシシのプンバァ役は『ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー』セス・ローゲン(声ですぐにわかる)、ミーアキャットのティモン役にはビリー・アイクナー、この二人の掛け合いはアニメ版同様に楽しい。スカー役は『ドクター・ストレンジ』キウェテル・イジョフォーで、したたかでひねくれた悪役を情感豊かに演じて魅せてくれます。またダース・ベイダーの声でもおなじみジェームズ・アール・ジョーンズがオリジナルに引き続きムファサ役を演じるのは嬉しいところ。「サークル・オブ・ライフ」「ハクナ・マタタ」などの有名曲の数々ももちろん再現。

監督の『アイアンマン』ジョン・ファヴローは同じディズニーの『ジャングル・ブック』実写化でも監督を務めましたが、人間の子供が出演してたのでまだ実写と言えたあちらを凌ぐほど本作はリアル。『アラジン』『ダンボ』など怒濤の連続展開されるディズニーアニメの実写化ですが、それぞれでアレンジの観点が異なるのは面白いところです。荘厳なオープニングからタイトルまでのシーケンスもさらに感動的。アニメ版が好きだったのでどうかなあと思ってましたが、予想以上に面白かったです。ネイチャードキュメンタリー好きだからかもしれん。

↓以下、ネタバレ含む。








とは言え、完全にリアルと同じわけではもちろんないですよ。喋るし歌うし。人間のような明確なものではないですが微かに表情も付けてるし。でもやはり実写ではないな、と思い直すシーンも特になかったし、そんなことは忘れるほど引き込まれます。徐々に動物たちが集まり崖上の王子の誕生にかしずく荘厳なオープニングからのタイトルドーン!はアニメ版同様に素晴らしくて震えますよ。「陽の当たる全てが王国」というプライドランドを見渡す絶景、象の墓場の不気味さ、ヌーの暴走で地面が揺れる迫力など、絵の省略が使えないだけにアニメ版より微細。ただ基本はアニメ版ともそこまで違わず、シンバを怒るかと思ったら親バカ発揮のムファサとか、父の足跡の大きさを実感するシンバとか、三匹が歩く姿だけで時間を経過させるスマートさなど、構図まで同じシーンも意外と多いです。元が持ってる良さはちゃんと残してるわけですね。

もちろんアニメ版独自の柔らかで滑らかな動きや表情がない、という大きな違いはあるわけですが、それが新鮮味ではあります。また細かいところでアニメ版とは異なるところもあって、父の亡骸に寄り添って寝るシンバのポーズがちょっと違うとか、ムファサが「王にも怖いものがある」と言って空を見上げるのに王の人知れぬ苦悩が窺えたりとか、最後にスカーが自白するのではなく母が「どうやってムファサの目を見たのか」と問い詰めるように変わっていたりします。あと、虫ね。シンバは虫ばかり食っててよく育ったなと思ってましたが、あれだけ丸々とした大量の虫を食べてたなら納得。マンドリルのラフィキのカンフーマスター的な動きはリアルなだけに香港アクションのようでもあります。これらはちょっとした変化ですが、実写ライクな絵面にはより説得力となります。ただハイエナの不気味さやクレイジーさは、数の多さや表情もあってアニメ版の方が怖さはあるかも。楽曲ではアニメ版でさわりだけだった「ライオンは寝ている」が、足音や息使いなどをコーラスとして音を重ねていき補完しているのがイイ。

ただ劇中何度も言われる「命の環(サークル・オブ・ライフ)」、本来は食物連鎖のことだと思いますが、補食シーンがほぼないんですね(スカーが獲物を喰らうくらい)。これはある意味欺瞞ではあって、それが実写ライクなのでなおさら気になります。でもその代わり、シンバのたてがみの毛が飛び、それが大小様々な生き物たちの手を経てラフィキにもたらされるという、様々な生命の営みが繋ぐ別観点の「命の環」が描かれるのが、今回独自の表現としてとても良いです。あと改めて思ったのがスカーのしたたかな謀略の見事さ。自分は決して面立っては行動せず言葉巧みに裏から糸を引き、自身に責任が及ばないよう権力を握るのは鮮やかでさえあって、それだけに手強い。それからハクナ・マタタはスワヒリ語で「大丈夫さ、問題ない」という意味がありますが、「ビビデバビデブー」や「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」みたいな意味はないけど思わず言いたくなる言葉、口にすれば元気が出るマジックワードとして使われますね。これが現実のツラさを緩和したり、強がったり勇気を振り絞ったりと多様に使われるのはよくできてるなあと思います。

親族に王位を追われ放浪しながらも、恐怖政治を終わらせ正しい責任を全うするために故郷に戻って戦う。いわゆる貴種流離譚と呼ばれる伝統的な物語構造であり、それを二代に渡ってやったのが『バーフバリ』だったりしますが、それを動物たちでやってみせるのが本作です。冷静に見れば、映像のリアルさとは裏腹にワイルドライフとしての過酷さは思った以上に薄めだし、ライオンが国王として何か守ってるわけでもなく、その存在は過分にシンボリックだったりするんですよ。でもそういう構造の物語としての見せ方が上手く、寓話としての完成度が高いので意外なほど気にならないですね。おそらくあのオープニングの荘厳さで取り込まれてしまうからかもしれません。最後の炎をバックに激突するシンバとスカーの対決などは、まさにクライマックスという見せ場であるし、そして最後は再び未来の王が誕生し、オープニングに続くかのような「命の環」がキレイに繋がる。オリジナルの素晴らしさを再認識すると共に、オリジナルに並び立つ動物ドラマとしての出来に唸ります。

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